14話 ゲリとフレキ登場!

「ねえねえ、君達が『ケルベロス』様を倒しに来た人たち?」


「だったらここは通れねえなぁ。」


身長は王者程の160位の双子が目の前に立っていた。


「お前らは、確か…『ゲリ』と『フレキ』だな?」


「あれあれ?僕達のこと知ってるの?僕達も有名になったのかなぁ?」


「バカなことを言うな。あいつは5区のリーダーの大野 真希だ。裏切り者の娘だからな、普段外に出ていない俺たちのことを知っていても不思議ではない。」


「ここを通せ。何もしなければこちらも何もしない。」


「おいおい、それって全くもって取引として成立してなくない?お互いにメリットがなければ取引としては成立しないよ?」


「その通りだ。自分の意見のみを通そうとする。最低としか言いようがない。」


「お前らのことなんて知ったことか…」


「今なんて言った?そんな小さい声聞こえないよ。」


「聞き手が聞こえなければ、話し手にはなれない。」


「お前らなんかに、話すことなんかない!」


『植物園の管理人』


真希の右腕から植物のツルのようなものが出現する。


正確には、ものすごい勢いで成長している。


ツルは『ゲリ』と『フレキ』を縛り付ける。


「これは、植物か何かかな?結構縛る強さ強いね。」


「こいつの能力は確か植物の種を成長させるものだった気がする。おそらく何個か種を持っているのだろう。」


「お前らはこのまま絞殺する。」


「絞殺かぁ…。やだぴょん。」


『凍てつく世界(ジ・アイス)』


『ゲリ』の左手が真希の成長させた植物に触れた瞬間ガラスのように植物が割れた。


割れたのだ。


「ええっ⁉︎何ですか今の?植物が割れた?それに今、あの『ゲリ』とか言う人、左手から能力を出しませんでしたか?」


動揺する凪沙をよそに真希は大方予想通りという顔をしていた。


「あいつは、全内臓逆位症なの。」


「ゼンナイゾウギャクイショウ?」


「全ての内臓が逆になっている先天的な病気みたいなもの。そのせいで、彼にとっての右手は左手、右手は左手となってるの。そもそも全内臓逆位症の人が少ないからどうなるかは解明されてないんだけれどね、DoGは鬼の研究だけは最先端だから…」


