3-2 経験値倍増がパーティーメンバーにも

 俺は『赤のダンジョン』六階層でレベルアップ痛に顔をしかめていた。


 今日は神のルーレットで『経験値倍増』を選んだ。

 取得経験値は通常の46656倍……。

 だから魔物ホワイトシープを四匹倒したら、レベルアップしたのだ。


 そこまでは良い。

 予想通りだ。


 だが、訳が分からないのは目の前で起こっている事だ。

 俺以外のパーティーメンバーも全員レベルアップ痛に苦しんでいた。


「うおお……これはキツイぜ……」

「にゃ……にゃあ……」

「ふう……きついのう……」

「痛いんだよ!」


 ええと……、四人は昨日のボス戦でレベルアップしたよね……。

 それで……、今日一発目の戦闘でレベルアップは……、ないよな……。

 て事は……、四人にも『経験値倍増』の恩恵があったって事か?


 とにかくステータスを確認だ!


(鑑定!)



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 ◆ステータス◆


 名前:ナオト・サナダ

 年齢:13才

 性別:男

 種族:人族

 所属:ガントチャート

 ジョブ:弓士 LV29 up!


 HP: H

 MP: H

 パワー:H

 持久力:H

 素早さ:H

 魔力: H

 知力: H

 器用: G-小上昇中


 ◆スキル◆

 弓術

 速射

 連射

 パワーショット

 遠見

 夜目

 集中

 曲射

 鑑定


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 ◆ステータス◆


 名前:レイア

 年齢:13才

 性別:女

 種族:ティターン族

 所属:ガントチャート

 ジョブ:戦士 LV28 up!


 HP: C-小上昇中

 MP: G

 パワー:B up!

 持久力:C

 素早さ:E up!

 魔力: G

 知力: F

 器用: F


 ◆スキル◆

 再生

 槍術

 パワースラッシュ

 大車輪


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 ◆ステータス◆


 名前:カレン

 年齢:13才

 性別:女

 種族:猫人族

 所属:ガントチャート

 ジョブ:盗賊 LV28 up!


 HP: E up!

 MP: G

 パワー:F

 持久力:C

 素早さ:B-小上昇中 up!

 魔力: G

 知力: F

 器用: C


 ◆スキル◆

 ネコ目

 ネコミミ

 ネコ鼻

 短剣術

 罠探知

 罠解除

 罠設置

 お宝探知


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 ◆ステータス◆


 名前:アレクサンドラ・アルブ・ニーノシュク

 年齢:13才

 性別:女

 種族:エルフ族

 所属:ガントチャート

 ジョブ:魔法使い LV28 up!


 HP: H

 MP: A

 パワー:H

 持久力:G up!

 素早さ:G up!

 魔力: A-小上昇中

 知力: B

 器用: B


 ◆スキル◆

 中級風魔法

 初級水魔法

 初級火魔法

 魔力軽減

 魔力調整


 -------------------


 ◆ステータス◆


 名前:エマ

 年齢:12才

 性別:女

 種族:人族

 所属:ガントチャート

 ジョブ:魔法使い LV28 up!


 HP: E up!

 MP: C

 パワー:F

 持久力:F

 素早さ:E up!

 魔力: C-小上昇中

 知力: C

 器用: A


 ◆スキル◆

 初級闇魔法

 必中

 先制




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 ああ!

 これは間違いないな!

 四人は大幅にレベルアップしている。

 神のルーレット『経験値倍増』の恩恵を受けているな。


 ステータスもそれぞれ上昇している。

 俺はマジックバッグから紙とペンを取り出し、みんなのステータスをメモした。


「みんなおめでとう! レベルが上がったよ! ステータスは、こんな感じになっているよ!」


「おう! 俺様が地上最強に近づいたな!」


「ニャ! HPと素早さが上がったニャ!」


 長身レイアのネコ獣人カレンは、ステータスを書きつけたメモを見て素直に喜んだ。

 だが、姫様アリーとちびっ子魔法使いエマは、疑問を口にした。


「こんなに急激に上昇する物なのか?」


「おかしいんだよ! おばあちゃんやお母さんに聞いた事があるけど、こんな早く成長する事はないんだよ!」


 あっ! やばい!

