第10話

僕は内心驚いて怖かった半面、素直に受け入れていた面もあった。

正直、嫌な胸騒ぎがしたが、好奇心が打ち勝ってしまい、ショッピングモールの中へと入ってしまう。

実際に中に入って見ると、誰の気配もなく、ただ、静まり返ったショッピングモールがあるだけだった。そんな雰囲気が、ますます僕を不安にさせる。だが、一向に好奇心は消えず、むしろどんどんと湧き出てきているようにも感じた。

とりあえず中を一周したところで、帰ろうと屋上から三階に階段で下りている時だった。目の前に人影が見えたのだ。

僕は足を止めずに前に進む自分に驚いたが、そんなことに驚いている暇は無かった。

「君はいつも一人で可哀想だ。そろそろ楽にしてあげるよ、とは言っても、成仏して楽かどうかは逝ってみないと分からないけどね」

は? いきなりこんなことを僕に言われても訳が分からない。見たところ、会ったことが無い人だと思う。そんな初対面の人にこんなことを普通言うか? いや、言わないだろう。しかし、そんなことを言ってしまってるから、普通の人では無いのだろう。

「今は余計なお世話だ。私は今、一つの希望に縋っているんだ。邪魔しないで貰えないか?」

そんなことを僕が言った。……、僕が言った。僕が言った?

「えっ?」

????????

目の前の人が言ったわけではないのか?

いや、それは無い。明らかに、自分の声だった。

だけどなんでそんなことを言った?

そもそも、目の前の人を知らないはずなのに、知ったような口ぶりで言っていた。

僕は口を押さえて、触った。特に異常なし。

どうやら、その様子が相手には笑えたようで、

「はははっ。そうか、まだ君気づいてないんだ。そうだよね。僕が迂闊だった」

僕は狼狽した。何か変なことが自分にあったのだろうか?

「簡単に言うと、君は昨日の夜から、二重人格者だ」

そして彼は、腰にぶら下げていた長さ七十センチほどの木刀を抜き、僕に向かって木刀を振り落とした。

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