第2話 意図しない告白の破壊力
「「断った!?」」
中学時代が同じだったクラスメイトから囲まれた俺はあずきの告白を断ったことを伝える。
「あぁ、勘違いさせたみたいですまない」
そう言うとあずきの友達の
「ごめん葉月、ちょっと話があるから廊下まで出てきて」
「私は教室で待った方がいい?」
「そうしてもらえるといいかな」
「分かった」
俺と水塔は教室から談話スペースのような場所に出た。
「それで…話って?」
「あずきをふった理由を聞かせてもらえる?」
「恋愛感情が分からないから断った」
「でも、取り敢えず付き合えば良かったじゃん、付き合ってからでも遅くないでしょ」
「…そういう考え方もあるのか。いやでもだめだ」
「なんで?あの子本気だったんだよ?」
「本気だからこそ俺じゃだめなんだ。あずきの気持ちに正面から応えられる自信が俺にないんだ」
「あの子が嫌いな訳じゃないってこと?」
「それは間違いない、俺があずきを嫌いになるのはおそらくない」
そう答えると俺に詰め寄った京子はクスリと笑う。
「そうなら良かった」
「そろそろ戻ろうか、先生も来そうだし」
「おーい席に座れホームルーム始めるぞ」
「そういえば予鈴なってたっけ」
俺と水塔は急いで席に着く。
「まず出席だが…全員いるな。まぁ学校始まってから3日だから休まれても困るんだが、一応名前を呼ぶから呼ばれたら応えてくれ」
担任の名前は
痩身で高身長でくたびれたスーツに眼鏡。
整えていないだろう髪は前髪が邪魔そうに生い茂っていてまるでツツジの木のようだ。
堅苦しい名前だが歳は23歳とかなり若い部類の教師で現代文が指導科目らしい。
出席確認のために次々と名前が呼ばれていく。
前の中学校からはさして離れていないが。そこそこ大きな私立校というだけあってここに来た学生は知った名前よりも知らない名前の方が多い。
それでも1クラス30の人に対して10人ほどが知っている人間だが。
ちょんちょん
横からあずきに腹をつつかれる。
「何の話だったの?」
「いや、なんでふったのかっていう理由を聞かれただけだから、そんなにたいした話はしてない」
「京子は優しいからね、自慢の親友だよ」
「そうみたいだな、万が一俺があずきが嫌いだからふったって返したらはたかれそうな眼力してた」
「怒られたことあるけど怖かったよ…」
「一体何したんだ」
割と厳し委任限だと思われているが。温情がある人間なのでよっぽどのことがないと怒らないと記憶している。
「料理をおいしくなると思ってアレンジしたら、ものすごく怒られた」
「あー…」
なぜかあずきは味音痴ではないがトッピングやアレンジが斜め上に飛んでいく。
誰かが監督をしなければ気づいたらゲテモノができてしまう。
「そういえばこの学校料理研究部あったよね、今日部活動説明会だし…雰囲気良さそうだったら入ってみようかな」
「そういえばそうだったか」
一昨日が入学式で、昨日は身体測定とクラス内での自己紹介などが主だった。
そして今日が体育館での部活動説明会。もとい部活動のPRを兼ねた説明の動画などを見るというのがメインイベントだったはずだ。
「よし、全員返事を返してくれて助かる。今日は昨日伝えたとおり部活動説明会だ。くれぐれも騒がしくしないように」
クラスの数人が返事を返す。因みに俺は返していない。
ロッカーから体育館用の室内シューズを出して身長ごとに整列して体育館へと向かう。
「楽しみだね」
「あぁ…そうだな」
俺とあずきは話しながら歩いて行く。
並列して歩いているのは偶然だが身長の比率的に同じような場所にいるからだ。
「夕はどの部活はいりたいとかあるの?」
「気になる部活動が無かったら帰宅部でいいかな。少なくとも運動部にはもう入らない。柄じゃないし」
一応中学時代は野球部に籍を置いていたが大して上手くなかったうえにけがを頻発していたためあまり思い入れがない。
レギュラーを獲得していたのはあくまで部員が少なかったからで大した成績も残したわけではないため高校でも継続したいと思うほどでもない。
「ほんとにね、なんで卒部したらどうしてこんなにすれちゃったかな」
「ぐれたみたいに言うのは止めてくれ、心外だ」
「でも暗くなったのは本当じゃん、インドアになったし」
「色々あったんだよ、俺にも」
熱意が燃え尽きたのか部活の熱がなくなってから読書に従事するようになってから確かに根暗な性格になっていったのは分かる。
こんな俺になってからも変わらずつきまとってくるあずきは本当に嬉しいが俺にはもったいないとも思っている。
「でも、この学校部活動自体は同好会含めて多いみたいだよ気になる部活もあるかもね」
「そうだな、どうせなら人付き合いとか余りない方がいいな少人数の方が気が楽だし」
「それなら夕も私といっしょに料理研究部に入ろうよ、私といっしょなら孤立したりしないし料理自体は好きでしょ?」
「好きだが部活に入ってまでやりたいかと言われるとそうでもないな」
「くっガードが堅い」
「というか何で料理研究部に入りたいんだ?」
「胃袋をつかんでやろうと思って、少なくとも夕より上手くなりたいなって」
「花嫁修業かなんかかな?」
「いつか結婚するならそれも夢じゃないかもね」
こちらにはにかみながら笑いかける。
胸のあたりに少しわだかまりを憶えるがすぐに消えて無くなる。
「…なんかプロポーズみたいだなそれ」
「え?あっ……」
言葉の意味に気づいたのか赤面して三角座りをした自らの太ももに顔を押しつける。
「…初心だな」
「ん?なにか言った?」
「なんでもない、ほら始まるぞ」
そうして部活動説明会が始まった。
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