2-17 ちびっ子魔法使いエマ
俺を呼んでいるヤツは誰だろう?
振り返ると『ちびっ子魔法使い』って言葉がピッタリ来る女の子がこちらを見ていた。
ちびっ子……と言っても、俺と同じ十三才位でちょっと背が低い。
濃い紫色の大きめのマントを引きずるように身に着けている。
頭の上には大きな三角の紫の魔女帽子。
マントと同じ濃い紫色で、ラベンダー色の長い髪と良くあっている。
長い杖を持ちいかにも魔女なスタイルなのだが、残念な事に丈の短いスカートが子供っぽさを強調してしまっている。
小動物っぽい可愛い顔立ちで、アイスブルーのクリクリした大きな目がこちらを見ている。
あれ?
どこかで見た顔だな?
俺が考えていると女の子が問いかけて来た。
「あなたが、ナオト・サナダ?」
「そうだよ」
「おばあちゃんのマジックバッグを買ってくれて、ありがとうなんだよ!」
なに?
マジックバッグ?
おばあちゃんの?
あっ! じゃあ、この子は!
「おお! シャルロッタ魔道具店か!」
「そうなんだよ! 私は六女のエマなんだよ! 十二才なんだよ! よろしくなんだよ!」
そうか! このベルトポーチ型のマジックバッグを買ったお店の子か!
話し方が店員さんに似ている。
「じゃあ、店員さんはお姉さん?」
「そうなんだよ! お姉ちゃんから、ナオト・サナダの事を聞いたんだよ!」
「へえ。何て言ってた?」
「うーんと、うーんと……。年が近くて気前が良い冒険者だから、一緒にパーティーを組めって!」
年が近くて気前が良いか。
まあ、許容範囲だ。
金持ちがいるから誑し込んで来い! とかだったら追い返していたが。
「ねえねえ! 何を食べてるの? 美味しそうな匂いがしているんだよ!」
「ああ、エマも一緒に食べる?」
「ヤッター! 食べるんだよ!」
元気が良いな。
エマは妹キャラっぽい感じで、ついつい世話を焼いてしまいそうだ。
どうしようかな……。
服装を見た感じでは、魔法使いだよね。
うーん、魔法使い枠は姫様アリーが一枠埋めちゃったからな。
後衛三人で、『弓、魔、魔』?
エマが丸テーブルに近づくと姫様アリーがニッコリ笑って優しく声を掛けた。
「エマと申すか。わらわの隣に座るが良い」
「ありがとうなんだよ! ごはん美味しそう! いただきまーす!」
ああ、エマは幼い感じで庇護欲を掻き立てるんだな。
姫様アリーはお姉さん気分なのだろう。
さて! 食事をしながらエマの面談だ!
「エマ! 鑑定させてもらっても良いかな?」
「すごーい! 鑑定持ちなんだね! 鑑定して良いんだよ! 」
「じゃあ、お言葉に甘えて……鑑定!」
エマのステータスがわかった。
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◆ステータス◆
名前:エマ
年齢:12才
性別:女
種族:人族
ジョブ:魔法使い LV1
HP: F
MP: C
パワー:F
持久力:F
素早さ:F
魔力: C-小上昇中
知力: C
器用: A
◆スキル◆
初級闇魔法
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(優秀だな……)
器用がAなのは、魔道具店の娘だからか?
