第12話 とうそう
冷たい鉄の広場に孤独心をくすぐられるような場所に槙侍と愛里沙は降り立った。ガイバオ塔の1階部分で強い憎悪を抱いている魔物達がこちらの様子を伺っている。共に動く気配はない。しかし、槙侍は魔物達の威圧感を気にすることなく、剣を抜き魔物達に襲いかかる。
「死にゆくものは成仏せよ。そして、我々の勝利への糧となるのだ。光の加護よあれ。」
槙侍は各アミュレットの力を剣に宿らせて魔物達を一掃する。
槙侍の剣を振るうスピードは落ちることなく塔の1階部分はなんの問題もなく制覇した。
槙侍はいとも容易く魔物を殲滅し塔の中間地点に辿り着く。しかし、槙侍を待ち受けていたのは髭を足くらいまで伸ばした宙に浮いたお爺さんだがいた。
「ガイバオ塔の破壊を拒むものシーゴール。これ以上の前進は許さん。ギドウバーンの理を世界に広め混沌の世界を創世するのだ。」
「世界を破壊するだけに何のメリットがある。どんな理由であろうと阻止してみせる。」槙侍は喉の奥から声を精一杯出す。
シーゴールは複数の魔法を繰り出すが、槙侍は剣で魔法を切ったり避けたりして距離を縮める。そして、至近距離になった瞬間に剣で切りつける。その刹那シーゴールは身を覆うような鉄壁を身にまとった。槙侍の剣は弾かれ体制が崩れた瞬間にシーゴールの魔法をくらう。
槙侍は魔法の威力で壁まで突き飛ばされた。
「この程度が光の勇者か?こんなものでギドウバーンは倒せまい、我が闇に堕ちた魔法で充分よ。ギドウバーン様がこの世界を支配し永遠の混沌を見させてやる。」
シーゴールがそんなことを呟いたが、槙侍の耳には届いていなかった。槙侍は壁から出てきながらこう言う。
「貴様にはわからないさ、この世界の素晴らしさと美しさ、そして酷さを。良いところも悪いところも全て含めてこの地球という名の星と生命なのだ。失っていいものなど存在はせん。」
「死を恐れての戯言か?所詮は人間、日本人と同じように燃やし尽くしてやる。」
槙侍は光のアミュレットの光の魔法を剣だけでなく全身に纏わせシーゴール目掛けて斬りかかる。シーゴールは闇の魔法に対抗するが、槙侍の光の魔法の威力が誇り、シーゴールを突き飛ばした。シーゴールはガイバオ塔の壁を突き破り、塔から落ちていく。
「哀れな人間と意味もなく死に魔物となった死に行く世界に価値はない。必ず、これ以上の混沌の侵食を阻止せねば。」
愛里沙は槙侍のその様子を伺っていた。愛里沙は槙侍が怖く見えた。自分がさらわれてからの槙侍は知らない、何かあったのかもしれないとそんなことを考えていた。
「愛里沙、行くぞ。頂上はもう少しだ。」
「槙侍、ちょっと待って。」
槙侍が先に行く足を止めて、愛里沙は語る。
「あたしね、槙侍に会えて嬉しかった。」
「そうか、だが今は関係のない話だ。他のことを考えていては命を落とす。私も全力で守ることはするがーーーー。」
「違うの、そうじゃない。ここまで来れたのは槙侍が勇気を出して旅に出ようって決意してくれたから。そしてあたしに会ってあたしは死ぬかもしれない状況から救ってくれた。正直安心したの。だから槙侍ももう無理はしないで、死なないことを考えて。」
「それは因幡黎の対応による。いずれにせよ、戦わなければならない。」
「うん、だからあたしも一緒に戦う。」
愛里沙がその一言を言った瞬間に槙侍は驚いた。そして愛里沙の話は続いた。
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