21話 鬼椀村に行きますか
俺が外に出るとすでにそこには4区リーダー揖斐川 清がいた。
「清さんきてたんですか?」
「ああ、今から行くところは4区ではあるが4区の拠点からは離れたところにあるからな。」
「じゃあ、車取ってくるんで少し待ってください。」
俺にとって清さんは憧れの人だ。
だから、年下ではあるが常に敬語。
本人にはやめてくれと言われているが、そんなことできるわけがない。
「えーっと…ああ、これだ。」
車には詳しくないがこの車がいい車ということは知っている。名前は知らないが。
鬼ヶ崎市は他の市とは完全に隔離されている。
故に海外の物なんかは圧倒的に少ない。
確かこの車は海外からの輸入品だったはずだ。
「あ、これ左ハンドルだ。」
俺は隣にあった右ハンドルの国産車に乗って清さんのところへと向かう。
「すみません。遅くなって。」
「いや、大丈夫だ。すまないな。」
「そんな、謝るのはこっちの方ですよ。4区のリーダーをこんな車に乗せちゃって。海外の車がちょうど出払っちゃってて…」
すると目の前に外車に乗った研究員が帰ってきた。
「外車帰ってきたぞ。」
「左ハンドルですから…」
「そうか…」
〜
目的地に着くまでなかなか大変だった。
途中で食料の買い出しで止まった道の駅ではカップラーメンは15分待つ派とい言い出して少し揉めたり、喉が渇いたと言って水を買うためにコンビニに寄ったのに一切水飲まなくて揉めた。
どうして、リーダーというのは強いのに性格に問題があるんだ?
たまに会ったりするし、先代のリーダーと会うこともあるが、まともな人は7区現リーダー川辺 智さんくらいだ。
7区に行きてえ。
〜
揉めたりもしたが、以外に車内での会話に困ることはなかった。
基本的には任務の話をしていたし。
今回の任務は4区の辺境にある鬼椀村(きわんむら)というところで起きている子供の失踪事件らしい。
鬼椀村は昔山の頂上を鬼が殴りお椀のように凹ませたという伝説から鬼椀
というらしい。
いや、鬼の力が出現したの最近だろうがということを村の人にいうとすごく怒こるらしい。
子供の失踪事件に関して言えば理由が全くわからないらしい。
話によると急にいなくなるらしいのだ。
会話をしている途中に突然消えた子もいるらしい。
確実に鬼の力が関わっていると判断した村長はNeCOに依頼を出したのだが、4区はいま他の任務に行っており人が全くいなかった。
そこで、リーダー自ら行かざるを得なくなったが1人で任務に行くのは基本的にNGなのだ。
そこで俺が選ばれたというわけだ。
清さんと仕事ができるのはありがたいが、めんどくさいよね。
だって、明らかにDoG関係でしょ?
戦いがあるかもしれないじゃないか。
俺弱いのに。
「着いたぞ。」
「え?」
急に言われたその言葉にうまく返事ができなかった。
なぜなら着いたと言われたその場所は何もない場所だったからだ。
「着いたってここ何もないじゃないですか。まさか、鬼椀村はすでになくなってるなんてオチですか?」
「そうじゃない。鬼椀村に行くのは明日だ。もう遅いし、今日はここから少し行ったところの宿で止まる。車を止める場所がそこにはないからここに止めていくぞ。」
「はい。」
こんな田舎の山の麓の宿だから綺麗じゃないのかなと持っていたが、すごく綺麗だった。
その理由は女将さんの能力に秘密があった。
女将さんの能力『薄っぺらな欲望(ビニルテープ)』によるものだった。
女将さんの能力は触れたものに薄い膜を張るという能力らしく常に旅館にはその膜を張っており汚れたら幕を張り替えればオッケイというなんともまあ、旅館の女将にとって最強の能力だろうか。
しかしまあ、いろんな能力があるんだな。
戦いに能力を使わず自分の仕事のために能力を使う。
これこそが能力使いにとっての1つの答えなのではないだろうか。
その後は特に何もなかった。
強いていうのであれば夜ご飯の時に少し清さんと揉めたくらいだ。
何で揉めたかは秘密にしておこうと思う。
次の日朝の6時に清さんに叩き起こされついに鬼椀村へと出発した。
「鬼椀村ってここからどれくらいなんですか?」
とは聞いてみたけれども今目の前にある山の中心らしいから1時間くらいだろう。
「10時間だ。」
「え?」
「じゃ、いくぞ。」
「ええぇ。10時間?」
正直地獄だった。
当たり前だけど。
山の中を10時間車で走る。
ガタガタしてるから酔いそうになるし泥でハンドル取られるし。
30分くらいで死にたくなった。
地獄の10時間を終えてついに着いた。
鬼椀村に。
帰りたいけど帰りたくない。
不思議な言葉が出ちゃったぜ。
「今から村長のところへ向かうぞ。」
「ちょっちょっと待ってください。はきそうだから…少し休ませて…」
「2分だ。」
ええぇ
悪魔かよ。
あ、鬼だった。
〜
村長の家に着くとそこには何人かの大人がいた。
「ここに村長はいるか?」
「あんたら誰だ?」
「4区のNeCOだ。ここで、子供の失踪事件が起きていると聞いて調査に来た。」
大人たちのこんな子供が?と言っていたので清さんが全員殺すかと思ったが言われ慣れているのか流していた。
うちのリーダーにも見習ってほしい。
「で?村長は。」
「実は俺たちも探しているんだ。昨日から村長の姿が見えなくてな。」
「ちなみに村長は何歳なんですか?」
「今年で70だ。今起きている子供の失踪事件とは関係ないとは思うのだが…」
〜
「清さんどう思います?」
「関係ないわけないとは思う。だが、子供ばかり狙っている奴が70の爺さんを誘拐するとも思えんがな。」
「そこなんすよね。」
「とりあえず俺は見回りをしてくるから真は寝とけ。」
「あ、俺も行きますよ。」
「真はよって疲れてるだろう。宿で休んでおけ。」
イケメンかよ。
俺は清さんの言葉に甘えて村の宿で休むことにした。
部屋の冷蔵庫には一本のジュースが入っていたので飲むことにした。
「この村で何が起きてるんだ?子供だけが消えるなんて…いや、爺さんも消えたのか。清さんの身に何もないといいが…」
まあ、大丈夫だとは思うけど。
コップに注いだジュースを少し飲む。
「ゴッホゴッホ。オエ。」
なにこれ?
甘!
喉焼けるかと思った。
あとで聞いたところクチアの実というこの村でのみ取れる果実のジュースらしい。
普通は水で薄めて飲むものらしい。
たしかに冷蔵庫の中に何本か水入ってたけど…
夕食を食べたあと疲れが一気に来たのか泥のように眠ってしまった。
朝起きると時計は9時を指し示していた。
寝坊した。
清に怒られると思ったのだが、そもそも清さんがいない。
旅館の人に聞いても昨日は帰っていないという。
まさか、清さんが?
まじか。
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