第3話
僕は目を疑った。なにせ、こんな薄暗い所に女の子が一人でいるのだから。見た目から中学生ぐらいだろうか? 身長は百五十センチほどで、百八十以上ある僕と並ぶのを想像すると三十センチほど差がある。
彼女は僕を見つけた瞬間に、壁に隠れてしまった。気になって追いかけようと思ったのだが、壁から天使の輪が見え、そして顔がひょこっと出てきた。そして僕の方をじっと見てくる。まぁ、彼女からしたら僕が、夜の廃墟をうろついている不審者に見えるだろうが、僕からしても、彼女は不審者に見える。ただ、僕とは違って可愛らしい不審者だが。
しばらく彼女がこっちを見てきて、僕はただ突っ立っているだけで動かなかった。そして彼女は、一旦落ち着いて安心したのか、はたまた僕が自分より弱く見えたのか、いや、この場合は後者である。彼女は、壁の影から出てきたと思いきや、足元にあった石ころを拾い、いきなり僕目掛けて投げてきた。
時速二百キロは出ているんじゃないか?
避けられない。
目では何とか確認出来たものの、避けるまでには至らなかった。
もうだめだ。
そう思い、目を瞑った僕だったが、その石は僕の左耳を通過した。
た、助かった。
僕は安堵する。何とか生きている。自分は何もしていないのだが、余程の恐怖を与えられたのだろう。僕は膝から落ちた。足はガクガクだった。運動していないのに、運動をした後のような感覚だった。
僕に向かって石を投げた彼女は、僕の方に近づいてきて、ニヤリと不敵な笑みを浮かべて言った。
「おもしろいね」と。
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