23話 甘すぎませんか?
清さんを助けたいとは思っている。
すごく助けたい。
でもできないよね。
この雨じゃ。
今、鬼椀村は2日間雨が降り続いている。
流石に誰かの能力だろと思ったが、村の人間に心当たりのあるものはいなかった。
であればDoGだとは思うが、田舎すぎて、ネットに繋がらないため、天気予報を見ることができず、気性が荒いのか能力攻撃なのかわからない状態だった。
というか、現代っ子に電波は必需品よ。
しかしすごい雨だな。
小雨の雨ならずっと降っていてもそんなに変では無いが、豪雨とまではいかなかなくても、普通に強い。
村が浸水したという情報まだ入っていないが、浸水するのも時間の問題だろう。
ここは椀の形になっているのだから、雨がたまりやすい…
ん?
なんだ?
この違和感は?
2日前に村でも感じたものだ。
なにかが、分かる気がする。
俺は2回の自室から走ってロビーへと向かった。
「おい!あのジュースまだあるか?」
「はい、まだございますが…」
「売れるだけよこせ。全て買い取る。」
こうして俺はクチアのジュースを10本手に入れた。
ロビーでは20本出されたのだが、現金のみということで10本しか買えなかった。
ちょっと恥ずかしい。
〜
「お姉ちゃん!なんか、あそこの部屋の人が変なんだけど…」
「仕事中はおかみさんでしょ。あなたももう20なんだから…それにお客さんを変とか言わないの。」
「だって…さっき買ったクチアジュースを原液のまま5本も飲んでるんだよ!」
「え?」
今この子はなんて言ったの?
クチアジュースを原液で5本?
一本どころか一口でも飲んだらむせて喉が焼けるほどの甘さなのに。
「とりあえず確認してくるわ。」
なにを飲むかは自由だから、やめろとは言わないけれども血糖値が上がりすぎて糖尿病になってしまう。知らないところでなるのは勝手だが、これでもし私達が非難されたら大変だ、
なんかチャラかったけど、NeCOだし。
それにクチアジュースを売ったのはまぎれもない私達だ。
部屋につきドアを開けようとドアノブに手を掛けたが、開けることができない。
鍵がかかっているわけではない。
なのにも関わらずドアノブを回す手に力が入らない。
それでも、 この宿の女将として開けなければいけないという使命感と開けてはいけないという生物的の本能がぶつかり合った結果ドアノブを回すことだけはできた。
しかしそれまでだった。
開けることはできなかった。手のドアノブを握る力が抜ける。
少しだけ開いてしまった。
これでは風が吹けば開いてしまう。
お客様のためにも開けなければという気持ちと早く閉めろ!という自分の中の本能がまた争う。
その結果ドアノブを押した。
押したかったわけではないが、本能に争うために無理やり押した。
ドアが開くと身体中に悪寒が走った。
部屋の中では瓶から直接クチアジュースを飲んでいる者がいた。
その周りには6本ほどのからの瓶が倒れて落ちていた。
〜
NeCOになる為にはその区のリーダーに認めてもらう必要がある。
自分から押しかけてもいいし、スカウトされることもある。
そして、そのあと試験を行い合否を判断する。
その試験はその区のリーダーによって一任されているため区によってテストは全くと言っていいほど異なるのだ。
しかし、共通して能力を使うことが許されている、
当然能力をうまく使えたり強力であればあるほど有利である。
しかし、NeCOの歴史上たった一人だけ能力を使わずに合格した者がいる。
その男の名は坂祝 真。
彼はそのしけんちゅうに右手を鬼に変えることはなかった、
ただ、思考した。
自分にできること、何をすればいいのか。
それら全てを思考し続けた、
結果彼よりも強い能力を持っていた者達ではなく真が受かったのだ。
〜
なんだ?俺がこの村で常に感じている違和感はなんだ?
何が引っかかっている?
思い出せ。
考えろ。
なんだ?
ごく。
ごく。
ごく。
ちっ。もう空か…
思考には当分が必要だ。
当然その必要量は思考する量に比例する。
真の思考量は並の人間の比ではない。
そうなると必然的に必要な糖分も増える。
しかし、そんな大量の糖分を摂取することはできない。
故に真は今まで本気で思考をしたことがなかった。
常に求めていた。
自分の脳を完全に使うためのものを。
そして、見つかった。
クチアジュースを。
クチアジュースによる大量の糖分摂取。
そしてそれを超える思考。
そしてその思考は1つの答えを導き出す。
たった1つの何かもわからない違和感から真実に導く。
!
まさか!
だとすれば!
「分かったーーーーーーー!」
やっと分かったこの違和感。
そして、誘拐事件の謎。
後はDoGを倒すだけだ。
あれ?
それ俺にできるのか?
無理じゃね?
〜
答えは分かったが、どうしよ。
叫んで女将さんには怒られるし、どう考えたって俺に戦いはできないし…
完全に詰んだ。
でもなぁ。
頑張るしかないよなぁ。
よし!
やるか!
天から助太刀も来るみたいだし。
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