第5話 なかま
氷の精と共に池袋に来た。実は火の精も槇侍の見えないところにいたらしく、アミュレットと共にいないと精霊の力が弱くなるというらしい。今後新しいアミュレットを手にするわけだが、あと2体も精霊が付きまとうとなると気分が悪い。
タチカワに住んでいた頃は、イケブクロは大都会で行くことはないだろうと思っていたが、まさか崩壊した世界となった状況で大都会に足を踏み入れるとは思わなかった。
ここイケブクロに来た理由は食料調達や武防具の整備のためだ。知性を持った魔物の店は意外に優秀で、リクエストすればなんでも応じてくれる。時にサービスもしてくれたり、戦闘の訓練相手にもなってくれたり、優しい魔物もいる。片っ端から魔物を殲滅するものではないと、町に行くたびに思い知らされる。
イケブクロには野生の魔物は現れず、比較的休息が取れる場所だ。もっと早めに来ておけばよかったと思う。町のいたるところに道具屋や武器屋があり、その中に珍しい店も存在する。一つは転職屋で文字通り己の職業を変えさせ新たな人生を歩み習得したことがない技や考え方を身に付けるというものだ。戦士や魔法士、農作士や司書と様々な職業が存在する。そして、魔物屋もあり、転職屋で魔物使いに転職した者は魔物を従わせて共に戦い抜くことや生活を送るなどと色々な考え方があるが、ここは魔物を預けて成長させたり別の町に存在する魔物屋に転送させたりすることが出来る。
槇侍は何度か野生の魔物に好かれたことがあり実は既に何体か魔物を預けている。しかし、魔物と共に旅に出ないのは、せっかくなついてくれた仲間を危険にさらすことはしたくなかった。自分のペットを危険生物の目の前に置いて来るのと同じだ。
そのため町に来たときは魔物屋に行っては魔物の様子を見たり新しい餌を食べさせたりして交流をしている。
槇侍は町での活動の一環を終えて、槙侍は少しでも体を休められるように、なるべく1人になれる場所に来た。しかし、先客がいたようだ。
「君は、人間なのか」そう問いかけた。
彼女は振り返り、不機嫌そうに言う。
「魔物に見えますか。けどそう反応するのも無理ないね。」
どうやら自分と同じ、アメリカの虐殺から逃げ延びたものだろう。
「私は瑞島槙侍という、光の勇者で旅している。」
「私は椎名愛里沙です。」
彼女は短い黒髪で高校生のような制服を着ている。背丈は槙侍より低い。
「君はずっとここにいるのか。」
「そうだよ、外は危ないってお店の人が言っていた。」
「そうか、我々と一緒に来ないか。ここは安全だが、またいつ何に襲われるかわからない。氷の精はどう思う。」
槙侍は誰もいないところへ目をやり問いかける。すると、少しずつ白い霧が人間のような形状になり、氷の精が姿を現した。
「私は賛成です。ここは場所の構造はいいですが、魔物が入ってこないようには工夫されていません。物が急に襲いかかってもおかしくない。」
彼女は俯きこう言う。
「私は戦うことは出来ないし、足でまといになるのではないでしょうか。」
「安心して欲しい、必ずあなたをお守りする。提案があればいつでも言ってほしい。」
「わかりました、ではお言葉に甘えて。」
「今日はもう休もう、明日の出発に備えてゆっくりしよう。」
槙侍そう言ってお店で調達す物は調達し、その日は新しい仲間椎名愛里沙と一緒に夜を共にした。
数日後、槙侍達はナスシオバラに来ていた。ヒダカに行く際に謎の植物がヒダカ全体を覆っており、伸びている植物の後を追っているとここにたどり着いた。
「どうやらここに植物の魔物がいるようだ。」
「気をつけてね。いくら火で対抗できるからって怪我だけはやめてね。」
愛里沙の心配は槙侍の勇気に繋がる。今まで1人で旅してきた分、寂しさがあったのかもしれない。今ではそんな彼女とのたわいもないやりとりが好きだ。
しばらく歩いていると、町中の地面が穴だらけなのに気づいた。植物のツルが作ったものだろうか。
「この穴の中に魔物がいるんじゃない?火の魔法で試してみようよ。」
愛里沙が提案し可能性があるだけだが、槙侍は穴の中に火の魔法を唱えてみた。すると、地面が揺れだして、乾燥した大地は次第にヒビが割れてきた。そして、穴の中から植物が無数に出てきた。
槙侍は姿を現した植物の魔物に炎の力を纏った剣でトドメをさした。
「これでヒダカに入ることが出来るだろうか。またヒダカに行って確かめるとしよう。」
槙侍達はヒダカを覆っていた植物の元凶を解決し再びヒダカへ向かう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます