第6話 先輩6 女心ー途中式
「それでは隣の人とペアワークしてください」
英語の授業で、今日は隣の人とスピーキングの練習、具体的には教科書の読み合わせをする事になったのだが……。
「あ、あのー、明日香さん?ペアワークしましょ?」
「……」
明日香は一人作業を勝手にしてこちらの方を見ようともしない。
「先生に怒られちゃうよ。あの人、普段は優しいけどサボったり寝てる人には厳しいの知ってるでしょ?」
「……」
やっぱ、怒ってるなー。うーんう、どうしよう。
「……ごめんね、午前の事。」
「具体的には?」
やっと明日香が反応した。
「え……?」
「だから、具体的には何が悪かったと思ってる?」
「えーと、先輩の事を明日香にしつこく聞いたから?」
「半分正解」
「半分って、あと半分はなんなの」
「……今日、放課後時間ある?」
「え、まぁあるけど」
「じゃぁ、放課後正門前」
「わ、分かった」
まだ怒ってるようだけど、放課後何か教えてくれるのかな。
結局、その日の午後授業はまったく集中できずずっと頭を悩ませていた。
キーンコーンカーンコーン
放課後、僕は言われた通り正門前で明日香が来るのを待っていた。
というか、同じ教室で、しかも隣の席なのになんでここで待たなきゃいけないんだろう。
「ごめん、おまたせ」
明日香が校舎の方から出てていった。
「じゃぁ、帰ろっか」
あー、帰りながら話そうってことか。方向同じだしな。
……
沈黙が痛い。まるでお母さんに怒られて黙りこくった子供みたいだと自分で思った。
「カイ君さ」
「う、うん」
「有希亜先輩のこと、どう思ってるの?」
「先輩の事?なんでそんなこと」
「いいから、答えて」
どういう意味だろう。
「んー、普通にいい先輩だと思うよ。優しいし、周りの人の事考えてるし、明るいし」
「そういう事じゃなくてね」
? そういう事じゃないってどういう事なんだろう。
「先輩の事、好き?好きじゃない?」
「えっと、それは恋愛としてってこと?」
「それ以外に何があるのよ」
「そ、そうだよね……。恋愛とか僕には経験ないしわかんないよ」
「わかんないって、例えばその人の前だとドキドキしたり、つい目で追っちゃったりしない?」
そういわれてもいまいちピンとこない。
「明日香よく知ってるね。ひょっとして……経験あり?」
すると明日香は顔を真っ赤にして首を横に振った。
「な、ないないないない!友達から聞いただけだから」
「へぇ、明日香かわいいしモテてるのかと思ってた」
「ふぇ!?か、かわいい?」
「まぁ、客観的に見たら十分かわいい部類だと思う」
「そ、そんなことないよ、私なんて。恋愛だって……したことないのに」
「え、そうなの?」
「そ、そうよ!っていうか女子に対してそのリアクションは失礼!」
「あ、あぁ、ごめん。でもほんとに意外で」
本当に意外だ。学年の中でも結構かわいいほうだし、性格もいいから絶対彼氏いるのかと思ってた。
「そ、そんな話は今はよくて!じゃぁ、カイ君は先輩を恋愛対象としてみてるわけではないんだね?」
「うん、普通に委員会の先輩だよ」
「そっか、ならよかった……」
「え?何が?」
「なんでもないなんでもない」
二回も言った。
「じゃ、じゃぁ私の家、こっちだから」
「おう、また明日」
「うん、また明日ね」
結局明日香は僕に何が言いたかったんだろう。
帰ってからもそのことを考えたが、答えは出そうになかったので、その日は諦めて寝ることにした。
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