2話 ゆかいな仲間たち

「いやー、しかし良かった。3区に行ってお前を迎えるつもりだったんだが、もういないって言われちまってよ。そしたら帰りの電車で会えるとはな。運命かもな。」


「はあ…そうですか。あの、土岐さん一つ聞きたいことがあるんですが。」


「貢でいいぜ。でなんだ?」


「はい、では貢さん。さっきのはどうやって倒したんですか?」


先ほどの一撃おそらくなにかしらの能力なのだろうが、ただの炎系の能力とは思えなかった。


もしかしたら『エンチャント』の可能性もあり得る。


しかし、貢はその問いに答えてはくれなかった。その代わりに。


「お前、NeCO何年目?」


「え?えっと今年が初年度です。」


「だろうな。そんな質問をする奴は新入り以外ありえん。むしろ新入り以外が言ってきたら即座に殺すところだった。良かったな新入りで。」


「わかるんですか?僕が新入りか。」


「まあな。さっきの戦いも見ていたが、素人そのものの戦いだった。」


「確かに威力や充電可能量など至らない点はありましたが、それでも僕なりに頑張りました。」


自分が思う最適解をあの時は行った。それはバカにされるのは、先輩であろうと許せなかった。


「確かに面白い攻撃ではあった。人質も多少傷つくが死にはしないやり方だし、犯人も行動不能にできる。だが、あの時に限って言えばあれはセンスのない判断だ。」


言い切られてしまった。自分の思う最適解をセンスがないと言い切られたのである。


「何故ですか?何故あの行動にはセンスがないんですか?」


「そいつはなあ、こいつのナイフを持ってる手が右腕だったからだ。それだけで、雷かは分からなくともなにかしらの警戒はするべきだった。そこに能力を打ち込むなんてのは全くのナンセンスだ。いいか?これから先いろんな敵と会うだろうが、右手に持ってるものは警戒しろ、いいな?」


「はい…ありがとうございます。」


「いやいい。少しずつ学べばそれでいい。学びついでにもう一つ、さっきお前は俺の能力について聞こうとしていたがいつどこで敵に聞かれるか分からん。拠点以外では能力の話はNGだ。」


この人は口調や見た目声などは確実に悪人なのに心の奥はとてもいい人なのかもしれない。


「おい、着いたぞ。ここが俺たちの拠点だ。」


とても大きいビルだった。と言っても、3区にあるものとほとんど変わらなかったが。


扉をくぐり、受付まで行くと貢さんは右手で抱えていたさっきの犯人を地面に落とした。おろしたのではない。落としたのである。


「こいつ、さっき悪いことしてたから捕まえといた。DoGの雷使いだ。運んどいてくれ。」


そう言うと、こっちに来いと言ってエレベーターに入った。


受付の人がメンドくさそうに運んでいるのが一瞬見えた。


エレベーターの中でこのビルの中になにがあるのかを教えてくれた。


「1階がエントランスで2階から10階が研究所、11、12が俺たちの部屋があって、13、14が俺たちのアジト。そんでもって15には偉い人がいる。なんか質問はあるか?」


「いえ、特には…」


基本的には3区と一緒だったので、疑問は浮かばなかった。


「そうか。もう着くぞ。」


14階についた。


「こっちだ。」


エレベーターを降りて真っ直ぐ行って右に行った突き当たりの部屋に入ると、そこにはNeCOの猫金バッチをつけた人が4人いた。


「遅いよ。なにしてたの?」


「うるせえ。DoGが出たんだよ。」


「ほんとかよー。ドッキーは信用なんねーからな。」


「次ドッキーって言ってみろ。ぶっ殺す。」


「いいじゃないか、ドッキー。」


「殺す!」


「2人とも喧嘩は…」


「なんか知らない音がする…何かしら?」


その言葉をきっかけに全員が僕の方を向いてきた。


「「「「「だれだっ!」」」」」


「え?あのその…」


ていうか土岐さんはさっきまで一緒にいたよね?


