32話 可児と灰

どうしてこうなった。


いや、まあ能力なんでしょうけど。


まさか分けられるとはな。


俺は飛騨さんとか。


恐らく後の4人も2で分けられてると考えると、宗次郎と助六ペアであることを祈るしかないか。



「なるほど。分けられたか。入り口に入った時に近くにいたものと一緒に飛ばされたのかな。しかし、この人か。早急に合流する必要があるな。」


「養老さんお願いしますね。」



「なるほど、我らの闇の力に恐れをなして分散させたか…」


「なに言ってるんですか!安八さん!変なこと言ってないで早く他の人たちと合流しないと!」


「貴様誰だ?ああ、智のところの小娘か。闇の力の王の我に口を利くとは、身分の差も分からぬか…」


「この人嫌だ…」


「おい、小娘。構えろ。我らを狙った有象無象どもがいるぞ。能力はたしか『十二聖剣(グラディウス)』だったな?」


「は、はい。」


安八助六はどうしようもない厨二病ではあったが、能力、鬼力コントロールどちらもずば抜けた才能を持っている。


敵の感知においてもそれは可児は足元に及ばないものだった。


可児は敵の感知に未だ成功していない。


「こっちだ。ついて来い!」


「はい。」


200mほど行くとやっと敵を感知することに成功する。


先程の場所から1kmも離れている。


これを感知したの?


というかここはどこ?


外から見た感じそんなにデカくなかった。


つまりここは能力による空間。


ということは…


「敵襲だ!そこで止まって待機しろ!」


「はい!」


『生きとし生きる者は全て灰になる(いきとしいきるものはすべてはいになる)』


敵数は5


助六は一番近くにいた敵を右手で触れその体を全て灰へと変えた。


さらに、変えた灰を操り敵の体と右手を繋げる。


繋がった灰は助六の鬼力を通す。


当然、離れすぎると鬼力が届かなくなるがこの程度の距離であればなんの問題でもない。


約15秒であった。


そのわずかな時間で5人の人間を灰へと変えた。


生物全てを灰へと変える能力。さらに、灰を使い他の生物を灰へと変える。


変えれば変えるほど強くなる。


「おい、可児 麻美子(かに まみこ)だったよな。これで剣を作れ。」


助六は先程手に入れた灰の4分の1ほどを可児の前に置く。


「えっと…これって…」


「大丈夫だ。繋がっていないから俺の能力は発動しない。変えればさらに問題ない。」


「分かりました。」


『十二聖剣』


可児 麻美子の能力は触れたもの全てを剣へと変える。


その剣を操ることも可能。


「たしかお前、移動も可能だったな。速度を上げるぞ。」


『生命の方舟(せいめいのはこぶね)』


助六は灰で作った船で空中を進む。


「ちょっと待ってくださいよぉ!」


可児は先程の灰から30ほどの剣を作っていた。


その剣を束ねそれに乗り空中を進んでいた。


「貴様を待つ時間などないのだ!我は早く奴に会わねば…」


そこからの二人はまさに無双であった。


敵が出た瞬間に助六により灰へと変えられ、とりこぼした者を可児が切り裂く。


移動能力を持っている二人は凄まじい勢いで進んでいた。


「小娘!言わずともわかっているとは思うが、この空間を剣に変えるなよ!おそらくだが、これは敵の能力だ。敵の力と我らの力が混ざり合えば、混沌の終焉を迎えるかもしれぬからな。」


「後半何言ってるのかわからないですけど、了解です。」


おそらくここは敵の能力によって生み出された空間。


下手なことをしてここから出られないなんてこともありうる。


しかし、ここは何かがおかしい。


分かれ道も無ければまがり道もない、ただただ真っ直ぐに進むだけ。


私たちはこのまま進んでいいのだろうか。


あきらかに罠。


そんなことを考えているときだった。


「おい、終焉の間についたぞ。」


だから何言ってるのかわからないんですが…


そこは、今までの道とは違い広い立方体の形をしているのであろう部屋だった。


そこには一人の少女が空中に座っていた。


「貴様がこの闇の世界の門番か?」


「闇の世界?ちょっと何言っているのかよくわからないけど、外に出るには僕を倒さなければならないと言えばいいのかな?」


やっぱりここは何かしらの能力によってできた世界なのね。


ということはあの子もDoGのメンバー。


「あなた、名前は?」


「僕?僕は、『アンビ』。『サラマー』様の右腕さ。」


『サラマー』それが今回倒すべき幹部の名前なのね。


「とにかく、ここから出るためにも死んでもらうわ!!」


『十二聖剣』


可児は30の剣を全て『アンビ』に向けて飛ばす。


30の剣を全て操るというのは高度な技術が必要となる。


おそらく、助六ですらすることができないだろう。


可児は30の剣全てを一つ一つ操っているわけではない。


5個程度であれば全ての剣を操ることができるだろうが、30となると同じ操作をするのが関の山である。


「面白いね。でも。」


『アンビ』は右手を鬼に変え、右手を右から左へと移動させる。


「くらえぇえ!」


可児の剣は『アンビ』に刺さることはなかった。


全て『アンビ』の目の前で止まった。


「ざんねんだったね。そんな攻撃僕に届くわけないだろ?」


そんな『アンビ』の挑発に耳を傾けることなく可児は剣を手元に戻す。


「じゃあ次は僕の番だね!!」


右手を可児と助六の方に向けた。


「くらえ!」


『アンビ』の攻撃は目には見えなかった。


くらえという声を出したにも関わらず何もないと思っていたが、わずかに鬼力を使っていた。


その僅かな鬼力を助六は感知していた。


『偉大なる我を守り魔界の門(いだいなるわれをまもりしまかいのもん)』


灰で出来た壁で二人を守る。


「へぇ、今のに反応するんだ。少しはできるのかな?」


「ふん、貴様のような者に褒められても何も感じんな。それに、貴様を倒す道筋は出来ている。」

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鬼の手 ハトドケイ @hatodokei

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