第28話 先輩28 見舞い
ピンポーン
「こ、こんにちはー、筑波です」
……
……返事がないな。
もう一度、インターホンを押す。
ピンポーン
んー、外出中なのか……。でも、先輩は風邪らしいし家にいるはず。ってことは、寝てるのかな。
あれから副委員長の代わりに配布物を届けることになった僕は、今先輩の家の前に来ている。……のだが、あいにく誰も出てきそうにないし、風邪で寝ている人を起こすのはさすがに失礼なので、メモを添えて配布物を郵便受けに入れておくことにした。
えっとメモ用紙は確か筆箱に……。
ドタッ。バタバタバタ……ゴツンッ!
『いったぁ……』
かばんから筆箱を取り出そうとしたそのとき、家の中からドタバタとあわただしい物音と聞き覚えのある声が聞こえた。
ガチャ……
「か、カイ君!?」
扉からちょこっと顔だけのぞかせる先輩。人にうつさないためか、マスクを着用しているが、その顔には少しばかり熱をこもったような赤みがかった肌が見える。
「こんにちは、先輩。これ、副委員長に言われて配布物を届けに来ました」
そう言って、プリント一式を手渡す。
「あ、ありがとう……。コホッコホッ。でも、どうしてカイ君が?」
「僕は今日部活がなかったので」
「そゆことか。ありがとね、わざわざ届けに来てくれて」
「いえ、それより体調はどうですか?」
「んー、見たとおり、かな。まだちょっとしんどいかも。ケホッコホッ」
「えっ、ちょっとっ、それなら早く寝てください!もう、なんで出てきちゃったんですか……」
半ば呆れつつ、半ば心配しつつ、先輩に部屋に戻るよう指示する。
「だって、インターホンのカメラ見たらカイ君が映ってたんだもん。嬉しくって飛び出しちゃったっ」
「その勢いで頭ぶつけたんですか?」
「ば、バレてたか……」
「ふふっ、バレバレです」
「もう」
そう言いつつ、先輩の顔にはいくらか笑顔が垣間見える。
「飛び出してきてくれたのはうれしかったですけど、今日はちゃんと寝てください」
「えー、でもー」
熱のせいか、甘えた声を出す先輩。
「元気になったらいくらでも構ってあげますから」
甘えん坊の先輩の頭をポンポンとしながらそう言った。
「もうっ、私の方が年上なんだよ?」
「はい、でも今日の先輩は甘えん坊さんですから、僕の方がお兄さんです」
「ふふっ、なにそれっ。……でもわかった、今日は大人しく部屋で寝るね、お兄ちゃん?」
「よろしい」
思わず2人して肩を揺らして笑ってしまう。
「じゃぁ、今日は来てくれてありがとね。蓮花にもよろしく伝えといて」
「はい。それじゃあ、お大事に」
「うん」
見送ろうとする先輩にいいからと家に入れ、僕は家の方へ歩き出した。
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