3話 ようやく登場! 主人公!
鬼の能力には基本的には触れる、放出するこの2つしかない。触れるというのは直接右手で触った時に能力が発動する。
真二の『大地』や貢の『点火』などがこれに当たる。
さらに、凪沙の『渚』は水素と酸素に触れて水を生成し、水に触れ水を操る。
たまに2種類以上のものに『触れる』ことが出来る人間もいるが、これは極めて例外である。
次に放出。
これは右手から能力を打ち出すというもの。
淳の『雷鬼』や真の『鎌鼬』などはこれに当たる。
では琴の『管弦楽団』はなにに当たるのかというと、これは『触れる』と『放出する』のどちらにも当たる。
しかし、分類上はどちらでもないことになっている。
その理由は、そもそもの能力が特別だからである。
能力は基本的に『火』『水』『風』『土』『雷』この5つしか存在しない。
しかし、たまにこの5つ以外の属性を持つ人間が存在する。
それを『ミュータント』という。
基本的に能力の属性や効果は親から子へ遺伝することが多い。
そんな中親と全く違う能力をもつ赤ちゃんが生まれることがある。
その理由は全く不明で分からない。
そのほかにも『エンチャント』という『ミュータント』とは違う生まれつきのものも存在する。
これは例えば、水を生成する能力者がいるとしてその生成された水が特殊な水の時『エンチャント』と呼ばれる。
つまり、水を生成するのではなく触れると力が入らなくなる水を生成する能力者の事を『エンチャント』という。
どちらも珍しく、ほとんど存在しない。
しかし選ばれるものは選ばれる。
どちらも持っている者も存在する。
〜
うっかりしていた。貢には伝えたのだが貢以外に伝えるのを忘れた。
あいつらの事だから知らない奴が来たら殺しかねん。
貢もそれ見て楽しむような奴だしなあ。
会議があったとは言えもっとちゃんとするべきだった。
大丈夫かな?
大丈夫じゃないよな?
俺の責任かな?
始末者書くのめんどくさいんだよな。
ドゴオン。
なに?今の音なに?
上の階から聞こえたけど…
もしかしてヤっちゃった?
まずいまずいまずい。
急いで14階へ上がり、みんながいるであろう部屋を覗き見る。
そこには全身火傷の見知らぬ誰かと、それと自己紹介をしている俺のメンバーだった。
これはどういう事だ?
自己紹介は分かる
挨拶は大事だからね。
でも、自己紹介で火傷はせんだろ。
それになんか濡れてるし、粉々になった岩もあるし、あいつら、ヤったな。
やべえ。
始末書確定だわ。
〜
「だいたいこれで俺たちのことはわかっただろ。あとはリーダーが来れば完璧だな。」
「リーダーの方は今はいらっしゃらないんですか?」
「ああ。なんか12星会の会議があるらしくてな。多分もう帰ってると思うけどな。」
「そうなんですか…その人は強いのですか?」
「ああ、史上最年少16歳で12星会入りを果たした超強い人だ。俺が唯一年下で尊敬している人だ。」
そんなに強く、尊敬される方なのか。というか16歳って今の僕より年下じゃないか。
「あっ!」
真が急に叫んだ。
「なんだお前?急に叫ぶな。耳障りだ。」
「耳障りって…そうじゃなくて、扉のところ。リーダーが戻ってきたんだよ。」
その言葉を聞いてその場にいた全員が扉の方を見た。
「リーダー帰ってきたんですか!私リーダーに渡したいものがあるんですけど。」
「凪沙、それは後にしてくれ。まずはその子だ。貢、新入りの子だな?」
「ああ。そうだぜ。」
「ふむ。私の名前は各務原(かがみはら)だ12区のリーダーを勤めている。能力は放出系の炎だ。これからよろしく頼むぞ。」
そう言って、身長150後半ほどの年下の少年は外に出ようとした。
が。
「なーに、カッコつけてんすかリーダー。いつもそんなんじゃないでしょ。新入りにちょっとカッコつけたいからって、調子乗らないでくださいよ。」
「黙れ、真。焼き殺すぞ。」
「怖い怖い。王者(おうじゃ)さんは怖いなー。」
「はい殺すー。絶対殺すー。」
「しかもなんスカ?放出系の炎の能力って?ちゃんと言いなさいよ。」
「調子乗んなよ。」
そう言って、リーダーの右腕は鬼の物へと変貌する。
『紅炎(プロミネンス)』
目の前にいる真に向かって特大の炎が出る。
