第12話(ツナギ2)
「わかったか?」
「まだだいぶ混乱してるけど、あなたのいうことが本当なら私は能力が使えるようになったと考えて良いのね?」
机の上に紅茶のカップを下ろしながら柚瑪村が言う。この仕草一つ一つがこいつをお嬢様らしくしている。学校では考えられない。
「ああ。ネットの情報だからお前は疑うことからはじめるかも知れないと思って。それと、そんな情報がネットに載っているってことはなんらかの異能組織がネットを管理している可能性が考えられる。お前がどうするつもりなのか聞きたくてな。」
今回の最大の目的、本題とも言える敵対の意思の確認。
神藤の目の前であれだけ能力を使ったのだから、アイツらが武力をもって僕を制圧しにくる可能性もある。
「つまりあなたはまだなんの組織にも所属していないと考えてもいいということかしら?」
「さすがだな、頭の回転が早い。」
「と、当然でしょ。それより、あなたは組織についてどう考える?」
「僕もよくわかっていない。強いて言うならあの転校生が組織の人間で、その中でもトップクラスの能力者だということと、組織はそいつを使って僕を組織に入れようとしていることぐらいだな。」
組織については疑問が多すぎる。なんの目的があって僕を追いかけるのか、そこがわからない限りこれ以上のことはわからないだろう。
と、ひとり考えていると柚瑪村が声をあげる。
「ちょ、ちょっと待ちなさい!転校生って神藤さん?あの子が能力者なの?!」
「ああ、今鍛えている僕と一対一で戦っても多分いい勝負になると思う。」
「今の言葉をそのまま捉えると、あなたは組織のトップクラスと同じぐらいの力を持っていることになるんだけど?」
「かれこれ半月ほど訓練してるからな。能力にも恵まれたし。」
「どう言うこと?」
「僕は神様に取り憑かれてるんだよ。ついでにお前もな。」
「は?」
柚瑪村はよくわかっていなさそうな顔をする。ここからが二つ目の本題だ。
「能力ってのは神様の力だろ?それには与え方ってものがーーー
【神憑きについて説明中。しばらくお待ちください。】
ーーーと言うことなんだ。そしてお前も世界に二人だけしかいない神憑きの一人。」
「なるほどね。で、あんたは毎朝訓練をしてだいぶ力をつけたんだ。」
「ああ、途中でリリー様にも訓練に参加してもらってたけどな。」
「リリー様?」
「僕に取り憑いてる神さまだよ」
そう言って僕はリリー様を認知できるようにする。
というのも、『柚瑪村』という標識で相手はだいたい予想していたので、リリー様には少し認識の外に落ちてもらっていたのだ。
柚瑪村は突如現れた青髪の少女に一瞬だけ驚いたが、その後は特にどうということもなく、ふつうに自己紹介して終わった。
それからしばらくは主に能力者組織、具体的に神藤が所属する組織の扱いについて話し合った。
今後の方針として、二人が守る共通のルールは3つ、
・神藤が能力者だということはまだ知らないということにしておく。
これはいつも通りの生活を送りやすいという利点があり、目立ったことをして目をつけられるというようなことを予防するためだ。
・どちらか片方が接触した場合、接触していない方の情報を話すようなことはしない。
これはまず一人が組織に加入せざるを得なくなってしまった場合、組織に加入した方が組織の情報を加入してない方に伝え、組織が最低なものだった場合は入らない、良いと思ったら加入するというように被害者をすくなくするための措置だ。
そして最後に、
・極力自分の家の外では能力を使わずに過ごすこと。
当たり前のことだが、そんなことをして噂になったら組織に嗅ぎ付けられることは間違いないだろう。それを予防するために訓練や実験以外では使わないということだ。
とまあこんなことを決めていると流れるように時間が過ぎて行き、なんだかんだで昼になってしまう。
ぼっちの僕は友達と遊ぶなんてことはないので、土日は一日中休みだが、人気者の柚瑪村は誰かと遊ぶ約束をしているのでは……と考えたが、今日は(いつもはどうなんだろうね……)特にそんな用事もないようなので、昼ごはんをご馳走してもらうことになった。
その昼食を準備してもらっている間、柚瑪村がふと思い出したように、
「そういえば、私の能力って何かしら?」
といった。暇だった午後の予定が埋まった瞬間だ。
・・・・・・・・・・
・・・・・
・・・
・
【伊好視点】
私の能力はみんなと少し違う。
あくまで『MTB』にいる能力者だけの話だけど、能力は基本的に『状態を変える』力として存在している。
私の場合も広く捉えたらそうなる。でも、違う部分は『変わらない部分もある』ということ。そして『私自身にしか使えない』ということだ。
私の能力は体の一部を機械の一部と同化すること。
が、『同化』といっても体の作り自体が変わるわけではなく、指定した機械が体の一部になるといった感じだろうか?
例えば自分のパソコン。
これと同化した場合、脳内に記憶された情報に後付けされたようにパソコンに記憶された情報も思い出せるようになる。インターネットが私の脳の一部になったということだ。
これは『一度触ったことがあり、かつ今どこにあるか把握できているもの』なら同化できる。テストなどでも、わからない漢字があったら頭の中でインターネット検索できるし、電卓アプリもつかえるので役に立つ。まあ大学は最初の二、三日しか行ってないけど。
そんな私はとある縁で今『MTB』の情報部部長として能力者の情報が一般に漏れないようにインターネットを監視、そして能力者が一番最初に開くであろうサイトに誰がアクセスしたのかを調べて新たな能力者と思われる人を上司に伝えるという仕事をしている。
それが、それが何故、
とある原始型の能力者を捕まえる計画の作戦参謀なんてしてるんだろう。
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