天空界~最後と始まりの運命へと~

第11話 せかい

「元気にしていたか。」

 そう槙侍は愛里沙に問う。愛里沙は元気に頷き、使者に連れていかれて以降のことを話してくれた。特に手を出すわけでもなく丁重にもてなされたとの事だ。手段は手荒だが、こうでもしないと光の勇者に試練を与えることは出来ず己自身で活路を見いだせないとのことだ。

 歩きながら事情を聴いていると暗黒神城の玉座の前にたどり着く。大天空城の王から頂いた龍神王の武防具を身につけた槙侍は、足を組み椅子に手をかけている暗黒神を目の前に戦いの構えをしている。

「貴様の光は眩しい。混沌の根源を絶つには十分な光だ。そして、ガイアも揃いアミュレットを揃えた。新の光の勇者よ、今から貴様らを忌まわしきガイバオ塔へ導く。」

「少し待ってくれ。何故世界はこのような姿にならなくてはならなかったのか、あなたに問う。」

 槙侍は真っ直ぐな視線で暗黒神を見つめる。

「新の光の勇者よ、運命というものは決まっており、地球が生まれた時から我々がこうして戦い導くことも、はたまたこれから混沌の根源に立ち向かいその勝敗をも運命によって定められている。いつしかの選択で複数の世界が生まれ、片方は成功への道、そして失敗への道だとしよう。その選択を選ぶことによってパラレルワールドが生じ各人の人生そのもの、そして生命の行く先を決めかねないものなのだ。今我々が生きるこの荒れ果てた世界は混沌に飲まれようとしている。またその元凶が存在する。しかし、また別の運命では世界は崩壊しなかっただろうし元凶が存在するとは限らない。我々が生きるこの理の運命は、世界が崩壊し、混沌の元凶が存在するというものだ。我々が生きる上では抗うことの出来ない運命だ。だが、その運命を切り開くのは瑞島槙侍である可能性も無くはない。光の勇者として選ばれたのはそなただ」

「パラレルワールドは存在するのか。この世界が崩壊することのない世界はどうなっている。」

「ひとつは、別の英雄が過去の自分と向き合い己の闇と闘っている。ひとつは既に戦火に飲まれ死んでいった。ひとつは世界そのものがなくなった。この混沌の導きだけで複数の選択があり、その分世界も分岐しパラレルワールドが存在した。」

「世界が滅ぶ運命、ではその元凶であるペルセウスは何者だ。」

「ペルセウスことギングドーン。人間界では因幡黎と呼ばれていた。黎は生まれた時から独り身で孤児の時に複数の人間を惨殺し憎悪のどん底へ突き落ちたもの。そして、今や深淵の混沌へと辿り着くもの。世界を混沌へ誘うのには人間への復讐。それはアメリカ軍によって虐殺された日本人の思いと重なり、黎にその憎悪を取り込んで得た力が、死んだ死者の思念を魔物化にする能力や地形変動、世界の闇の侵食だ。」

「なんだと、魔物は死んだ死者そのものなのか。」

「そうだ、死者たちの恨みや憎しみが魔物と化したものだ。その想いが強ければ強いほど魔物の強さは変わる。ドンバーバッや火の精はその憎しみが生まれなく良心を持ち合わせながら魔物になった。いずれにせよ、ペルセウスこと因幡黎をこの世界から覗かない限り世界は救われない。」

 暗黒神は槙侍達を指差す。

「今こそペルセウスを討ち世界に希望の光を。」

「わかった、独りの人間の身勝手な想いが世界を滅ぶ運命にしたのだな。ならば、やることは決まっている。暗黒神よ、我々をガイバオ塔に導いてくれ。」

 槙侍は最後の戦いに挑む覚悟を決め、愛里沙と視線を合わせる。愛里沙も決心はしたみたいで、最初シブヤで会った時と顔の表情が違う。

「受け取るがいい。最後の力だ、6色の力が集う神器・虹のアミュレットを」

 暗黒神は手にしている虹のアミュレットを槙侍に託した。

「確かに受け取った。感謝する。」

 槙侍は最後のアミュレットを胸に抱きしめ強く握りしめる。

「6つの大いなる力よ…世界に一つの光を導き給え。集え、光の理よ!」

 槇侍が天高く叫び大きく光り輝く。

 暗黒神は目を閉じ槙侍と愛里沙に念を送る。すると、2人を覆っていた輝きは次第に薄くなる。そして、光が再び強く輝きだし槙侍達の姿は一瞬で消えた。


「真の英雄よ、これから起こる運命の鎖はまだ解き放たれん。心して挑むがいい。」

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