 気が付いたか!


「細けー事は、良いだろう? アリーは気にし過ぎじゃねえか?」


「ニャ! ニャ!」


「しかし、レイア。昨日のボス戦も普段とは違う強い魔物が出たであろう。用心するにしくはない」


「私もちょっと心配なんだよ!」


 四人が、あーでもない、こーでもないと話し出した。

 俺は四人から目を逸らして、そっと離れ、ホワイトシープが残したドロップ品を拾う。


 ホワイトシープのドロップ品は羊毛だ。

 毛糸玉みたいなのが、四つ落ちている。


 羊毛は冒険者ギルドで、500ラルクで買い取ってくれる。

 四つで2000ラルク。


 低ランク魔物のドロップ品としては、買い取り価格が良い方だ。

 帝都ピョートルブルグは、かなり寒い地方なので羊毛の需要が高い。

 羊毛はセーターやら手袋に加工される。


 ――と言う話は、全部冒険者ギルドで仕入れたのだが。


 俺が現実逃避の思考をしていると、姫様アリーが現実に引き戻した。


「のう。ナオトよ。どう思うか?」


「う、うん? 何が?」


「レベルアップの事じゃ。いくらなんでも急激すぎると思うのじゃ。これは昨日のボス戦に続いて、異常事態ぞ」


「あ、ああ……そうだね……」


 すいません。

 その異常事態を引き起こしたのは、俺です。


 いっそ神のルーレットの事や俺が転生者である事を話してみるか?


 いや、ダメだ!

 神のルーレットをみんなが知ったら、今の人間関係が崩れてしまうかもしれない。


 特に『銀貨』は、毎日大量の銀貨が受け取れる。

 人間は大金を目の前にすると人格が変わると言うし……。

 神のルーレットは、秘密にしておいた方が良いだろう。


 俺は、神のルーレットや俺が転生者である事を、隠し通す事に決めた。

 今起きた事態は、ダンジョンの異常事態と言う事しよう。


「確かにアリーの言う通り、昨日からこのダンジョンで異常事態が続いているね。用心して、今日は引き上げよう」


「うむ。その方が良いじゃろう」


「さすがリーダーなんだよ! 冷静なんだよ!」


「ちっ! まあ、しゃあねえな。死んでから後悔しても仕方ねえしな」


「にゃあ、ちょっと残念にゃ」


 良かった。反対意見はない。

 盗賊のネコ獣人カレンを先頭に出口へ向かう。

 長身のレイアがみんなに聞く。


「しかし、これからどうするよ? まだ朝だぜ」


「俺は冒険者ギルドで資料を調べようと思う」


「ふむ。ナオトは調査かえ。なら、わらわたちは、冒険者ギルドの訓練場に行かぬか? どうやらレベルアップして、新しい魔法を授かったようじゃ」


「へえ。アリーの新魔法ね!」


 魔法使いはレベルアップすると使える魔法が増えるのか!

 パーティーの戦力アップになるからありがたい。

 するとひょっとして……。


「エマは? 闇魔法の新しいのは?」


「うん! 私もレベルアップして、新魔法を授かったんだよ!」


「へえ! じゃあ、訓練場で試し打ちしておきなよ」


「面白そうだな! 俺も付き合うぜ!」


「ニャ! ニャ!」


「じゃあ、四人で訓練場に居てよ。お昼になったら合流するからさ。お昼ご飯は一緒に食べよう」


「「「「おーう!」」」」


 ふう。どうやら神のルーレット『経験値倍増』に触れずに済んだ。


 さて、まだ午前中の早い時間だ。

 魔王について何か資料はないかな?

 冒険者ギルドで探してみよう。

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