第11話(ツナギ程度の認識で)

私はとりあえず緑色に光る体のことを調べ始めた。

検索してみるとよくわからない都市伝説サイトがトップヒットだった。

私は少しのためらいの後そのサイトを開く。

スクロースバーがちょうど真ん中ほどまで降りてくると、やっと目当ての情報が手に入る。

結果から言ってしまえば、私は『神に選ばれた者』とやららしい。

2時間ほどでこの光が消えるという情報はすごくありがたかった。ずっと光ったままなんて耐えられない。

でもどうしようか。

これによると能力は能力者自身が理解しないと無差別に発動したりしてしまうらしい。

それは流石に阻止した方がいいと私は思う。

いくら異能力者が少ないからといって、このすぐに情報が拡散してしまう世の中では相当の注意を払わなければ異能力者の存在が知られていないなんてことにはならない。

つまり異能力者のコミニティーがあり、そこが異能力者の存在を隠しているということになる。

そうなると私の行動で異能力者の存在が公になるようなことがあってはならない。隠しているのには何かしら理由がある筈だ。


「アイツならどうするかしら……」


ふと呟く。アイツは頭がいい。この場合の最善策を考えるなんて容易いことだろう。


……って違う!!別に鈴木のことを考えてたわけじゃないし!!アイツが昨日あんなところを見せるのが悪いんだし!!


ふぅ、落ち着こう私。アイツのことを考えてたらますます深みにはまってしまう。まずはお茶でものんでーー


『お嬢様、鈴木様と名乗る方がお見えですが?』


ブッ!!


「ごほっ、ごほっ。」


なんなのもう!!人が忘れようとしてるときに!!


『お嬢様!!大丈夫ですか?!』


むせた音を聞いたのか、ドアを隔てて近くにいるメイドが慌てたように声を上げる。


「ちょっと待ってて。」


私はクローゼットから私服を取り出し、着替える。

調べ物や考え事をしていたらだいぶ時間が経過していたみたいで、体の光も消えている。隠す手間が省けた。


「もういいわよ。」


扉の前のメイドに声をかける。メイドが去っていったのを足音で確認すると、私は部屋にあるティーポットに新しく紅茶を入れ始める。こういうのは自分でやる主義だ。


それにしても、アイツが訪ねてくる理由なんてあったっけ?まあ鈴木なんてありふれた苗字、違う人だって可能性もあるわけだし。


・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・


【奏真視点】


「わかった。で、そのっていうのは?」


俺はリリー様に問いかけた。

リリー様は神様で、神力を操ることができるし、逆探知のようにして能力使用者を探ることもできる。

神藤が能力者だと知ったのはリリー様が教えてくれたからでもある。

今日の朝、そのリリー様がなんと二人目の神憑き、神の取り憑いた人間が現れたとおっしゃった。

人間嫌いの神がそのようなことをするということはかなりレアなケースだと思う。

今は逆探知の結果を待っている状況。不思議と胸がドキドキする。


「あ、見つけましたよ、奏真さん!」


「そうですか、で場所はどの辺りに?」


僕はB市の地図と念のためC市とA市も広げておく。

リリー様はその地図に赤い油性ペンでぐるりと円を描いた。


「ここです!!」


「じゃあ行きましょう!!」






というわけでマンションの屋上。

僕たちは異能の練習がてら新しい移動方法を試してみた。

まず屋上に上がる。

そして飛び降りる。

ここまで聞くと自殺志願者のように感じるかもしれないが、ここからが能力の出番だ。

まず最初に落とす。つまりゆっくり落ちていくようにする。

ものを落とす能力で落ちないようにするというのも変な話だが、要するにそういうことだ。

そして次。

これは知らなかったことなのだが、リリー様によるとどうやら僕の力はものを落とすことと『落ちる』という現象を操作することらしい。

そしてこれもリリー様に聞いた話だが、『落ちる』というのは落ちる“もの”と“場所”要するにスタートとゴールがあるらしい。

そして僕はそれを操ることができる。これを使えば『落ちたい場所に落ちる』ことができる。

移動手段というのは高いところに登って落下、落下する位置を調整して落ちたい場所に着地という一連の動作のことだ。

僕の力の及ぶ範囲はリリー様との特訓のお陰でB市内を覆えるほどにまで成長した。これでB市内なら歩かずに移動できる訳だ。

まあ落ちる瞬間は怖いけど、落ちてしまえばもう後は涼しい風を浴びながらゆっくりと落ちていくだけだ。


ごめんやっぱ怖い。









と、いろいろあって目的の場所。

まあ色々といっても鳥とぶつかりそうになったりとかそういうのだけど。

そこはとてもとても大きないわゆる“豪邸”で、表札には……知らない人だよね?


ピーンポーン


「すみません、附津卯高校二年の鈴木と言います。お邪魔してもいいですか?」


はい完全不審者〜

と思ったら大間違いだ!!

僕はこの屋敷の中の使用人さんたち全員の思考力をおいた。これで僕は難なく入れるね!!

ん?ハンザイ?なにそれ?


みたいなことを終えて潜入完了!!

メイドさんはお嬢様と呼ばれていた方を呼んでくださってる。

思考力は元に戻したからもう大丈夫。

ていうかお嬢様アイツっぽいし。

ということはアイツが二人目の神憑きってことだろう。


「鈴木様、お嬢様が準備ができたと仰っています。」


「わかりました。」


そして連れてこられた部屋。


「な、なんであんたが!!」


そうだよね。鈴木って珍しくないもんね。学校にも俺含めて3人いるしね。

柚瑪村ほど珍しくないモンね。


うろたえるお嬢様に能力のことを話すのはだいぶ疲れることだった。

とだけいっておこう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る