8話 発表があります!

出来る事なら1人で倒したかった。


しかしながら今回の相手を1人で倒すのはほとんど不可能に近かった。


そこで真二に手伝ってもらうことにした。


真二の能力を使いビルの一階の部分を全て砂に変えてもらった。


その後に俺の能力であのビルの大黒柱を殴り壊す。


そうすればビルが倒壊すると思ったからだ。


狙い通りビルは崩れた。


そしてその隙をついて『岩石飛翔波』を打ち込むことができた。


真二との事前の打ち合わせ通りといえば通りなのだが、自分だけで倒したかったというのもまた事実だった。


「ああーーーー。センスがねえ。」



ビルが崩れて全員がビルの瓦礫に埋もれかけたが全員真二の能力によって守られた。


ビルを壊してしまったことでリーダーに怒られた。


しかし持ち主の人がもともと壊すつもりだったからという事らしく許してくれた。


淳にやられた奴も全員助かった。


右腕を切り裂かれた奴も右腕の破片ごとカプセルに入れたら綺麗に戻っていた。


しかし、当の淳はというと全く傷が癒えていなかった。


少しずつ回復してはいるのだが、明らかに他のものと比べると遅い。


研究者たちが言うには淳の鬼の力が弱まっているらしい。


理由は不明。


今までどれだけ貢たちが能力を使っっても鬼の力自体が落ちる事はなかった。


とにかく今はこのカプセルに入れ続けるしかない。


「テメェが起きねーと謝れねーだろ…」


「今何か言いましか?」


「うっせえ、さっさと淳を治しやがれ。無能が!」



「はいみなさーん。ご報告がありまーす。」


王者は全員を集め大きな声で言った。


「何スカ?」


「なになに?リーダー?」


貢と真二と琴は振り向いただけだった。


あれ?反応薄いな。


さっき貢を怒こりすぎちゃったかな?


でもなぁ、始末書書くの俺なんだよなあ。


めんどいんだよなあ。


あれ?


1人いないぞ。


「淳くんは?」


すると貢が答えた。


「カプセルの中で寝てるよ、あんたが寝転がっている時に怪我したんだよ!」


「そうか…それは悪いことをしたな。」


「それだけかよ!」


「それだけだが?この世界はガキの遊びじゃないんだ、弱い奴は死ぬ。俺がいなかったから傷ついた?それが俺のせいなのか?そう思っているのなら貢、辞めていいぞ。俺のやり方に合わないからな。」


その時に誰かがいなければ人を助けることは出来ませんでは話にならない。


貢も当然分かってはいる。


「いや、分かってます。ただの八つ当たりです。すみません。」


年下の人間に敬語を使い、怒られる。どれだけの屈辱だろう。だが、貢はどうにか自分を保った。


「別にいい。それで、淳はいつ頃に回復は終わる?」


「それが、回復しないんですよ。鬼の力が弱まっているらしくて。」


聞いたことのないことだが、現実にそれが起きているのなら受け入れるしかない。


「分かった、あとで様子を見に行こう。それで、話なんだが俺は今から長い事ここには帰ってこなくなる。」


「え?」


一同は開いた口が塞がらなかった。


「いやいや、冗談でしょ?今淳くんとリーダーが抜けたら5人ですよ?5人じゃきついですって。」


そんな真の言葉に対してさらに絶望するような一言を王者は告げる。


「5人じゃない4人だ。真お前には4区に行ってもらう。」


「はい?なんでですか?」


「いや実はな、4区から合同で解決したい事件があるらしくてな、そこでお前に行ってもらおうと思ってな。」


「いや、他の区との協力は大事かもしれないかもしれないけどおれじゃなくていいっしょ?」


「無理だな。貢は口悪いし、俺は行けないし、琴と真二は無口だし、淳くんは新人だし、お前しかいないんだよ。それにその事件の担当が清なんだよ。」


そこまで言うと真はため息をつきながら答えた。


「はあ、それ断れない奴じゃないですか。」


「どういう事?」


凪沙の問いに真は答える。


4区のリーダー揖斐川 清は俺らのリーダーがリーダーになる前は最年少での六連星入りを果たした天才と言われていたのだが、自分よりも3つ下の人間に記録を塗り替えられたことにより、リーダーへの対抗心が強いのである。


だからリーダーはあまり一緒に居たくないらしい。


しかし俺は清に対してとてつもない程の恩がある。


昔4区へ行った時にDoGに襲われたところを助けて頂いたのだ。そしてその姿を見てNeCOになることを決めた。


俺にとって清は恩人であり目指すべき目標なのだ。


「へーそうなんだ。チャラ男のくせにちゃんとした理由でNeCOになったんだ。」


「俺をなんだと思ってんだよ。」


「はいはい、うるさいうるさい。いいか、貢と真二と凪沙には無線を渡す。これからはこれを使って連携を取るように。今までみたいにツーマンセルってのはしばらくできない。琴は今まで通りにしてもらうから、お前ら3人にこの12区を任せる。頼むぞ。」


「「「はい。」」」


「じゃ、俺は今から行くね。真、お前は明日の朝の8時までに4区につけよ。」


「それって今からじゃないと間に合わないじゃないですか!」


「そうか?俺なら1時間で着くぞ。」


「そりゃあんたは十二星会ですからね…」


十二星会のメンバーは速く現場につけるように移動による能力の使用が認められている。


当然真は認められていない。


まあ、俺の能力は移動には使えないんだけどね!



王者と真がいなくなってから3日ほど経った。


「静かだな。」


「そりゃ2人もいなくなったら静かになるよ。」


「確かにな、真二と琴は話さねぇから実質俺とお前だけだもんな。」


「最悪な事にね。」


貢には突っ込むのもめんどくさくなっていた。


「あのー、今いいですか?」


部屋の入り口から声が聞こえた。


「ああ?」


振り向くとそこには1人の女の人がいた。


「なんだお嬢か。どうした?」


「お嬢って呼ばないでください。」


この子は『熱風』の受付嬢である。


受付嬢だからお嬢。最初は貢ぐしか行っていなかったのだが、なぜかものすごい速度で広がり今では本名を覚えている人はほとんどいない。


「お嬢!どうしたのー!何か用があるの?」


「はいそうなんです。」


おい。


今こいつもお嬢って呼んだよ。


これは差別じゃないだろうか?


「実は5区の方がきておりまして、会いたいそうです。」


「5区?何の用だろ?まあいいや、13階に呼んでもらっていい?」


「はい。わかりました。」


「ほら貢、13階に行くよ。」


「はいよ。」


13階に着いてから少し経つと5区の人たちが来た。


5区の人は3人。


そのうち1人はリーダーである、大野 真希(おおの まき)がいた。


「何の用ですか?」


「はい、12区の皆さんにある依頼をしに来ました」


いいねぇ。


仕事。


いい響きだ。


さあ、どんな仕事でもきやがれ。


「君たちには犬を探してもらいたい。」

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