血筋、遺伝ってところだろう。
LV1の魔法使いで魔力、MP、知力がCなのは高スペックだ。
流石に姫様アリーには劣るが……。
その代わりHPや持久力等他のステータスはFだな。
総合的にはアリーよりバランスが良い。
スキルが初級闇魔法か……。
エマの天真爛漫な雰囲気と闇魔法はマッチしないのだが……。
うーん、どうしようかな……。
アリーが入る前だったら、間違いなく採用したのだが……。
「なあ。エマはどうして魔法使いになったの?」
「ウチの家は代々魔道具を作っているんだよ! 魔道具士は、魔法使いの中級職なんだよ!」
なるほど。
魔法使いのレベルを上げて行くと、魔道具士にジョブチェンジ出来るようになるのか。
「じゃあ、将来魔道具士になってお家を手伝う為に、俺と一緒に活動をすると?」
「そうなんだよ!」
口いっぱいにステーキを頬張りながらエマが答えた。
志望動機は健全で問題ないな。
「魔法は闇魔法なんだね?」
「そうなんだよ! おばあちゃんがね。昔、ダンジョンで闇魔法のスクロールがドロップしたんだって。それをずっと持っていて、私にプレゼントしてくれたんだよ!」
「ああ、そうなんだ」
おばあちゃん子なのかな?
祖母から孫へのプレゼントが闇魔法かあ。
ちょっと良い話を聞いて、気分が和んだ。
「のう。ナオトよ。わらわが意見をしても良いかの?」
姫様アリーが話に入って来た。
正直な話、俺は魔法に詳しくない。
冒険者ギルドではダンジョンや魔物の情報を中心に本を読んでいて、まだ魔法まで手が回っていないのだ。
魔法使いの意見はありがたい。
「うん。俺は魔法に詳しくないから、魔法使いの意見はありがたいよ。聞かせてくれるかな」
「うむ。ならば言うが、そこなエマは採用した方が良いぞ」
へえ。
アリーはエマが気に入ったのかな?
「理由は?」
「闇魔法じゃ」
それか!
エマは闇魔法。
アリーは、風・水・火魔法。
違う系統の魔法使いになるな。
「俺は魔法はわからないのだけれど、闇魔法ってどうなの?」
「非常に珍しい。闇魔法のスクロール自体があまりドロップしないそうじゃ」
「へえ……」
希少価値が高いのか。
そんな貴重なスクロールをエマはおばあちゃんからプレゼントされたのか。
「直接的な魔法攻撃としては、わらわの風魔法や火魔法の方がアテになるじゃろう。だが、わらわと違う系統の魔法……闇魔法の使い手がおれば、また違った戦い方も出来るじゃろうてのう」
「戦術の幅が広がるって事か……」
「そうじゃ。だからエマは『買い』じゃな」
そう言うとアリーは、執事の淹れたお茶を飲み始めた。
エマは俺とアリーの話す事など耳に入っていない様子で、食事を続けている。
さて、アリーの意見を検討しよう。
アリーと系統の違う魔法、闇魔法の使い手がエマ。
闇魔法は希少価値が高い。
ふむ……と言う事は、エマをパーティーメンバーに加えておけば、他のパーティーがとり得ない戦術を実行出来る……かも……。
エマのステータスは優秀だし、妹キャラで和むしな。
エマがいた方が、パーティーの人的バランスが取れるかもしれないな。
よし!
採用しよう!
「わかった。じゃあ、エマ! 俺のパーティーに参加してくれ!」
「採用してくれるのー! ヤッター! ありがとうなんだよ!」
「よかったのう。エマ」
エマが喜び、アリーが隣で一緒に喜んでいる。
この二人は良い魔法使いコンビになるかもな。
「なあナオト! メンバーが揃った所で行かないか?」
自称槍士で長身のレイアが、どこかへ行こうと言い出した。
「行くってどこへ?」
「決まってるだろう! ダンジョンだよ! ナオトはその為に仲間を集めたんだろ? 揃ったんだから、行こうぜ!」
「ニャ! 賛成!」
長身のレイアとネコ獣人のカレンは、早速ダンジョンに行きたがっている。
「ほう。わらわも良いぞ。早いうちにお互いの力量を知っておいた方が良いからの」
「エマも行くんだよ! 闇魔法を見せてあげるんだよ!」
姫様アリーとちびっこエマもダンジョン行きに賛成か。
四人が期待のこもった目で俺の方を見ている。
「よし! じゃあ、赤のダンジョンに行こうか!」
「「「「おおー!」」」」
うん!
仲間がいるこの感じ……良いな!
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