第11話

彼の身長はおよそ百七十センチあるかないかぐらいだから、結構木刀が小さく見えた。本来は一メートルくらいあるのだから、尚更だ。

いや、こんなこと考えている場合でも無かった。

木刀は既に、僕の頭に直撃しそうなところに来ていた。走馬灯のようだ。周りが遅く見える。

この、アドバンテージなのかよく分からない時間を使って、必死に助かる方法を考えたが、無理な話である。人間は〇.五秒と言う時間で何が出来ると言うのだ? 走馬灯のアドバンテージを使って考えることやら、思い出を振り返ったりすることくらいだろう。

しかし、このアドバンテージは、走馬灯と体感することは同じであっても、意味が違った。一種の才能なのか?

体が勝手に動いていたと言うのは、本当にあるものなんだと今知れた。

何故なら僕は、この〇.五秒と言う時間で、すぐ迫った木刀からすっと軽く避けたのだ。

結果的には助かったことよりも、自分の体に異常が起きていることに驚いたが、避けた木刀が床に二十センチほど突き刺さって、床に大きなヒビを入れたことにも驚いた。

完全に彼は殺す気だった。

殺そうとしたのは僕ではなく、もう片方の人格? の方のはずなのに、追い出して殺すではなく、僕ごと殺そうとしたのだ。

「流石だね、枯尾花威吹鬼かれおばないぶき。あの攻撃を避けるとは、君の力はまだまだ健在だ。それと彼もね」

どうやら彼は、避けると思って攻撃をしてきたようだ。全く、心臓に悪い。

それより、ほぼ確定的に、僕の体の中に、昨日出会った彼女がいるということが分かってしまった。

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