第16話(れでぃ〜、ふぁいっ!!part1)

「序列五位から緊急連絡、ターゲット『落神』と接触したとのこと!!」


会議室(物置部屋)に大きな声が響く。

それと同時にテーブルの真ん中に差し出されるのはピンク色の壁紙で装飾された姫夏さんのRINEのトークルーム。


「へぇ、姫夏ちゃん壁紙ピンクにしてるんだ、可愛いところもあるんだね♪」


「永井先輩、☆が禁止されたからと言って♪を使うのは非常に安直かと、あと気持ち悪いんでちゃん付けは禁止の方向でお願いします。」


「ハハハハ……」


「四位も十位もやめんか、今はそれどころじゃないだろう。だれか戦いの様子をこちらに送ることができるやつはいるか?」


「それだったら私が。ちょうど柚瑪村邸の向かいにあるビルの屋上の監視カメラは操作できますから。」


「何気なく言ってますけどそれ、犯罪ですからね。」


「三位さん、固いこと言わなくてもいいじゃないですかぁ、新人になるかもしれない人の実力は知っておいた方がいいし。」


「八位の言う通りです。この際、私が能力を使うのが一番得策なんですよ。」


「うちのグループには犯罪者予備軍しかいないのかしら……」


・・・・・・・

・・・・

・・


【奏真視点】


「戦闘開始と同時に自己紹介とは抜かりがないですね。」


「あなたも、一応戦いは始まってるんだけど?」


「その口ぶりから察するにもう攻撃の準備は始めてるっぽいですね。見たところ何も変化がないから……あなたの能力は見えないものを何かするんですか?」


「ノーコメントでっ!!」


すると、五位の人が僕の反射神経ギリギリの速度で飛んでくる。

きっと実家でゴキブリ退治係をやってなかったら遅れていたであろう。

何が言いたいかというと、ゴキブリ並みに速かった、というよりは予備動作や音が最小限の状態でトップスピードを出すから反応しにくかったというべきか。


僕は先ほどのように重力を状態に設定仕直し、高く飛び上がることで衝突を回避、その後せめてもの攻撃としてワイシャツのボタンを一斉に投げる。

僕の力により僕と敵が上下関係(物理)にある状態では(僕が上である必要があるが)、遠距離攻撃は僕の独壇場とも言えるため、攻撃のあまりできない僕が唯一ダメージを与える方法だろう。


僕は落ちる場所、ゴールを設定した後に落ちるスピードも操作する。流星のごとく空を切るボタン達は全てが五位の人に向かっている。

まあそれを簡単に受けてくれる相手ではない筈だ。そして、やはり考えた通り五位の人は。これが意味すること、それすなわちということである。


案の定というべきか、ボタン達は五位の人に接触する直前で

僕は元から予想していたこともあって、さほど驚くことなくゆっくりと屋根の方に落ちていく。


「へえ、あんまり驚いてないんだね。」


挑発だろうか、五位の人が話しかけてくる。

ここは淡々と返していくのが吉だろう。あまり攻撃をせずに相手の能力を伺ってから動いた方が下手に動きすぎるよりはマシだ。


「あなたの動きから予想できることですから。」


「すっごく生意気。」


「ご無礼をお許しください」


五位の人が少し拗ねたようにいう。なんか、ちょっとカワイイ。

僕はそれに合わせて少し丁寧な言葉をわざと使うという高度なコミュニケーションテクニックを使う。これは戦いの中という異様なテンションがあるからこそなせる技である。


そんな時、一瞬五位の人の視線がこちら僕の顔から逸れた。

僕は気づくと同時に目線の向いているところから体をどかす。無論、これらの判断は1秒も使わずに行ったものだ。

それとほぼ同時に、五位の人が手のひらをこちらに向ける。

すると急に五位の人の長い髪がなびき、ものすごいスピードの何かが僕の左足、先程五位の人に視線を向けられていた部分をかすめる。


僕は反射的に距離を取り身構える。


五位の人が見せた力は

・最初の爆発的な推進力の割には静かで、けれどもやはりふつうの人間には無理なスピード での移動することのできる力。


・僕の放ったボタンを全て跳ね返す何かを纏う力。


・見えない何かを飛ばす力。


いずれも見えないものを使っているし、先ほどの僕の挑発兼質問に対する反応からだいたい検討はついてきたが、決定打にかける。後、何かちょうどいいピースがあれば……

そんな時、五位の人が声をかけてくる。


「また避けた……あなたには神様の力を感じる能力でも備わってるのかな?」


この言葉に僕は違和感を禁じ得なかった。リリー様は神憑きの存在を知っている人間はごく少数、少なくともこの街で知っているのは神藤達3人のボスだけだと言っていたのだ。


この場合、二つの可能性が考えられる。


一つ目はどこからか情報が漏れでていた可能性。

完全に否定することはできないが、リリーさまは一度あの3人の会議を外から眺める形で見守っていたことがあるらしいが、相当な警戒態勢だったらしく、話を聞く限りではまずありえないだろう。


つもり、今考えるべきはこの最も有力な説である二つ目、完全な推測でものを言っている可能性だ。


そこで僕は探りを入れるかのように、


「なぜ、そう思うんですか?」


と聞く。

この人は勘でものをいう人じゃない。少なくとも1回以上僕がその能力を使っている状態を見たことがあるんだろう。


「とぼけるつもり?屋根の上にいる私を見つけて、さらにはさっきの攻撃も避けておいて。」


五位の人がいらだったように言う。

僕は、その言葉を聞いた2秒後には走り出していた。

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