20話 まずは…お疲れ様です。
体温が消滅した体。
崩れている壁や地面。
背中から血を流している女。
存在したことがまるで嘘だったかのように一片も存在しない『ケルベロス』。
そこにはそれ以外なかった。
凪沙はこの状況を飲み込めなかった。
勝ったのか?
にしては負傷しすぎている。
では負けたか?
だとしたら『ケルベロス』はどこにいる?
あの敦くんの名を名乗った何かが倒してくれたのだろうか?
ただ1つわかっているのは、私は何もできなかったということだけ。
〜
「ここにいたのか、『ケルベロス』。NeCOが君の分身を倒してくれたから探しやすかったよ。」
メガネをかけた男の前には何かの液体に入っている男がいる。
「まあ、話しかけても君には通じないか。能力の過剰使用による植物人間状態。いったいどれだけ能力を使わされたんだか。」
メガネをかけた男はケルベロスの入っている水槽のようなものに右手で触れる。
「では行こうか…」
次の瞬間には『ケルベロス』とメガネをかけた男は消えていた。
〜
真希と凪沙は真二を担ぎ12区へと戻った。
真二の体は研究者たちに渡した。
貢も一緒に帰るはずだったのだが、見つからなかった。
『ケルベロス』を倒すためとはいえ2人も犠牲を出してしまった。
久々の大失敗だ。
2人は琴に会うために15階へ向かった。
琴なら貢の場所がわかるかもしれなかったからだ。
しかしそこに琴はいなかった。
見覚えがるような無いような凪沙より背の高い痩せた男が立っていた。
「海津さんと大野さんですね?」
「はい、そうですが…えっと…」
「僕は神戸 正義と言います。12区で研究員をしています。
そういえばそうだ。どこかで見た気がした。
研究員ね。
「まずは、その…お疲れ様です。」
その後簡単な自己紹介の後情報を交換しあった。
『ケルベロス』の能力や真二の死、『雷鬼』の強さなどを伝えた。
神戸はその『雷鬼』は敦であるということ、琴が何者かに襲撃された事を話した。
神戸は『雷鬼』の強さを知ると早速研究に取り掛かると言いでて行ってしまった。
「取り敢えず、七宗さんのところに行こうか。」
真希の提案で2人は琴のところへと向かった。
神戸によれば琴は自室で寝ているらしい。
外相などは一切なくただ寝ているだけだそうだ。襲撃されたにも関わらず行った事は琴を眠らせただけ、犯人の意図が読めない。目的は何だったんだ?なぜ琴を眠らせただけなのだ?ここは嫌われているとはいえNeCOの拠点、重要なものも多くはないが無くはない。それら全てに対して何もされていない。
侵入方法も不明。
急に現れたようにカメラには写っていた。
瞬間移動の能力なのだろうか?
とにかくいまの段階でこの犯人に対しては何もわかっていない。
「七宗さんの部屋はここであってるの?」
「あっ。はい、ここです。」
2人は琴の部屋に入った。
「あっ。来たの?」
部屋に入ると琴がどこかで見たことがあるような気がする恐らく拠点の職員の人達と麻雀をしていた。
「あっ!それポンっす。」
「え?琴元気なの?」
「ええ。なんか寝てただけ見たい。ポン。」
「えーと…良かった。のか?」
「ツモ。ダブ東、純チャン、トイトイ、三暗刻、ドラ3、16000オール。」
「まじすかぁ。琴さん半端ないっすわ。」
「役満とか…東二局っすよ。」
『植物園の管理人の服戦闘特化モード』
「ちょっと一回やめて貰おうか。殺すぞ。」
逃げた。
すぐ逃げてくれた。
「ねぇ琴。私は知ってるよ。琴が麻雀するのは辛い時だって。特にいい役で上がるのはすごく辛い時だって。貢、もしかして…」
「聞こえないの…いつも聞こえた音が…消えちゃったの。」
「そっか…」
〜
「今回は本当に申し訳なかった。各務原にも伝えたいのだが、取り敢えず一回5区に帰らせて貰おうと思う。『苺』と一緒に帰ろうと思う。真二君と貢君の葬式には必ず来る。」
そう言って真希さんと『苺』は5区へと帰って行った。
『苺』の暴走騒動から始まった、DoG幹部『ケルベロス』との戦いは終わった。
〜
『ケルベロス』との戦いより一週間前。
「清さん、まだですか?」
「まだだ。」
「早くして下さいよ。」
「俺は年下だ、さん付けなんてやめて下さい。」
「まあ、そうなんですけど…憧れですし…」
「いやでは無いが…」
「ていうか早くして下さいよ。」
「まだだって言ってるだろ!カップラーメンは15分待つ派なんだよ!まだ、10分しか経ってないだろうが!」
4区に向かう途中の清と真が道の駅で清と真がもめていた。
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