第14話 げきとう

 私はもう抗うことは出来ないのか。諦めて世界の滅亡を許していいのか。この荒れ果てた世界は救われないのか。私は弱いままでいいのか。

 このまま落下し続けていたらいずれ地上に叩きつけられて即死だろう。体が飛び散るに違いない。

 槙侍は諦めを決意し、力不足と死を受け入れることにしたその瞬間だった。さっきまで激闘を繰り広げていたガイバオ塔のてっぺんから白い光が溢れてきた。そして、信じめがけて飛んでくるのだ。

 槙侍は目をよく凝らしてみたら愛里沙が大きな竜に跨っていた。竜は槙侍目掛けて急降下し、竜の背に乗ることが出来た。

 愛里沙はすぐさま槙侍に駆け寄る。

「大丈夫?本当に心配したんだからね!!」

「すまない、だが次は必ず倒す。生きて帰るぞ。」

 槙侍は愛里沙の不安と心配をなくすよう心がけた。

 竜はガイバオ塔の頂上に登り、因幡黎を見下ろす。槙侍は黎に向かって言う。

「貴様の悪御意は許された行為ではない。貴様の誤った道を正し、世界を救う。これ以上の混沌の侵食は私が許さん。」

 槙侍は愛里沙に合図し、槙侍のみ竜から降りた。そして、再び槙侍と黎は剣を交える。

 凄まじい剣さばきが舞う中、愛里沙は竜の上で魔法を唱えるため詠唱を行っていた。

 愛里沙はノクティスを唱えるつもりはなく、同じ虹魔法であるシャイニングを唱えていた。魔法は直ぐに発動し、黎目掛けて凄まじい光の矢が襲う。それに合わせて槙侍は複数のアミュレットを同時に発動させた。

 シャイニングと槙侍の魔法は黎に直撃する。今度は黎が吹き飛ぶ。黎は傷を負いながらもまだ立つことはできた。

「俺はわからないのだ、この無意味な世界が今も尚生き続けていることに。同じ生命体にして何故傷つけ合うのか。何故人は人を傷つけ争うのか。人は始が独で終も独。どの生命体も孤独からは逃れられない。今更世界が救われようとこの星は次第に混沌に呑まれるのさ。」

 因幡黎はそう言い、次第に体から闇の霧が体から出てきた。霧は黎を覆い次第に体の形が変わる。因幡黎の体は変形していって魔物となっていく。

「これで終わらせることが出来るな。貴様が本当の混沌の元凶、ギドウバーンだな。今すぐ息の根を止めてやる。」

 さっきまでそこにいたはずの因幡黎は別の姿となっている。禍々しいオーラを見に纏い小さな体となっていた。その手には神々しい様な禍々し様な剣を持っている。

「この塔がなぜガイバオと名づけられたか、それは数多の死者の思念を宿しこの地へ踏み入れるものを削げみ呪うことからだそうだ。この剣はこの塔の思惑から生み出されたもの。ガイバオ剣の源は死者の魂。その1部となるがいい。」

 ギドウバーンはガイバオ剣を振りかざし槙侍に斬りつけてくる。槙侍はすぐさま対抗するが、ギドウバーンの振る力が重く体勢が崩れる。ギドウバーンは複数回剣を振るい次第に槙侍は距離を取らざるおえなかったが、すぐさまギドウバーンが距離を縮める。

「これが混沌の力。強烈な力でいて恐ろしい力だ。この世界にあってはならないものだな。」

「すぐに彼らの元へ向かわせてやろう。一時死をまぬがれはしたが所詮は生命体、いずれ死すもの。」

「それでも世界は滅んでいいものでは無い。」

 槙侍はそう叫び、アミュレットを駆使しながらギドウバーンに攻撃する。ギドウバーンは華麗な剣さばきで魔法を切り刻む。もはや勝ち筋はないと思われたその時、後方から無数の光の矢が飛んでくる。しかし、先程と同じ手口だからだろうか、距離を取ってかわす。

「同じ手が通用すると————」

 ギドウバーンが口を開いた刹那、ギドウバーンの背から心臓を貫くように剣が刺さった。槙侍がシャイニングで交わす隙をついてギドウバーンとの距離を一気に詰めていた。

「貴様、あらゆる策で挑むかと思いきや、逆に単純でわかりやすい策で来たか。」

「買い被るな、難しく考えるのは嫌いではないが戦うのにはやりやすい。これで終りだな。」

 槙侍はそう呟いてさらに剣をギドウバーンの体の奥にやる。だが、ギドウバーンは気味の悪い笑いをしてみせた。

「いや、まだ終わりではない。私は死なぬ。」

 ギドウバーンは黒く禍々しいオーラをより強く纏い衝撃波が発生する。槙侍はすぐに剣を抜くが衝撃が強すぎるため吹き飛ぶ。

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