第3話(シリアス回)

B市内のどこか、一筋のあかりも入ってこない見るからに怪しいところに人影が3つ。


「んで、新たな能力者というのはなんだ?」


3人のうちの1人が言う。


「ああ、部下の能力『ハンター』によると目覚めたのは昨日の朝、そして今日の昼頃に覚醒したらしい。」


「あのめんどくさいストーカー野郎か、この俺をしつこく追い回したんだから信ぴょう性はあるな。」


「序列一位、そんなことを言ってはあの子が可愛そうですよ?」


「序列三位、お前こそうちの部下をよく弄ってくれているじゃ無いか。」


「あら、そうでしたっけ?」


「まあいい。それより、わざわざ3人のボスを集めての緊急会議ってこたぁ、只の能力者じゃねぇんだな?」


一気にその場の空気が引き締まる。

先ほどの軽口を叩いていたようなふざけた空気はそこにはなく、報告を受ける方の序列一位、序列三位と呼ばれたものは一番深刻そうな顔をして口をキュッと結んでいる序列ニ位をじっと見据える。


「私は能力覚醒の瞬間に能力名を聞き出すため、『ハンター』の情報を元に『テレパス』にくだんの能力者を追跡させた。」


「それで?」


「ああ、つい先ほど大慌てで報告に来た。“能力名が漢字”だったそうだ。」


「ほう、新しい『原始型』か。」


原始型げんしがた

能力名が漢字で表記される能力に対して使われる名称。

始まりの能力に繋がるとされているので『原始』という言葉が使われる。

通常の能力の何倍もの力を持つとされており、これに当てはまる能力者は大抵の能力者の羨望の的となる。それほどに希少で強力な能力だということ。


「これでB市には12人の原始型が存在することになりましたね。」


少し嬉しそうに答える序列三位。

B市内の異能力者を統括する組織のボス3人のうちの一人として、強力な異能力者がB市にいることが嬉しいんだろう。

が、まだ重苦しい顔をしている序列二位が絞り出すように言う。


「ああ、ただの原始型だったらよかったんだが……」


「なんだ?なんかあんのか?」


「能力名を聞いてもらったほうがいいだろう。能力者名鈴木奏真。

能力名は、『落神らくがみ』だ。」


「なるほど、そう来たか。」


序列一位が興味深げにつぶやく。

それに同調するようにゆっくりと頷く。


「どう言うことですか?」


話を飲み込めていないのは序列三位だけ。


「おい、お前まだ教えて無いのか?」


「ああ、そういえば言ってなかった気がする。」


神藤しんどう、お前は高校の時からずっと適当すぎるんだ、自分での教育係を名乗り出たんだから、そこはしっかりと役目を果たせ。」


「序列二位落ち着いてください、この場でその名前を使うのはあまり良いとは言えません。」


「そうだ、そうだぁ〜!」


「四十過ぎたおっさんが何子供みたいなこと言ってんだ!!娘にまもられて恥ずかしく無いのか!!」


「お父さんも、調子に乗らない!」


「う、すまんかった。」


「ほ〜ら、調子に乗ったから〜」


「なんだとテメェやんのか?!ちょっと表でろ!!」


「上等だ、これまでの雪辱を果たさせてもらう!!」


バチバチと火花を散らす一位と二位おじさんたち


「いい加減にしろ!!」


その二人を容赦なく鉄拳制裁するどう見ても十代の少女。

なかなかカオスなこの空間で先に正気に戻れたのはやはり一位と比べると若干大人の二位。


「そうだ、これから話すことはボス機密と言って、ボスにしか知らされていないことだ。万が一に備えて私達を囲う壁を用意してくれ」


「わかりました。」


三位はそう短く答えると床に向けて手を伸ばす。

すると自分たちの外側にある床の一部がへこみ、周りを囲むような壁が形成される。それはとうていコンクリートとは思えないような柔らかい動きをしてあっという間にドーム型になる。


「ありがとう。序列一位も、念のため防音を頼む。」


「はいよ。」


序列一位はそう言うと、能力を使う。すると、あたり一帯からノイズが生まれる。


「これでいいですね。」


「いや、読唇術の使える透視系能力者がいないとは限らnーーー」


「お前は慎重すぎるんだよ。」


と、序列一位の持つスリッパと序列二位の頭がぶつかりパコンというよく響く音が出る。


「な、お前今俺の頭叩いたろ!!」


「そんなことはどうでもいい、ほら光は俺がから早く進めろ。」


「そうだな、それで序列三位。先程も言ったが、今から話すことはボス機密なので、他言は無用だ。」


「心得ました。」


「序列三位は『原始型』については当然知っていると思うが、実はそれには対になるものが存在するんだ。」


「そんなものが。」


「ああ、それは『神憑き』と呼ばれている。簡単な例で言うと……

そうだな、『テレパス』を日本語にするとしたら『意思を伝える者』となるのは分かるな?」


「はい、有名ですね。」


「だが稀に『テレパス・ゴッド』のようなものが生まれることがある。それは日本語にすると『意思を伝える神』と言ったところか。とにかく通常とは比べものにならない“可能性”を秘めた力となる。」


「可能性、ですか?」


「別に原始型のような膨大な力が手に入るわけではない。ただ、その力には“底”がないんだ。」


「なるほど、使いようによっては『原始型』すらも超えていきますね。」


通常、能力には限界が存在する。これはどんなに頑張ったところで越えることのできない壁で、能力者たちには『底』と呼ばれている。

が、神憑きにはそれが存在しない。要するにいくらでも成長するわけだ。


「このように、能力名に『神』を指す言葉が付いているものを『神憑き』と呼ぶんだ。」


「それに関しては理解しました。ですが、なぜこれは機密となっているのでしょうか?」


「それはnーーー」


「ちょっと黙れ、」


序列一位が静かな、けれどもよく響く声でふたりを黙らせる。

するとそこに銃声が響く。


「この音はC市の連中だろう。数はおよそ20、迎撃するか?」


音のエキスパートである序列一位が言う。


「このぐらいなら私だけで大丈夫ですね。」


「わかった、任せたぞ。」


「もう夜も遅い、一旦解散して集合は三位の学校が終わってからにしよう。場所はあの店だ。」


「「了解」」


序列二位の指示のもと、今日のボス会議は銃声をBGMとして解散となった。

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