22話 お天道様は未来も見てる
帰ってこない。
から。
ナンパ。
いやぁ、ラッキー。
清さんがいないからナンパが捗る。
戦績はイマイチだけど。
おっ!あの子可愛い。
「おーい…」
「なあ、兄ちゃん。なにやってんだ?」
ん?誰?
邪魔すんなよ。
「おい、聞いてんのか?」
あ、思い出した。この人村長さんの家に行った時にいた人だ。
「ナンパですよ。」
「そんなのは見たらわかる。」
「じゃあ、聞くなよ!」
「なんでしてるのかって聞いてるんだよ!」
はあ?
そんなの決まってるだろうが。
「可愛い女の子と遊ぶためだよ!」
「あんたの仲間もいなくなったんじゃないのか?」
はあ?
おっさんの話をまとめると、なに仲間がいなくなってんのにナンパしてんの?という事らしい。
そんなこと言われても…
清さんが倒せない相手を俺が倒せるとは思わないし、変に何かして足を引張たら怒られそうだし。
要は今俺にできることなんてなに1つないのだ。
〜
無理やり村の会議に参加させられた。
ああ、くだらない。
1人としてまともなことを発言しない。
暇になったので寝ていたのだが、1つだけ気になった発言をした人がいた。
その内容はこの村で1人唯一誘拐されていない子供がいるらしいのだ。
子供だけではなく70の爺さんや4区のリーダーでさえ誘拐できるのにも関わらず、その子供だけは誘拐しないのは何か理由があるのだろうか?
そう思った俺はその子供に会いに行くことにした。
はあ、めんどくさ。
しかし、なんかこの村違和感を感じるんだよなか。
たしかに、1人も子供がいなければ違和感を感じるのかもしれないけれども、それとは違う何か変な違和感を感じる。
田舎だからとかではなく感覚的にいつもあるものが何か足りない。
そういった感じの違和感。
なんだ?
俺はその違和感に気づけないまま目的の家に着いた。
インターフォンを押してNeCOである事を伝えると家に入れてくれた。
なんの確認もなしに入れてくれたので不用心だなと思ったのだが、事前に俺がくる事を伝えてくれていたらしい。
その子供は2階の部屋にいるらしい。
お母さんと思われる人に案内をしてもらった。
部屋の中はいたってシンプルだった。
窓際に1つベッド、それと本棚が1つあった。
本棚の中は小説や漫画などではなく医学書ばかりだった。
「えっと…あなたは?」
白い肌に痩せた体。
中性的な顔立ちで最初はどちらかわからなかったが、胸と声で女の子だとわかる。
「俺は、12区のNeCO坂祝 真。君に話を聞きたくてね。」
「話?…えっ!NeCO!本当に?」
「え…そうだけど、どした?」
その子は俺の事を神を見るような目でもしながら質問をする。
「私の…私の病気を治す能力に心当たりってないですか?」
病気ね。
「それは回復能力を探してるって事なら協力はできないな。学校で習わなかったのか?この世に回復能力は存在し得ない。」
ゲームみたいにHPが存在するわけではないこの世の中で回復というのはあまりにも曖昧すぎる。
なんか偉い人が回復能力はこの世に存在しないと断言した時はなかなかの炎上をしていたが、実際それからなん年経っても回復能力は現れなかったため完全ではないがこの世に回復能力は存在しないということになっている。
「ごめんなさい。学校行ってないから…」
やめろよ。
俺が悪いみたいじゃないか。
しゃーない。
あまり希望を持たせるのは好きじゃないんだがな。
「ただ、病原体を破壊する能力なら存在するかもな。」
「え…?」
「回復という曖昧なものじゃなくて、病原体のみを破壊。とかなら、なくはないかもしれないって話だよ。それでも、あと2世代くらいは必要かもしれんが。」
「そっか…」
「あんさ。勝手にしんみりしないでくれるかい?こっちが質問をしにきたんだから。」
「あ、はい。で、何を…?」
「君に聞きたいのは2つ。1つは君の能力、もう1つは最近この部屋以外にどこか行ったか?」
その子は少し戸惑った顔をしながら答えてくれた。
「えっと、最近はこの部屋からは出てません。それと、能力ですが『未来を見る太陽(みらいをみるたいよう)』と言いまして、正午のときにだけ1つのことの未来を見ることができます。」
未来視能力者だと?
1日一回正午限定かもしれないが、それでも強力すぎる。
それにまだ、第4世代だろ?
そんな複雑な能力が存在することは可能なのか?
『ミュータント』にしてもおかしい。
いや違うのか?
こいつがおかしいんじゃないのか?
この村か?
周りを山で囲まれたことによって独自に能力が発展したのか?
にしても、早すぎないか?
第7世代や第8世代くらいならまだ納得もできる。
「あのー。どうかしましたか?」
「えっ⁉︎ああ、ごめん。集中しすぎちった。それにしても、未来がわかるなんてすごいね。」
「あーでも、分かるといってもなんとなくですよ。ふわっとした感じですし。」
ふわっとした感じ?
「やって見たほうが早いですかね?あと10分ほどで正午ですし。」
え、まじで?
「えっとじゃあ、いきますね。」
その子は右腕を鬼のものに変化させ俺の頭の上に手を置く。
別に関係ないことだし、小学生だ。
だが、なんとなくドキドキした。
「どろどろ、カチカチ、天からの助太刀、ドーン」
はい?
「え?今なんて言った?」
「あの、その、ごめんなさい。私の能力で分かる未来はふわっとしているので…」
ふわっとしているというか、擬音だったね。
一個は違ったけど。
「ちなみにこれってどれくらい先のことかわかる?」
「一応私の能力で分かるのは一週間くらいですかね。」
「一週間ねぇ。」
一週間以内に俺はドロドロでカチカチな天からの助けがくるのか。
いや、あとドーンだっけか?
わけわかんね。
そのあと俺は雨が降ってきたので強くなる前に宿に帰ることにした。
あ!
あの子の名前聞き忘れた。
しかし、面白い能力には会えたけどそれ以外は特に何もなかったな。
この村を救いたいとかはないけど、仕事だし。
清さんがピンチなら手伝うしかないしな。
さーて、どうしたもんかね。
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