今までこんなに強い炎を見たことがない。いや、炎に限らずこれほどの威力の能力を見たことがない。
「カッカッカッ。驚いたか?あれがうちのリーダーよ。」
「さっきの王者というのは?」
「本名だ。キラキラネームが嫌で王者と呼ぶとあんな感じで切れる。たとえ仕事中でも。だから、仕事中は絶対にリーダーと呼ぶことがうちのルールだ。」
「はあ。」
「ちなみに能力名の『紅炎』もバカにすると怒る。昔イキってノリでつけたのを後悔してるらしい。」
もはや呆れすぎてため息も出ない。
「でも、強さは折り紙つきだぜ。12区は何故か最弱と言われるがそんな事はない。うちのリーダーはあの、1区の最強の鉄壁にも勝ったことがあるくらいだからな。」
「そんな!あの人に勝ったんですか?そんなのありえませんよ。あの人は今までに一度も負けたことがないはずですよ。」
「そりゃ、そんなの言わない方がみんなの為になるだろ。」
それはそうだ。そんなの公表して得する人が誰もいない。
〜
「えーと…各務原 王者です…12区の拠点『熱風の砦』通称『熱風』のリーダーです…」
俺は新入りにカッコつけることに失敗し落ち込んでいた。
「あ、あのー僕はかっこいいと思うますよ…」
まさかの部下に気を使わせてしまった。
相手は年上かもしれないが、やはり部下に気を遣わせるのは心に来るものがある。
「ほんと、こんなんがリーダーでごめんなさい。」
「あーあ。リーダーの卑屈モードが始まっちゃった。」
めんどくさそうに真はため息をつく。
「こん時のリーダーだけは尊敬できねんだよな。」
「カッコ悪い…」
「ダッセーなリーダー。」
「私はそんなリーダーも嫌じゃないよ!」
「ありがとう。凪沙。グス。」
「この時のリーダーの心の音は汚い…」
「それって、どんな音?」
「なんというか…汚い…」
「ねえ、直すから。そういうところ直すから。もっと具体的に教えて!」
「無理。治らない。」
「なんか今字が違ったよ!」
そう言ってから、リーダーは床に寝転がり泣き始めた。
「これ、どうするんですか?」
「ほっとけ。時間が経てば元に戻る。」
そう言ってメンバーの皆さんはどこかに行ってしまった。
とりあえず僕は簡単に挨拶と自己紹介だけ済ませた。
そのあと、貢さんに2階の救護室へと案内される。
そこにはカプセルがあり、その中に入ると大概の傷が治るらしい。
その原理は鬼の力を無理やり借りて治癒力を高めているらしい。
他にも鬼の力を封じるものや鬼の力を測るものなど色々あり全てを説明してくれたが、1つも分からなかった。
唯一このカプセルに入ると傷が治るという事は心のメモにメモをした。
3区にもあるにはあるがそこまでのけがを負ったことがなく、使った事はなかったので、少し興奮している。
結論から言うと、もう二度と使いたいとは思わない。
まさか、高速で皮膚が形成されるのがこんなに気持ち悪い事だとは思わなかった。
その後に11階にある僕の部屋へと案内してくれた。
男が11階で女が12階らしい。
3区の時は研究員しか住むことができなかった。
そのせいで3区の時は家賃で困っていた。
そんな僕にはとても嬉しい。
部屋に入ると、あらかじめ送っておいた自分の荷物が置いてある。
荷ほどきを早いうちにやれよと貢さんに言われたので、今しようと思う。
貢さんは手伝うと言ってくれたが、流石に申し訳ないので断った。
そうして、荷ほどきが終わる頃には夕飯の時間となっていたので1階にある売店でパンを買い部屋で食べ寝た。
そうして、僕のNeCO12区のメンバーとしての1日目が終わる。
次の日、朝起きると復活したリーダーが全員を招集した。
と言っても朝礼のようなものではあるが。
そこで仕事を渡される。
12区では基本的に2人一組が基本らしい。
凪沙と真、真二と貢、琴とリーダーと言うのが今までらしいのだが、今日から僕が加わったことにより少しペアリングが変わった。
凪沙と真ここは変わらない。
貢と淳。僕は貢さんと組むらしい。
そして、真二と琴。無口もん同士のペアである。
といってもいろんな人と組むのであまり気にしなくていいそうだ。
リーダーは今日も会議があるらしい。
そして、僕は12区に来て最初の仕事を受ける。
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