25話 4区vs『スコル』

「しかし、遅くないか。」


いやいや、無理言うなよ。


「清さんいなくなるの早すぎるんですよ。ヒントとかほぼゼロだったし。」


「それはすまなかったな。つい、落ちてしまった。」


ついって…


「あのーそれで、子供たちはどこにいるんすか?」


俺たちは子供の救出が最優先だ。


「多分、そこの扉の奥だろうな。」


多分って…


はあ。


「じゃあ、行きますか?」


「ああ、そうしよう。」


戦いなんてほとんどできない俺は清さんの後ろを追いかけるようについていく。


清さんが扉を開けると目の前にさっきの『ゴリラ』みたいなやつがいた。


「顔似てないな。」


「そっすね。」


「お前ら、何言ってんだ?」


「訛ってないな。」


「そっすね。」


「本当に何を言っている?ん?はっ!『ゴリラ』を殺ったのはお前らか?」


「ゴリラって誰だ?」


「ほら…あのさっき殺した人ですよ…」


清さん淡々とそんなこと言うのやめて、ほら相手怒ってるじゃん。


「ああ、あいつか。俺が殺したぞ。」


また淡々と…感情ないのか?


「許さんーーーーーー!!」


『白銀』


「お前に許してもらう必要がない。」


「え?」


うわあ。えげつな。左足ソッコーで砕いちゃったよこの人。


清はその後すぐに体を凍らせる。


「倒れないほうがいいぞ。体割れるから。」


あの人わざと頭だけ凍らせてないわ…


これは流石に敵に同情しちゃう。


「え、え、え、たおれるなぁぁぁぁぁぁああ。」


凍った体を片足で支えるなんて不可能。


「うわあああぁぁぁぁぁあああぁぁぁあああ。」


グロ…


「いくぞ。」


いやほんと感情ないのかよ。


よく踏めるな。


扉の奥には大きな部屋があった。


部屋の真ん中には緑色の光った何かとゴスロリファッションの女がいた。


「あれえええええ?きみたちだーれぇ?」


「NeCO4区リーダー揖斐川 清だ。」


なぜに自己紹介ができる?


「NeCOかぁああ。何の用ですぅうぅ?」


「子供を誘拐しただろ?返しに来てもらいにきた。」


「子供?返す?いいですよぉぉ。そこに転がってる子達ならもう用はないので。」


転がってる?


どこだ?


ん?


あれか!


「清さん俺見てきます!」


「任せた。こいつは俺が。」


『白銀』


『氷剣(ひょうけん)』


ペットボトルの水を凍らせた剣を持った清は目の前にいる女に斬りかかる。


「お水を凍らせてけんにするのかぁあぁぁ。おもしろいねぇえぇえ。でも、戦うのは無理かなぁああ。」


清の剣を女は右手で受ける。


捉えた。


『太陽を喰らう狼(イーター)』


「いただきます。」


右手を捉えたはずの氷の剣は消えた。


「なっ?」


消えた?


いや、喰われた。


なんだあの右手。口のようなものがあるな。


あれで氷を食ったのか。


「私は『スコル』DoGの幹部。また会えるといいわねぇえぇえ。」


『スコル』は後ろの壁に向かって右手を向けた。


「私の相手はこの子たちがしてくれるわ。」


右手から光る玉のようなものを射ち出し、壁を壊す。


「じゃあねぇえぇえ。」


「逃がすわけないだろ。」


『銀蜻蛉 突(ぎんかげろう とつ)』


「あらぁあ。しつこい男はきらわれるわよぉおぉぉ。」


『スコル』を攻撃しようとした清の前には一瞬で壁の中にいた男が現れる。


な?


速い!


まずい、これは避けれない!!


男の蹴りがノーガードの清の腹に当たる。


「ぐあはあぁ!」


蹴られた清はそのまま壁へと吹き飛ばされる。


「その子たちは『コピーケルベロス』強いわよぉ。」


『スコル』は壊した壁の奥に待機させていた男の元へ行く。


「『サル』運びなさい。」


「はい。」


「にがすかぁぁぁ!」


『超鎌鼬』


俺忘れんな。


子供たちは全員弱ってたけど生きてた。


そうなった今俺のやるべきは、あの女の抹殺。


「あなたもしつこいのね。ダメよ。」


『スコル』の右腕は人ではなく鬼のもへと変貌する。その手は手のひらに口が付いている。


『太陽を喰らう狼』


真の鎌鼬はまたも『スコル』に食べられる。


「お返し。」


そして右手から光る玉を真へと打ち出す。


「『サル』早く。」


「は。」


そう言うと『スコル』と『サル』と呼ばれた男は飛んで行ってしまった。


飛んできた光の玉は鎌鼬で破壊することは可能だった。


なんだ、あいつ。


能力を食いやがった。



こいつ、なんて速さだ。


おそらく、任意の対象の速度を上げる様な能力なのだろうが…


「真!子供たちを地上に送れ!恐らくさっき倒したゴリラどもが土の能力者だ!土は消えてるだろ。子供を送れ!あれをやる!」


「まじですか!?了解!5分耐えてください!」


5分…


行けるか?


まずい、またあの蹴りが来る。


『銀蜻蛉 壁(へき)』


何度もくらうかよ。


時間稼ぎとはいえ、この時間中に殺しちゃいけない決まりはない。


『銀蜻蛉 突』


右腕に冷気を貯め全力で男に突きを放つ。


ちっ。


避けやがったか。


だったら…


『氷剣』


ペットボトルはもう一本ある。


速いが、剣なら反応できないことは無い。


相手の来る方向さえわかれば、あとは大振り。


当たらなくても牽制程度にはなる。


と思っていたが…


速すぎる。


「真まだか!?」


「あと、2人です!もう発動しても構いません!」


よくやった。


こいつで、決める。


『銀世界(ぎんせかい)』


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る