第6話

彼女はヒックヒックと幼い泣き声で泣いている。

僕は深呼吸をして言った。

「なあ、俺でよかったら話を聞くけど」

彼女は顔を上げた。その顔は、涙と言う塩水によって顔がびしゃびしゃでぐしゃぐしゃだった。

「なによぉ、さっぎにげだぐせに」

その声は、濁音が混じる。何か重い思いがあった。

「そ、それは仕方がなかったんだ! 人間誰しも恐怖を感じれば、反射的に逃げるんだよ」

僕は本音を言った。しかし、かける言葉を間違えたと思った。しかし、僕には分かっても、行動できないのだ。

「……」

彼女は黙り込む。

そこには、重々しくて気まずい空気が流れる。ずっとこの時間が流れるような気がする。

「なあ、だから何かあるなら話してくれよ」

その場の空気に耐えきれず、とりあえず声をかける。

「あなたは幽霊を信じる?」

彼女はそんなことを言ってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る