第10話 めがみ
異界の西方に位置する天へとそびえ立つ塔、チェリャビンスク。ここの最深部である台座前には光の勇者である瑞島槙侍と時と空間の守護者達による激闘が繰り広げられている。
守護者は槙侍が手に入れていない闇のアミュレットを使い、槙侍の身体と精神を落とそうとしている。しかし、槙侍は光のアミュレットで対抗し、彼らの攻撃を無力化する。
「そなたの光り輝く思想に我々は快く思っている。そなたの輝きを世界の闇へと照らして欲しい。」
マギーリンドーは槙侍に言う。
「私は大切な人を大天空城の使いに奪われた。敵は大天空城の者か?」
「否。大天空城は世界の味方だ、天界へ着き次第大天空城へ向かって欲しい。さすれば、お主の目的が果たされる。」
「なんだと。世界の味方が我々に敵対しているのだぞ。」
「それも行けばわかる。迷うな、そして拒むな。我々が導けるのは理を諭すだけ。受け取るがいい、そなたが持つに値する代物だ。そして、天界へ続く道にて新の光の勇者に目覚めるのだ。」
槙侍は戦いの構えを解きオードンズから闇のアミュレットを受け取る。
「あなた方との戦い、楽しかった。色々と学ばせてもらった。そして、勝ってこよう、ペルセウスとやらを。」
槙侍は守護者にそう言い、ドンバーバッは槙侍に助言する。
「ここからはあんたの世界だ。自分自身で戦いの活路を掴め、今までそうしてきたように、世界が滅ぶ運命を断ち切ってくれ。」
槙侍は頷き台座の方へ歩み寄る。ここから始まるのは天界へ行く為の儀式、そして光の勇者が新たな勇者へ変わる時。恐らく天界は今まで以上に過酷な旅になるはずだ。
台座へと足を踏み入れた槙侍は、深く祈りを捧げる。最初タチカワを発った時、世界の真相を知りたいと願った希望が叶う。
台座はゆっくり輝きだし、槙侍の体を包み込む。そして、光が強くなった瞬間、天へ貫いた。
槙侍は急に眠気に襲われ気を失う。しかし、感覚だけは起きているような、非常に不思議な感覚に陥る。
槙侍が目を覚ました時には既に天界へ誘われたあとだった。そして、体の力が入らず脱力した感覚だった。槙侍は無理やり体を起こし、周りの様子を伺う。
「ここは天界か。大天空城へ向かわなければ。愛里沙、今向かいに行くぞ。」
槙侍は重くなった体を動かし歩き出す。しかし、一向に魔物は出てこなかった。歩き続けること数時間、大きなお城が見えてきた。槙侍は城を見つけた瞬間安堵したような気持ちになり、自然と歩くスピードが上がる。
大天空城の中は人が大勢いて使者が配備されている。使者は槇侍に声をかける。
「お待ちしておりました、新の光の勇者よ。王がお待ちです、こちらへどうぞ。」
使者は槙侍を招き入れ、玉座の間へと連れていかれる。玉座の間には使者が赤い絨毯の両脇1列になって並んでいる。槙侍は使者達によって作られた道を歩む。そして、王の顔を拝む時が来た。
「私は瑞島槙侍だ。単刀直入に聞こう。お前達は何者だ。」
槙侍は怒りを込めながら王や使者に問う。王は何故か申し訳ないような顔でこちらに言う。
「私は大天空城の王だ。新の光の勇者よ、我が使者が粗相を犯してしまったことをすまなくおもう·····。我々は世界の混沌をこれ以上侵食させぬため、我が大天空城の女王・ガイア、いや椎名愛里沙を天界に置く必要があったのだ。」
王から信じられないことが発せられ槙侍は驚く。
「愛里沙がガイアだと。では彼女はどこに。」
槙侍が王に問うと横から呼び止められる。槙侍は呼ばれた方へ視界をやると愛里沙が白いドレスに身にまとった姿でいた。
「君は愛里沙か。どうしてこのような姿を。」
「私にもよくわからない。けど私がやるべきことがあるみたい。」
槙侍はやるべき事の意味を聞きたかった。しかし、王がさらに口を開く。
「瑞島槙侍よ、新の光の勇者となったお主では世界を光で満たすことは出来ぬ。この龍神王の武装をし、暗黒神城へ行くが良い。そして、新たな力を手にするのだ。椎名愛里沙よ、大地の女神ガイアとして、新の光の勇者を導き混沌の根源であるペルセウスを倒すための力となるがいい。」
2人は決心をして深く頷く。そして、槙侍は王から授かった龍神王の武装を見にまとい愛里沙と共に暗黒神城へ向かう。
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