3-5 ニャニャニャ! ニャニャニャ! ニャニャニャー!

「ふう。今日は疲れたね」


「あのレベルアップ痛ってのが、きついよな」


「ニャ! でも、大分慣れたニャ!」


「うむ。最初は辛かったが、もう慣れたのじゃ」


「もう、平気なんだよ!」


 午後から赤のダンジョンに潜り六階層のボスを撃破した。

 神のルーレットの『経験値46656倍』が効いているので、一戦ごとにレベルアップした。


 ステータスを確認すると、大幅にレベルアップしていた。


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 ◆ステータス◆


 名前:ナオト・サナダ

 年齢:13才

 性別:男

 種族:人族

 所属:ガントチャート

 ジョブ:弓士 LV40 up!


 HP: G up!

 MP: G up!

 パワー:G up!

 持久力:H

 素早さ:H

 魔力: G up!

 知力: G up!

 器用: G-小上昇中


 ◆スキル◆

 弓術

 速射

 連射

 パワーショット

 遠見

 夜目

 集中

 曲射

 鑑定


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 ◆ステータス◆


 名前:レイア

 年齢:13才

 性別:女

 種族:ティターン族

 所属:ガントチャート

 ジョブ:戦士 LV40 up!


 HP: B-小上昇中up!

 MP: G

 パワー:B

 持久力:B up!

 素早さ:E

 魔力: G

 知力: E up!

 器用: F


 ◆スキル◆

 再生

 槍術

 パワースラッシュ

 大車輪


 -------------------


 ◆ステータス◆


 名前:カレン

 年齢:13才

 性別:女

 種族:猫人族

 所属:ガントチャート

 ジョブ:盗賊 LV40 up!


 HP: E

 MP: G

 パワー:E up!

 持久力:C

 素早さ:B-小上昇中

 魔力: G

 知力: E up!

 器用: B up!


 ◆スキル◆

 ネコ目

 ネコミミ

 ネコ鼻

 短剣術

 罠探知

 罠解除

 罠設置

 お宝探知


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 ◆ステータス◆


 名前:アレクサンドラ・アルブ・ニーノシュク

 年齢:13才

 性別:女

 種族:エルフ族

 所属:ガントチャート

 ジョブ:魔法使い LV40 up!


 HP: H

 MP: A

 パワー:H

 持久力:G

 素早さ:G

 魔力: A-小上昇中

 知力: A up!

 器用: B


 ◆スキル◆

 中級風魔法

 初級水魔法

 初級火魔法

 魔力軽減

 魔力調整


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 ◆ステータス◆


 名前:エマ

 年齢:12才

 性別:女

 種族:人族

 所属:ガントチャート

 ジョブ:魔法使い LV40 up!


 HP: E

 MP: B up!

 パワー:F

 持久力:E up!

 素早さ:E

 魔力: C-小上昇中

 知力: B up!

 器用: A


 ◆スキル◆

 初級闇魔法

 必中

 先制




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 全員がキリ良くレベル40になり、それぞれステータスも上昇した。

 特に俺は持久力と素早さ以外はGになった!


