2-24 パーティー戦闘

 赤のダンジョン五階層に来た。

 リーダーの俺、長身のレイア、ネコ獣人のカレン、姫様アリー、ちびっ子魔法使いエマ、このメンバーで二度目のダンジョン探索だ。


 昨日の探索は散々だった。

 メンバーの連携もない。

 バラバラに好き勝手に動いて、自爆……。


 だが、俺は反省した。

 ジョブ登録をさせ、装備とスキルスクロールを提供し、パーティー編成とミーティングを行い、準備万端だ。


 パーティーの先頭をネコ獣人のカレンが歩き索敵を行う。

 長身のカレンが続き、最後に横並びで姫様アリー、ちびっ子魔法使いエマ、弓士の俺が続く。


 後衛三人で歩きながら打ち合わせをする。


「ナオトよ。このダンジョンでわらわの火魔法を使っても大丈夫なのかえ?」


 姫様アリーが心配そうに聞いて来る。

 赤のダンジョンは、木の床、木の壁で出来たダンジョンだ。

 アリーは、火魔法を使う事でダンジョン全体が火事になるのを恐れている。

 けれどもその心配は無用だ。


「大丈夫。ダンジョンの壁や床には火はつかないよ」


「ほう。そうなのかえ?」


「木は木だけれど、特殊な壁や床なんだって。油をまいても火はつかない。木材を引っぺがそうとしても、剥がせないそうだよ」


「ナオトは詳しいのう」


「冒険者ギルドで調べているからね」


 この辺の知識は冒険者ギルド受付のワーリャさんに教えて貰った。

 俺とアリーの会話を聞いて、前を歩く長身のレイアが槍で床や壁をゴンゴン叩き出した。


「木で出来ている割には丈夫だよな」


「人が作った建物じゃなくて、ダンジョンの一部だからね」


「不思議なんだよ!」



 先頭のネコ獣人カレンが立ち止まった。


「ニャ! 魔物発見!」


 パーティー全員に緊張が走る。

 カレンが俺の側に走り寄り報告を行う。


「ニャ! まだかなり先だけれど、昨日の鳥が二匹いる!」


 前方を見るが、視認できない。

 カレンの索敵能力は流石だ。

 スキル『遠見』よりも魔物の発見が早い。


「よし! 戦闘隊形でゆっくり進むぞ!」


「「「「了解!」」」」


 カレンが俺のすぐ近くまで下がり、先頭は長身のレイアに交代だ。

 レイアが少し歩くスピードを落とし、警戒しながら進みだす。

 肩に担いでいた槍は、右手に握られいつでも槍を振るえる体勢だ。


 ちょっと歩くと50メートル先にペンギン型の魔物ペン二匹が見えた。

 真っ直ぐな通路をこちらの方へヨタヨタと歩いている。


「いたっ! ペン二匹を視認!」


「よっしゃー! 行くぜ!」


 長身のレイアが駆け出そうとする。

 俺は強い口調で動きを止める。


「待て! レイア! ミーティング通りだ! 魔物を引き付けて叩く! 飛び出すな!」


「おおっと! そうだったな。わりい! わりい!」


 レイアは積極的な性格だけれど、マイナスに働くと猪突猛進になってしまう。

 俺がしっかり手綱を握らないといけない。


 レイアは通路中央で足を肩幅に開き、槍を両手に持って構えた。

 腰を少し落とし、魔物ペンの急激な接近に備える。


 二匹のペンがこちらに近づく。

 あと40メートル……。


 ペンが一瞬立ち止まり、再び歩き出した。

 それまでのヨタヨタした歩きから、ペタペタと歩き方を変えた。

 スピードが少し上がっている。


「ペンがこちらに気が付いた! 来るぞ! 構えて!」


「「「「おー!」」」」


 距離30メートルを超えた所で、二匹のペンがダイブした。

 腹ばいで床を滑り急速に接近して来る。


「早いな……」


 レイアがボソリとつぶやくのが聞こえた。

 槍を握る手が少し震えている。


 昨日の失敗を引きずっているのかもしれない。

 俺はすぐにレイアを励ます。


「レイア! 大丈夫! ミーティングで話した通りやれば、楽勝だ! レイアなら大丈夫だ! 絶対に大丈夫だ!」


「おっ……おう!」


 レイアが槍をグッと握りなおした。


 ペンが25メートルを超えた。

 俺の射程距離だ!

 すかさずエマに指示を出す。


「エマ! 今だ!」


 間髪置かずエマが闇魔法を唱える。


「バインド!」


 エマの闇魔法『バインド』が発動した。

 ダンジョンの床から黒い手が伸びて来て、腹ばいで急速接近する魔物ペンを一匹つかんだ。


 エマのスキル『必中』付きの『バインド』だ!

 ペンが高速移動していても魔法を外す事はない。


「クェッ!?」


 身動きが出来なくなったペンは、驚きの声を上げた。

 俺はスキル『パワーショット』を発動させ弓を射る。


「パワーショット!」


 俺の放った矢は空気を切り裂き真っ直ぐに魔物ペンに向かって飛んだ。

 エマの闇魔法『バインド』で拘束されたペンは、俺の矢を避けられない。


「クエー!」


 俺の矢はペンの胴体中央を貫いた。

 ペンが煙になって消える。

 一匹倒した!


「残り一匹!」


「「「「了解!」」」」


 残りのペンは10メートルの距離に近づいた。

 俺が矢で倒せない事もないが、ここはレイアに任せる。


「行くぜぇ! 大車輪!」


 レイアが足を広く開いて踏ん張り、鉄槍を激しく回転させた。

 重量のある鉄槍を軽々と扱っている。


「クェッ!」


 腹ばいで床を高速で滑るペンは急停止出来ずレイアの大車輪に突っ込んだ。

 吹き飛ばされ壁に激突し動きが止まる。


「アリー!」


「承知! ファイヤーボール!」


 姫様アリーが放った火魔法ファイヤーボールがペンを襲う。

 ソフトボール大の火の玉がカーブを描いて飛び、壁際でよろけるペンを直撃した。


「グエー!」


 ペンは断末魔を放つと煙となって消えた。


「オッケー! 戦闘終了!」


「よっしゃー!」


「ニャー!」


「やったのう!」


「勝ったんだよ!」


 今の形は良かった。

 ミーティングで話した通りに全員が動けていた。


 手を上げてメンバーとハイタッチをする。

 四人とも手応えを感じたのだろう嬉しそうにハイタッチに応じてくれた。


「よーし! この調子で色々試しながらフロアボスまで進むぞ!」


「「「「おー!」」」」

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