「な、なるほど。では、彼らの能力は?」


「左手から能力を出した方が『ゲリ』そして、もう片方が『フレキ』。能力は…」


『凍てつく世界』


「何話してんだよ!」


『ゲリ』の左手から何か液体のようなものが出る。


『植物園の管理人』


「『リーフシールド』!」


真希の手から植物が伸び渦を巻きながらカタツムリの甲羅のような形になり、『ゲリ』の左手から出た液体を全て受け止める。


瞬間。


植物はまたもガラスのように割れた。


「相性が悪いね、私の植物じゃ、あんたの液体窒素には。」


「へーえ。僕の能力知ってるんだ。君のお父さんはどこまで知ったのか興味が出てきたよ。」


「あんたなんかに父のことなんかひとつも教えない!」


真希は睨みながら、激しい殺意を覚えながら攻撃をしていた。


『綺麗なバラには棘がある(ローズバインド)』


真希の右手から成長した薔薇が『ゲリ』の左手を締め付ける。


が、


「僕には聞かないに決まってんだろ?」


『ゲリ』の左手に巻きついたはずのバラは全て凍りパリパリに割れていた。


「お返し!」


『ゲリ』は液体窒素を纏った左手で薪に殴りかかる。


『水球(すいきゅう)』


しかし、その左手が届く前に凪沙の能力の方が少し早かった。


「私だっているんですよ!」


『ゲリ』は凪沙の能力により吹き飛ばされたが『フレキ』により傷つくことなく体制を立て直した。


『意思を持つ糸(ストリングカーニバル)』


「悪いな助かったわ。これがなきゃ壁に激突してたわ。」


「かまわんさ。」


「寛大な心に感謝します。」


『ゲリ』が吹っ飛び『フレキ』がそれを布のようなもので助けたように凪沙には見えた。


「何なんですかあの能力は?」


真希は相手から目をそらすことなく答える。


「奴の能力は右手から自由自在に糸を出すことができる能力。おそらく今のは出した糸で布をつくたんだろう。」


「糸ですか…それにしては丈夫すぎる気もしますけど…」


「材質や長さは自由にできるらしいから、さっきのも丈夫な繊維で作ったのだろう。そんなことより、今はあいつらが話している間に速攻で決める。」


『植物園の管理人の服タイプ戦闘特化』


右手から植物が真希の体を纏うように成長する。


「なにこれ?植物の鎧?」


「そう。植物を通常より少し丈夫にして体に纏わせる。植物だけど銃弾くらいなら止められる。しかも軽い。」


真希は可愛くうウィンクをして見せる。


「さてでは、行きますか。」


『植物の怒り(しょくぶつのいかり)』


真希は右手から植物から剣を作りながら『フレキ』に向かって走りだす。


真希は剣を『フレキ』の首をめがけて切るが、『フレキ』は真希の方を一瞥もする事なく布を出して止める。


「やるね。」


「あんたが弱いだけだ。」


「僕がいるのも忘れんなよ。」


『凍てつく世界』


『ゲリ』が液体窒素で出来たサッカーボールのような塊を真希に向かって打ち出す。


『アイスボール』


「だから、私もいるって言ってんでしょ!」


『渚』


凪沙の水が『ゲリ』の液体窒素から真希を守った。


当然、水は凍ったが真希への被害はなかった。


「あんたの相手は私だ!」


「へー。いいね、そういう強気な子は嫌いじゃない。」


『ゲリ』は凪沙の方へ向かいながら『アイスボール』を3発ほど撃つ。


今までの凪沙であればこの3発で体が凍り負けていた。


しかし、凪沙は学んでいた。


先ほどの真希の植物の鎧からこれを自分の能力でも再現できるのではないかと考えていた。


自分の体の周りに能力を発動させ続けるのはとても難しい。


少しでも気を抜けば自分の能力に殺されてしまう可能性もあるのだから。


それを平然とこなした上で剣まで作り、あの素早い動きができるというのはやはり並大抵の努力ではできないことだと思うので、真希の凄さ、リーダーとしての才量を見せつけられた気分だった。


おそらく、いや100%あれと同レベルのものは今の私にはできない。


でも、あの液体窒素から身を守るだけならできる!


『水の鎧(みずのよろい)』


ただ水を自分の周りに発生させただけかもしれないがこれが今の私にできる精一杯!


液体窒素は凪沙の水にあたりその辺りの水を全て凍らせた。


凪沙の能力では自分で発生させた水でも氷に成ってしまえば操ることは出来ない。


つまり、すぐに水は剥がされてしまう。


凪沙が何もしていなければ。


「なるほどね、君も考えたね。そうやって水を常に動かしていれば凍った時にすぐに弾けるし一度に一つの部分が凍らないというわけか。確かにそれを突破するのは難しそうだが…君はその間攻撃に転じれないことをわかっているのか?」


『ゲリ』は『アイスボール』を撃ち続ける。


「うるさいな。そんな事くらい分かってる!」


凪沙は相手の攻撃を受けては全て弾く。


凪沙の後ろや横には沢山の氷が並びそれらが全て溶け始め、辺りは雲の上の様になっていた。



『意思を持った糸』


『フレキ』の右腕から何本もの糸が真希に向かって放たれる。


「確かにあんたの布は私には切れなかった。でも、糸なら切れる!」


真希は植物で作った剣で『フレキ』の糸を切りながら距離を詰める。


「なかなかの太刀筋だな。剣道でもしていたのか?」


「残念。私は剣道なんてやってない。子供の頃習ってたのはバレエだけよ!」


「バレエか…」


「何よ?こんな奴がバレエって言って笑いたいわけ?」


「笑う?何を言っている?私はただ、お前の強さの秘訣を知って納得しただけだが?」


「え?」


「そのお前の変な態勢になっても倒れないその体幹の強さの秘訣を知って納得しただけだ。」


その言葉のせいか真希の刃に込めた力は少し弱まっていた。


そして、その少しの力は糸を切ることができる物から、ギリギリ切れない物へと変えた。


「しまった…」


『フレキ』は当然その瞬間を見逃すはずがなかった。


真希の剣を、全身を『フレキ』の糸が縛る。


「なんださっきの太刀は?急に力がなくなった様に感じたが?ただのミスなのならば自分の全てを失ってしまうこととなるミスだ。死んでも後悔するがいい。」


『フレキ』は右手から糸を出しその糸で槍を作る。


「何か最後に言うことはあるか?」


「……が…な。」


「なんだ?聞こえなかったが?」


「ありがとな。私を褒めてくれて。」


「何を言っている?なんだ?死にたかったのか?」


「私はこんな性格だから昔バレエをやっていたと言うと笑われるだけだった。笑わずに聞いてくれたのは何人かいたが、褒めてくれたのは2人目だ。」


「俺は褒めたのではない、ただ分析しただけだ。勘違いするな。こんな事で同情して殺されないと思ったのであれば甘い以前の問題だな。」


「馬鹿を言うな。確かに動揺をして力が入らなかったのは確かだが、殺さないわけでもないし、ましてや負けを認めるわけなんて無いに待っているだろう。」


「何を言っている?ここからお前が勝てるとでも思っているのか?」


『フレキ』は真希の腹に糸でできた槍を刺す。


真希の体からは血が溢れ地面にポタポタと一滴一滴落ちていった。


「ふん。何もできんくせに粋がるな。」


『フレキ』は真希の体から槍を抜くと一層血が溢れ始める。


しかし、真希の顔は笑っていた。

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