 赤のダンジョンから出て、長身レイアとネコ獣人カレンの宿に荷物を引き取りに向かった。

 荷物と言っても、二人が最初に着ていた蛮族ルックな毛皮や服だ。


 荷物を受け取り、二人が泊まっていた安宿を出る。

 これからパーティーメンバー全員で俺の宿泊している高級宿『木漏れ日の宿』に向かう。


 この辺りは治安が良くない地域だな。

 道路にゴミが散乱しているし、どことなく街並みがくすんで見える。


 長身のレイアとネコ獣人カレンは、田舎から出て来たばかりだからお金がない。

 それでこんな治安の悪い地区にある安宿に泊まっていた訳だが……。


 なんか悪かったな。

 もっと早く俺の泊まっている宿屋に呼んであげれば良かった。


 今は夕方。

 だんだん陽が落ちて辺りが暗くなって来た。

 五人で道を急ぐ。


 あともう少しでこの治安の悪いエリアを抜けられる。

 50メートル先に大通りが見えた。

 あそこまで行けば安全だ。


 だが、夕方は逢魔が時と言う。

 この異世界でも、そうらしい。


 脇道からガラの悪い男たちの声が聞こえた。


「そんなに急いでどこへ行くのかな?」

「いよう。色男のぼうや!」

「もう、逃げられねえな! ヘッ! ヘッ!」


「メドベ……。闇の帝王か……」


 脇から出て来たガラの悪い男たちは、ざっと十人。

 手に剣を持ち、革鎧を装備している。


 昼間、冒険者ギルドでインネンをつけて来たチンピラ冒険者メドベがいる。

 不良クラン『闇の帝王』の連中だ。


「ニャ! ナオト! 後ろも来たニャ!」


 ネコ獣人カレンが注意を発する。

 俺たちが歩いて来た道から、こちらも十人ほどのチンピラ冒険者たちが現れた。


 俺たちは、通りで挟み込まれてしまった。

 前方の一団からスキンヘッドのゴツイ男が歩み出て野太い声で怒鳴る。


「おめえらか! 昼間はウチの若いのが世話になったそうだな!」


 こいつがリーダーか?

 身長は170センチ。この世界の人間としては、それほど背は高くない。

 ただ、体の厚みが凄い。

 筋肉、筋肉、アンド筋肉。


(こいつは、肉体言語で問題解決をするタイプだな……)


 わざわざ待ち伏せしていたんだ。

 戦闘は避けられないだろう。


「何か用ですかね?」


 俺は会話で時間を稼ぎながら、周囲の状況を確認する。


 道幅は約3メートル。

 前方の集団は十……十二人。

 距離は15メートル。


 後ろは……十人ぴったり。

 距離は同じく15メートル。


 スキンヘッドの筋肉だるまが、太い腕を振り回しながら威嚇する。


「おめえらには、選択肢がある! ここで俺たちにぶちのめされて、奴隷として売られるか。それとも大人しく降参して、奴隷として売られるか」


 ロクでもない選択肢だな。

 やはり身を守る為には、ここでの戦闘は不可避だな。


「どっちにしても奴隷ですか? 嬉しくない二択ですね」


「言う事を聞かない新人。金払いの悪い新人。俺たち『闇の帝王』をなめた新人。まあ、こういう連中は、奴隷にする。見せしめだ!」


 ああ、こいつら……。

 新人ばかり狙って金を脅し取り、言う事を聞かないと奴隷に落とす……。

 ロクでもない連中だな。


 俺は腹を決めた。

 冒険者ギルドのワーリャさんと訓練教官から、『身を守る為なら反撃して良い』と言われている。


 俺は元奴隷なんだ。

 また、奴隷になんぞされてたまるか!


 それにパーティーメンバーは、みんな女の子だ。

 奴隷にされたら……、考えるのもおぞましい。


 目でメンバーに合図を送る。

 全員コクリと肯き、各々そっと武器に手を伸ばす。


 俺は小声でこっそり指示を出す。


『アリーとエマは詠唱開始! アリーは後ろを抑えてくれ。エマは前方のハゲ』


 二人が小声で詠唱を始めた。

 俺は二人の詠唱をカモフラージュする為に、大声を出す。


「そんな勝手な言い分は聞けないね! そこをどけ!」


「いや~、どかねえよ! グェヘヘヘ!」


「なら力ずくで押し通るぞ!」


「おお! 強気じゃねえか!」


(鑑定!)


 言い合いの最中にスキル『鑑定』を発動して、俺たちを囲むチンピラ冒険者どもを鑑定する。


 思った通りだ!

