第2話 こきょう
オクタマへやってきた瑞島槙侍はある点に気づいた。戦争の影響だろうか、地形が変形していること。たかが数ヶ月で爆弾や核によって地形が大胆に変化することはないが、他に何か原因があるとしたら何なのだろうか。
そして、霊が具現化して魔物と化していること。ここまで来るのに何度か戦ったことがある。目が1つでコウモリのように空を飛ぶものや、人間姿の武者のようなものと、様々な魔物がいた。恐らく、日本中同じような状況で、もし生き残りの日本人がいれば襲われている可能性もあり、外国に進出している可能性もある。
地形が変化しているのと魔物が出現している2つの異常事態に何か共通点があれば、少しではあるが、この壊れ果てた世界の真相を掴める可能性が出てくる。
そのような事を考えながら、オクタマの故郷であるクモトリヤマに着いた。やはりここも地形が変わっている。ここを去ってから何年か経つが、ここまで変わっていると別の場所のように感じる。
当時あったはずの数少ない民家は存在せず、山の大森林へと姿を変えている。天候はずっと曇天のままで、中はより一層暗さを増している。
森の中は足場が悪く、木々が生い茂り、道を塞いでいることもある。その中で、魔物とやり合うことも考慮すると、気を引き締めないといけない。道のいたるところに大樹が立ちはだかり、道幅も狭く見えて胸苦しさを感じる。
山道にて慣れない探索をして数時間が経ち、夜がやってきた。足場が悪いうえ狭い中魔物と闘ってきたおかげで戦い方がわかってきた気がする。さらに、回復薬や武器も多少入手した。食事も行ってお腹が満たされ、ゴツゴツした木を枕にして寝ることにした。野宿は数回したが、この山中は非常に不気味が悪く、常に何かの視線を感じる。その中の野宿はとても気持ちが悪い。
槙侍は森の様子がおかしいことに気づいてすぐに起きた。就寝してさほど時間は経っていない。やたら風が強く、魔物の殺気が鋭く目をぎらぎらと輝かせながら森の陰から出てくる。槙侍はそっと剣を抜き、襲いかかってくる魔物に斬りつける。ここまでやって身につけた技術を最大限使い、魔物達を退けた。
そのまま森の中を進む槙侍は次第に開けた場所に出る。広場の中央で緑色に輝くアミュレットが風を発生させ、この森のすべての風を操っている。
槇侍は警戒しながらもアミュレットに近づき、次第に強くなる風を必死にこらえる。槇侍の手がアミュレットに触れると、槙侍に風が集中して体の中に流れ込んでくる。その時、アミュレットの輝きが次第に消えて動きが止まった。周りの風も穏やかになり、自然な風に戻った。
一安心したかと思いきや、空から声が聞こえる。
「カゼヲ…トメ…ルナ」
視線の先には、まるで雲が独立したかのような魔物がそこにいた。
「貴様は何者だ」
「カゼヲ…カエセ…」
「阻むというならば、相手してやろう。この風の輝きを」
槙侍は実感していた。アミュレットを手にした瞬間から、体内で魔力なるものが流れくることを。そして、風の力を操れるほどのものを手にしたことを。雲は小さな水滴や氷晶の塊だが風に流れやすい。つまり、このアミュレットの力を使えば勝利への可能性を確信していた。
雲の魔物は炎を吹き、槙侍は剣とともに風の力を借りて、切り刻んだ。ここで槇侍は雲の魔物が今までの魔物とはレベルが違うと一瞬で理解した。上空に存在する雲を実際に鋭利なもので切り込んだ経験はないが、想像通り切りつけたところは瞬時に元通りに戻った。これではやみくもに剣で戦っていても意味をなさない。
最終的には、雲の度数が薄くなるまで剣で切り刻んだり、風魔法で吹き飛ばしたりして、無事に倒すことが出来た。槇侍の腕力はさほど強いわけではなく、大きく剣を何十回も降ったせいで腕に痛みを感じている。ただでさえ不慣れな戦闘に槇侍は息を切らしている。
「これが“たたかう”ということなのか」
槇侍は疲労しきった体を無理やり動かし、来た道を戻る。
下山している時に不思議な声が聞こえた。それは「燃え尽きるような山の中に、新たな神具がある。そこには、我らが4精霊のものがいる。」と、その声は言った。おそらく、休火山である、誰もが知っていた「富士の山」のことだろう。槙侍は疲れきった体を休めることなく、歩み始めた。
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