下界~新たな力を求めて~

第9話 いかい

 愛里沙が大天空城の使いによって連れ去られ槙侍は異界に行き後を追う。1面雪景色のこの異界はロシアなのだと言う。

 現在のロシアはニホンと違って発展しており、アメリカと条約を結び、停戦を合意した状態だ。さらに、無人だったニホンでは考えられないくらいの人がおり、非常に賑やかだったヤクーツクは槙侍の気持ちを切り替えされた。

 最初はノリリスクで情報を集め、次第にヤクーツクが栄えているとわかり、ここに移動してきた。

「しかし、こんな賑やかで人目がつくところにアミュレットなんかあるもんかね。」

「ドンバーバッですら、異界の発展はわからないのか。」

「私は異界に行ったことは無い。異界に何があるかはわかるが、彼らの私生活までは把握しとらんよ。」

「そうか。だが、ここに世界を混沌へ導く使いがいるとも聞いた。」

「間違いない、ここはあくまで『異界』だからな、油断はしない方がいい。魔物も現実世界より強者揃いだ。」

 槙侍とドンバーバッは会話していると、ヤクーツクの中央広場に出た。

「やたら人が多いな。なにかやっているのだろうか。」

 中央広場には人間の数が非常に多かった。彼らは同時に中央の方を見ている。

「彼らは生きているのか?」

 槙侍がふと疑問を持った。彼らは生きてはいなかった。ただの思念体が人間の形に具現化したものだった。

「槙侍、ここは異界だ。本当のロシアなんかじゃない。中央に光のアミュレットがあった。さっさと取ってズラかろう。」

 槙侍は思念体をかぎ分けながら中央に辿り着いた。中央には噴水があり、水の中に頑丈な箱があった。槙侍は剣で箱をこじ開けて、中にあったアミュレットを取り出した。

「行こう、チェリャビンスクへ。そこに闇のアミュレットと天へと続く台座があるはずだ。」

 槙侍とドンバーバッは逃げるようにヤクーツクを後にした。


 チェリャビンスクは雪に覆われた建物のようなもので、あの黒い雲が覆うほどの高さがある。チェリャビンスクの入口は荒れ果てており、どこからでも入ることが出来る。

 槙侍はいつどこからでも奇襲を受けられても大丈夫なように、常に戦闘態勢で構えて進む。ドンバーバッは槙侍の後ろに気を配りながら様子をうかがう。

 建物は塔のような構造をしており、各フロアを探索しながら上の階へ進む。時々毒の矢が飛んでくるトラップがあったり、踏んだ瞬間に床が抜ける場所や、魔物だらけの部屋があったり進むのにかなりの時間を要した。

 3時間くらいを使いチェリャビンスクの最深部であろう場所にたどり着く。

「ここにも台座があるな。この台座は龍の雫を使うのか。」

「いいや、違うな。ここは天界に続く神聖な場所だ。ほら、あそこに守護者がいる。時の守護・オードンズ、そして空間の守護・マギーリンドー。奴らの目覚めはアミュレットの輝きで再生する。」

「その守護者を倒せば天界に行けるのだな。」

 ドンバーバッは静かに頷く。

 槙侍は5つのアミュレットを天にかざし、深く祈りを捧げる。すると、アミュレットは次第に反応し輝き出す。アミュレットの光は守護者の像に向かって輝き放つ。槙侍は咄嗟にその視界を外す。

 光が収まり槙侍は瞳を開ける。そこにはさっきまで像となっていた守護者が動き出している。

「我が名は時の守護・オードンズ。」

「我は空間の守護・マギーリンドー。我々は世界の理を見定め、新の光の勇者を天界に送り、滅び行く世界の元凶を正す者。」

「我々に打ち勝ちて理を得、天界に誘われペルセウスを滅せ。」

「私は奪われた愛里沙を取り戻すため、そして世界をこれ以上破滅させないため旅する者。邪魔をするならば早々に絶たせてやる。」

 槙侍は剣を構え守護者達に襲いかかる。

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