 どいつもこいつもレベル10前後。

 ハゲ筋肉だるまリーダーがレベル20。


 レベルが低くて弱い新人の相手ばかりしているな。

 俺たちのレベルは40だ。

 こいつらは敵じゃない。


 そうとわかれば……。

 俺は連中に手を出させる為に、挑発に切り替えた。


「オイ! ハゲ! そこの弱そうなハゲ!」


「なに!?」


「オマエだよ! ツルツル野郎! どうせ弱い新人ばかり、これまで虐めて来たんだろ? それで自分たちが強いと勘違いしているのか?」


「テメエ! 死にてえのか!」


「ああ。そう言うテンプレの脅し文句は間に合っているから。来いよ! 俺たちが本当の強さを教えてやるぜ!」


「この……!」


 筋肉ハゲは怒りで真っ赤になりプルプル震えている。

 俺は容赦なく言葉を叩きつける。


「ああ、すまなかった! オマエは弱い! その筋肉は見てくれだけの飾りだもんな……。早く母ちゃんのオッパイをしゃぶりに、お家に帰んな! 坊や!」


「く……が……。てめえら! やっちまえ!」


 リーダーのスキンヘッドが、チンピラ冒険者たちに号令をかけた。

 一斉にこちらへ向かって来る。

 俺は迷う事無く、スキルを発動して矢を放つ。


「速射! 連射!」


「ギャア!」

「イテエ! イテエよ!」


 先頭を走っていたチンピラ冒険者二人が、俺の『連射』で足を矢で撃ち抜かれた。

 魔法の詠唱が完了したエマに指示を出す。

 ターゲットはリーダーのスキンヘッドだ。


「エマ! リーダーを狙え!」


「わかったんだよ! ポイズン!」


 エマがレベルアップで新しく覚えた魔法『ポイズン』を発動する。


 ポイズンは狙った相手を毒状態にする闇魔法だ。

 毒状態になった敵は、行動を停止し、時間経過と共にHPが減少して行く。

 毒によってジワジワと痛めつけられる訳だ。


 ポイズンの有効時間は20秒と長い強力な闇魔法。

 ただし、敵に毒状態が発生する確率は三割程度で、一度ポイズンを使うと、次に使うまで一分の待機時間が必要になる。


 だが、エマは『先制』かつ『必中』!

 毒発生率は100%だ。

 この毒攻撃は避けられない。

 狙いはリーダーのスキンヘッドだ。


「ウグッ! ガアッ!」


 リーダーのスキンヘッドが、エマの闇魔法『ポイズン』を受けて苦しみ始めた。

 顔は真っ青だ。


「な! なんだ!」

「ど、毒だ!」

「き、汚ねえぞ!」


 不良冒険者たちに動揺が走る。

 これで一番強い敵が無力化された。


「後ろは任せるのじゃ! ファイヤーウォール!」


 姫様アリーが、俺たちの背後に火魔法で火の壁を出現させた。

 このファイヤーウォールは、アリーがレベルアップで新規獲得した魔法だ。


「うおっ!」

「クソッ! 進めねえ!」


 ここの道幅は約3メートル。

 アリーは、道幅一杯に火の壁を広げている。

 これで後ろから攻撃される事は無い。


「魔法使いだ! 魔法使いを潰せ!」


 チンピラ冒険者たちにも目端の利くヤツがいた。

 エマとアリーがターゲットにされた。

 だが……。


「させるかよ! 俺様が相手だ!」


 走り込んで来た不良冒険者たちの前に長身レイアが立ちふさがる。

 三人の男がレイアに剣を振り下ろした。


「どけよ!」

「死ね!」

「邪魔だ!」


 だが、レイアは臆する事無く鉄槍を回転させた。


「大車輪!」


 レイアのスキル『大車輪』で男たちが吹き飛ばされる。


「カレン! 左を! 俺は右だ!」


「了解ニャ!」


 まずは前方の敵を片付ける。


「速射! 連射!」


 俺は右前方の敵の手や足を狙い、片端から矢で射る。

 スキルのお陰で正確に着弾し、敵の戦闘能力を奪って行く。


「ニャニャニャ! ニャニャニャ! ニャニャニャー!」


 ネコ獣人のカレンの『素早さ』は『B』だ。

 さらにジョブ盗賊の効果で小上昇がかかっている。


 レベルの低いチンピラ冒険者たちの間をすり抜けて、短剣で膝の裏を切り裂いて行く。

 あれをやられたら立ち上がる事は出来ない。


 そして残った敵をレイアが鉄槍で弾き飛ばし失神させる。

 前方はレイア、カレン、俺の狩場になり、あっという間に狩り尽くした。


「次! 後ろ!」


「おう!」


「了解ニャ!」


「わかったんだよ!」


「承知じゃ!」


 姫様アリーがファイヤーウォールを解除する。

 俺たちの後ろに陣取っていたチンピラ冒険者十人が、倒された仲間を見て顔を引きつらせた。


「なっ!?」

「バカな!? 相手はガキだぞ!」


 口々に驚きの声を上げるが、もう遅い!


「オラオラ! 俺がレイア様だ! 行くぜ!」


「ニャ! ニャ! ニャ!」


「バインド!」


「速射! 連射!」


「ウォーターボールじゃ!」


 俺たちの後ろにいたチンピラ冒険者たちは、次々に無力化されて行く。

 十秒と掛からずにチンピラ冒険者たちは、全員が地に伏した。


 俺たちの勝利だ!

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