3-8 着替えを見たい? 見たくない?
宿屋『木漏れ日の宿』に戻って来ると宿屋の女将さんから部屋を変わるように頼まれた。
客が多いので、部屋割りを変更したいそうだ。
「ナオト様たちは冒険者パーティーですよね? グループ向けの別館に移っていただけませんか?」
「グループ向けの別館ですか? それは、どんな部屋でしょうか?」
「ご案内します。ご覧になってから決めて下さい」
別館は本館のすぐ裏にあって、屋根付きの渡り廊下でつながっていた。
三階建てで、各フロア1グループが泊まれるようになっている。
入ってすぐソファーがある広めのリビング。
奥の方に二人用の寝室が四つ。
「へえ! 良いんじゃね!」
「ニャ! 広いニャ!」
「ふむ。リビングで打ち合わせも出来るのじゃ」
「みんな一緒なんだよ!」
パーティーメンバー四人は、別館が気に入ったみたいだ。
「こちらの別館なら一泊4万ラルクで結構ですよ」
今、宿代は一人一泊1万ラルク。
五人で5万ラルクかかっている。
むう、4万ラルクなら、今より安くなるね。
しかし……男女同室は、まずいよな……。
俺が断ろうとするとパーティーメンバーから反対意見が出た。
「いや、ここで良いだろ? 男らしく決断しろよ!」
「ニャ! 広い方が良いニャ!」
「何も問題ないのじゃ!」
「みんなで一緒なんだよ!」
「でも、俺が一緒じゃまずいだろ? ほら、着替えとか――」
「なんだ? 俺たちの着替えを見たいのか?」
「すけべニャ!」
「お年頃じゃのう」
「えっちー! なんだよ!」
どうして、そうなる!
見たいか?
見たくないのか?
二択なら……見たい気がする!
俺の頭の中は煩悩で一杯になった。
長身レイアは一番発育が良い。胸も大きい。
ネコ獣人カレンは、バランス良くしなやかな体つきをしている。
姫様アリーは、エルフだけにほっそりしていて、抜けるように肌が白い。
ちびっ子魔法使いエマは……、エマは……。
ゲフン! ゲフン!
事案発生は、まずいぞ!
けど、ポイントは、そこじゃないだろう!
「ち、ち、ち、違うよ! 見たいとか、見たくないとかじゃなくて――」
「ひどいな! 俺たちを女として見てないのかよ!」
「ショックニャ!」
「そう言う態度は、いただけんのう」
「地味に傷つく! なんだよ!」
えーと、どうすりゃ良いのよ……。
「あー、見たいです(棒)」
「オマエ! 変態かよ!」
「むっつりスケベニャ!」
「これはエルフ国として正式な抗議が必要じゃ」
「やーん! なんだよ!」
俺にどうしろと!
しばらく四人に良いようにからかわれ、おもちゃにされた。
着替えはリビング以外ですれば良いので『別館』で問題ないとの結論に達す。
4万ラルクを女将さんに支払って、別館へ移動する事になった。
ま、まあ、結果的に経費節減になったし。
別館の方がセキュリティ上好ましいし。
打ち合わせをリビングで出来るし。
部屋移動して良かったなと思ったら、俺の着替えがのぞかれた……。
オマエら何やってる!
まったく! 修学旅行気分じゃないか!
――翌朝。
俺は別館の寝室で目を覚ました。
寝室の部屋割りは以下の通り。
俺が一部屋。
長身レイアとネコ獣人カレンで一部屋。
姫様アリーとちびっ子魔法使いエマで一部屋。
そんな訳で俺は一人部屋なので、誰に遠慮する事なくぐっすりと寝た。
今日も赤のダンジョンを探索だ。
六階層は昨日クリアしたので、七階層からスタート。
全員レベル40なので、初心者向けの赤のダンジョンはさっさとクリアしてしまいたい。
レベル40にもなると新人を抜け出し、中堅と呼ばれるレベルになる。
他のダンジョンに潜りたいが、新人パーティーは赤のダンジョンをクリアしないと、他のダンジョンに入る許可が冒険者ギルドからおりないのだ。
さて、今日も朝一のお勤めをしますか。
「ルーレット! カーム! ヒア!」
俺はいつものように神のルーレットを呼び出した。
寝室を一人で使えるのはありがたい。
こうして神のルーレットを呼び出せるからね。
呪文を唱えると目の前が光り、ルーレット台が姿を現した。
今日は何にするか……。
また銀貨かな?
と考えていたら、上の方から大きな声がした。
「ニャ! ニャンダー! それー!」
驚き振り向くと天井の隅にネコ獣人カレンがへばりついていた。
映画の忍者みたいに、手足を突っ張って……オマエそんな無駄な技術を持っていたのか……。
「カレン! オマエ何やっているんだ!」
「着替えをのぞきに……いや、そうじゃないニャ! それは何なのニャ!」
「えっと……その……」
まずい!
カレンに神のルーレットを見られた!
どうしよう!
俺がオロオロしているとカレンは脱兎のごとく寝室から飛び出して行った。
「大変ニャー! ナオトが変な魔法を使ったニャー!」
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