最終話 しゅうえん

 ギドウバーンが荒れ狂うオーラを見に纏い衝撃波を発生させて数分。再びギドウバーンの体はみるみるうちに変形し、顔は鰐のように口が長く歯が鋭く、龍のような鋭い目つきに変わる。

「ガイバオに眠る死者の思念を我が力に。」

「哀れな人間と醜い人間か。貴様の過去がどうであったかは知らぬが、1人の考えでどれだけの人が死ぬことになったか、思い知らせてやる。皆の思いをひとつに、光よ我が道を照らせ。」

 日本を崩壊に導き、世界を混沌に飲ませようと企む因幡黎ことギドウバーン、そして新の光の勇者として混沌に立ち向かう瑞島槙侍と大天空城の女王にして、大地の女神ガイアである椎名愛里沙が対立する。

 愛里沙はすぐにノクティスの詠唱に取り掛かる。槙侍は複数個のアミュレットを駆使し魔法で戦う。

 ギドウバーンは降り注ぐ魔法を交わし、闇の魔法を槙侍目掛けて解き放つ。

両者共に互角と言えるがノクティスの発動と共に槙侍の勝ちが確定する。槙侍は愛里沙に攻撃が行かないように守りながら戦っている。ノクティスの詠唱には時間がかかり、術者の負担がかなりかかる。そのため、槙侍は愛里沙を絶対に守らなければならない。

「小賢しいゴミめ、所詮世界のゴミでしかない人間が今更生き抜こうとしても世界なんぞ救われはしない。死から逃れることは出来ないのだよ。死が早まるだけでだ、感謝して死ぬがいい。」

「断る、どんな理由でも死んでいい命などない。我々が生まれたのには意味がある。貴様が産まれた理由ももちろんある。だが、世界を脅かすものは排除させてもらう。」

 ギドウバーンと槙侍は何度も剣を交える。その度に空気に衝撃が走る。そしてふとした時に槙侍は言う。

「お前に大切なものはあるか。」

 その問がギドウバーンにとってキーワードであった。ギドウバーンの動きが一瞬止まった時、ノクティスが撃たれた。

 あまりの速さにギドウバーンは状況を理解できず、ノクティスの威力によって圧倒される。ノクティスの餌になったものはもはや身動きすら許されない。ギドウバーンの体に激痛が走り叫ぶ。傍から見たら尋問のようで醜い精細であった。

「貴様……許さんぞ.......どこへ行こうが……世界の崩壊は免れない.......むしろ動き…はじめ…た」

 次第にギドウバーンの声は遠くなり、ノクティスと共に姿を消えた。どこ空間であってももうギドウバーンはこの世界から消えた。

「これで終わったのかな。」

 愛里沙が心配した顔で槙侍の顔を覗き込む。

「ああ、これで世界は救われた。時期にこの塔も崩れるだろう。すぐにここから脱出しよう。」

 槙侍と愛里沙は逃げるように塔から脱出をした。



 大天空城の玉座にて王は槙侍と愛里沙両名に盛大な帰還の歓迎を行ってくれた。世界は救われ、日本の崩壊は留まった。日本の対応は我々人間の役目である。

王は槙侍と愛里沙にある提案をした。

「皆の者、世界は救われ平和への第1歩を築いてくれた新の光の勇者と大地の女神の結婚を提案したい。」王がそう宣言し大天空城の皆は歓声をあげるが、当のふたりは唖然としていた。

「あの、元々私は一般人で偶然風の精に導かれたもの、この方には対等なものでは無いかと。」

「何を言うか、こうして世界を救った事実だけが残ったあなたこそが勇者だ。女神であっても対等であるぞ。」

 いや、勇者と神のギャップを考えて欲しい、恐ろしく立場が違いすぎる。愛里沙も王の意見に理解が追いついていない。

「槙侍殿が世界を救い、愛里沙殿が勇者の力添えをした。それだけあれば結婚に値する。いかがかな。」

 再び王が問う。槙侍と愛里沙は見つめ合う。立場の違いはあるものの、共に好きであることには変わりなかった。


 その夜は盛大な晩餐が開かれ明け方まで歌や踊り、祝福は止まらなかった。















 新の光の勇者・瑞島槙侍によって世界の混沌侵食は留まったと見られた。しかし、大天空城の者は新たな手が降り注ぐことを目の当たりにすることになる。ガイバオ塔は滅びさえしたが、日本大陸目がけて強烈な波動をくらうことは、因幡黎を滅して数ヶ月後だった。そして、日本はさらに壊滅の世界へと変わってしまった。




-MESSENGER The End-

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MESSENGER 〜ガイバオ塔の由来〜 黒鐵桜雅 @koritukun

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