「ここがNeCOのビルだってわかってるわよね?覚悟はいい?」


そう言って、右手をこちらに向けてきた。


そして、人の手から鬼の物へと変わっていく。


『水生成』+『水操作』


「『水牢獄(ウォータープリズン』」


彼女の右手から水が放出されそれが何本もの棒のようなものになり、僕の周りに柵のように囲い最後に水で出来た板をのせて完成する。


「って、解説してる場合じゃねー。僕はここに異動になった郡上 淳です!」


「誰だそりゃ!いくぜ、『鎌鼬(かまいたち)』」


チャラめの男の右腕が鬼の物になり引き裂くように手を振り下ろすと、そこから風の刃がこちらに向かってくる。


おそらく、この水の牢屋ごとこちらを攻撃してくるのだろう。


そして、この水の牢屋も常に水が高速で循環しているためふれれば、腕くらいなら切れてしまうだろう。


しかし、この状況を乗り切るにはこの牢屋をどうにかしなければならない。


鎌鼬は高密度な風の刃、雷でどうにかなるのもとは思えない。


少し考えはある。


見ずに電気を当てることで、電気分解し水素を発現させ水素爆発を起こす。


その爆発を利用すれば、どうにか逃げることはできるだろう。


その場凌ぎかもしれないが、とにかく今はこれしかない。


自分の右腕を鬼も物へと変貌させる。


「我が手に宿し『雷鬼』今、私に力を貸したまえ。」


『イカズチ』


右手に雷を纏い右側に思い切り飛ぶ。


右手で水に触れた瞬間に狙い通り水素爆発が生じる。


爆風によって水が一時的になくなりその瞬間に脱出する。


右腕は鬼の手であったこともあり傷はなかったが爆発により右手以外に火傷を負ってしまった。


だが、倒れるわけにはいかない。


ここで倒れてしまったら、またナンセンスである。


「僕は、3区より異動になりました。郡上 淳です!これから、よろしくお願いしまーす!」


喉から出せるだけ出した。


これで、わかってくれるだろう。


だが、目の前には車ほどの岩が向かってきていた。


「え?」


まずい。これはまずい。さっきのせいで全身が火傷と電気で動けない。だが、諦めないとさっき誓った。


僕はNeCOになりたいんだ。みんなを守るNeCOになりたいんだ。こんなところで死ぬわけには行かない。


「『雷鬼』力を貸せーーーー!」


『稲妻(いなずま)』


これが今できる最高の技。さっきのせいで威力は弱まるだろうが、それでもいけるはずだ。


直接拳で鉄槌を落とす必要があるのでギリギリまで力をためる必要がある。


あと、3秒。


「おいおい、さっきの判断はいい線してたのにな。闇雲に力を使うのは、ナンセンスだぜ。」


そう言って、いつ来たのか貢さんの手が鬼の物になる。


『点火(インパクト)』


拳が岩に当たった瞬間に岩が爆発した。


「お前ら、こぶしを下げろ。こいつはリーダーが言ってた、新入りだ。」


「マジで?」


首を高速で縦に降る。


「ごめーん。マジでごめん。ここってさ、俺ら以外が来たら基本敵だと思えって習ってきたからさ。」


「ごめんね。身体中怪我させちゃって。」


先ほどの風と水を操る男と女が謝ってきた。


「大丈夫ですよ。3区でもそうでしたから。」


NeCOに入ってくるやつなんて大概悪い奴なので、基本的に知らない人は敵が基本であった。


「悪かったな…立てるか?」


次に先ほどの岩を飛ばしてきた人が手を差し出してくれる。


「はい、ありがとうございます。みなさん強いですね。」


「はは、ありがとう…一応NeCOだからな。」


「あの名前を聞いてもいいですか?」


「勿論だ。俺は、白川 真二(しらかわ しんじ)だ、よろしく。能力は『大地(ガイア)』、触れた土や岩を操ることが出来る。」

次に風を出してきた男が、口を開く。


「俺は坂祝 真(さかほぎ まこと)ね。ヨロ。能力は『鎌鼬』さっき見たと思うけど、指先から風の刃を出せます。」


そして、先程牢屋に閉じ込めた女が。


「さっきは本当にごめんね。私は海津 凪沙(かいづ なぎさ)ね。能力は『渚(なぎさ)』、空気中の水素と酸素を合成して水を作り出せるの。そんでもってそれを操れる。よろしくね。」


「俺の名前はもう知ってるな、能力は『点火(インパクト)』物を殴ると殴った瞬間に拳との接地面に爆発が起きる。よく間違えられるが、ただの炎系の能力だ。ミュータントでもエンチャントでもない。」


先程の岩を破壊するほどの超威力。近接のみだが、かなり強い。


「あの…一個質問していいですか?」


「なんだ?」


「あの人は誰なんですか?」


そう言って僕は奥にいる髪の長い女性を指差す。


「ああー忘れてた。あいつは、俺とは違い、なんとミュータントだ。おい、お前も来て自己紹介しろ!」


貢さんはすぐに叫ぶが疲れないのだろうか?


ゆっくり歩いて来た。


歩いてくるのにイライラしたのか貢さんは歯ぎしりをしていた。


「私は、七宗 琴(ひちそう こと)。『し』じゃなくて、『ひ』だからね。能力は『管弦楽団(オーケストラ)』、さっきも言ってたけどミュータント。ちなみに遠くの音を聞いたり遠くに声や音を届けられる…」


「琴はすごいぞー、敵の心音を聞いて位置を探った位出来るんだぜ!」


「チャラ男うるさい…」


「いいじゃん、事実だし。褒めてるんだしさ!」


「これ以上言ったら…夜中に怪談を届ける…」


「なにその新しい嫌がらせ!」


顔が赤くなっていた。褒められるのが嫌なのだろうか?シャイという奴だろう。


これが、僕の新しい仕事の仲間。面白い人ばかりで楽しくなりそうである。


死にかけたけど!

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