3-9 神のルーレットが、みんなにバレた!
「カレン! ストップ! カレーン!」
「大変ニャー! ナオトが変な魔法で、変な物を出したニャー!」
ネコ獣人カレンに神のルーレットを見られた。
カレンは大騒ぎをしながら、リビングに走り、そして……。
「うおっ!」
「ふーむ……これはなんじゃ?」
「見た事ないんだよ……」
全メンバーが俺の寝室に集まってしまった。
長身レイアは、素直に驚き。
姫様アリーは、頭を捻り。
ちびっ子魔法使いエマは、困惑している。
「見てニャ! 見てニャ! ナオトが魔法で、このヘンテコなテーブルを出したのニャ!」
「カレン……落ち着いて……」
参ったな。
どうしよう。
誤魔化すか……?
しかし、どうやって?
誤魔化すのは無理だな……。
じゃあ、神のルーレットについて説明するか?
話しても良い物なのだろうか……。
四人の視線が俺に集中する。
早く説明しろと訴えている。
ふー、仕方ない。
話すか。
「みんなリビングに移ろう」
俺の寝室から全員でリビングへ移動する。
ソファーに座り一人一人の顔をじっくり見る。
「これから俺は大事な秘密を打ち明ける。ただし、俺の秘密は他言無用。誰かに話したら神の怒りが落ちる」
「な……なんだよ! 怖ええな……」
「ニャ? 秘密ニャ?」
「ほう。神じゃと?」
「一体なんなんだよ!」
「実は俺は日本と言う国、正確に言うとこことは違う世界からやって来た人間だ。日本で死んだ俺は神様によって――」
俺はこれまで俺の身に起きた事を四人に説明した。
自分が異世界人である事。
日本で働いていた事。
気が付くとこの世界に転生していた事。
神様からルーレットを与えられた事。
ルーレットに当たると銀貨を貰え、獲得経験値が増える事。
魔王を倒せとか、魔王を探せと言われている事。
四人は真剣に俺の話しを聞いた。
「――と言う訳だ。信じられないかもしれないが、寝室にあったルーレットは神様から与えられた物だ」
「「「「……」」」」
四人は言葉を失っていた。
この世界にもいくつか宗教があり、神の存在は信じられている。
文明の発達度合いが中世ヨーロッパレベルのこの世界では、みな日本よりも信心深い。
「まあ、ルーレットは見て貰った方が早いよね」
寝室に移動してルーレットの説明を始める。
「このテーブルの上に書かれた数字にチップを賭ける。この丸いのがルーレットで、ここに溝があるだろ? 小さなボールが回ってポケットに落ちて、賭けた数字と同じならアタリだ」
「なるほどニャ……」
どうやらカレンが一番好奇心旺盛らしい。
神のルーレットに近づいてテーブルの上をのぞきこんでいる。
「数字は読めるかい?」
「当たり前ニャ!」
「俺には、俺がいた世界のアラビア数字と言うのが見えている。カレンたちには、この世界の数字が見えているの?」
「ニャ! そうなのかニャ? 私にはちゃんと……普通の数字が書いてあるように見えるニャ! これが1! これが2!」
うん、どうやらカレンの目には、この異世界の数字が見えているようだ。
さすが神のルーレット。
遠巻きに見ていた長身レイアもルーレット台に近づいて来た。
そしてルーレット台の縁に手をつこうとしたが、その手はルーレット台をすり抜けてしまった。
「えっ! オイオイ! こりゃ、どうなって……。俺の手がすり抜けているぜ!」
「ニャ! 本当ニャ!」
彼女たちには、神のルーレットが見えてはいるが、触る事は出来ないのか。
「それから、これがチップだよ。三枚あるので、三か所に賭ける事が出来る。一か所に三枚賭ける事も出来て、その場合は倍率が高くなる」
・数字一点賭け:36倍
・縦列賭け:3倍
・赤or黒賭け:2倍
倍率の説明をするとネコ獣人カレンの表情が変わった。
「にゃるほど……。私に任せるニャ!」
カレンの顔は勝負師と言うよりは、賭場にいるダメな人……。
勝手なイメージだけど、競艇場とか、競輪場にいそうな……。
負けて選手に罵声を浴びせていそうな……。
徳〇さんや蛭〇さんみたいな顔をしている。
ダメだ。
カレンは賭け事をさせちゃダメなタイプだ。
カレンは俺が右手に持ったチップを奪い取ろうとした。
だが……。
「ニャ? チップがつかめないニャ!?」
「カレンは賭け事をするなって、神様からのメッセージだよ」
「そんな! ひどいニャ!」
カレンは涙目になっているが、カレンはギャンブルをやってはダメです!
続いて長身レイアとちびっ子魔法使いエマがチップを触ろうと試してみたが、触る事は出来なかった。
「スゲエ! 神様が作っただけあるぜ!」
「本当に触れないんだよ! アリーも試してみるんだよ!」
エマに促されて姫様アリーもチップに触ろうとする。
だが、結果は同じ。
アリーの手もチップをすり抜けた。
「神に選ばれし者しか、
アリーが小声でボソリと呟いた。
いつにもまして真剣な顔をしている。
アリーは信心深いのかな?
「このチップをこんな風に数字の上にのせる。今日は黒の22番に三枚チップをベットするよ」
「ニャ! 一点賭け! それも三枚ニャ!」
「神のルーレットは、一日一回だけ回せるけど、俺はいつもチップ三枚を一点賭けだよ」
「それじゃ、当たらないニャ!」
「まあ、見ていてよ。ほら、始まった!」
自動でルーレットの回転盤が回り始め、白いボールが自動で投入された。
グルグル回る白いボールをカレンの猫目が追う。
「この白い球が、そこの溝に入るニャ? 黒の22に入ればアタリかニャ?」
「そうだよ。ただ……まあ……。ちょっと見ていてね」
白いボールのスピードが遅くなり回転盤に落ちそうになった瞬間、俺はボールを拾い上げた。
「ニャ! ニャ! ニャ! そんな事して良いのかニャ!」
「えーと……本当のルーレットではダメだね。怒られるね。けれど、この神のルーレットでは、この方法で大丈夫!」
俺は回転盤のポケット、黒の22にボールを入れる。
いつものようにルーレットが消えて空中に文字が表示された。
《黒の22:銀貨 倍率:36倍×36倍×36倍 銀貨46656枚獲得》
「うおっ! 消えたぜ!」
「ニャ! アタリニャ!」
「……」
「すごーいんだよ!」
次の瞬間、空中から銀貨が滝のように降って来た。
「ニャー! お金がいっぱいニャ!」
銀貨の滝にダイブするカレン。
クロールで銀貨の中を泳ぎ出した。
「スゲエ! オイ! 今度はちゃんと
「本物の銀貨なんだよ!」
レイアもエマも銀貨を触って、驚いている。
姫様アリーは、しばらく呆然としていたが、やがてフラフラと銀貨の山に近づき銀貨を一枚拾い上げた。
じっと手元の銀貨を見つめていたかと思うと、何か決意したように俺にひざまずいた。
えっ!?
一体なに!?
「わらわの全てを神に選ばれし勇者に捧げるのじゃ!」
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