第18話 手に負えぬ事態
急いで青色の軍服に着替え、ルピと一緒にアイビーに乗り、城壁へと走っていく。
「なんで急に?」
ルピに恐る恐る尋ねる。
「わからん。もしかしたら、リオの感が当たっているのかもしれん。」
「魔族のこと?」
「あの種族は、強力な魔力を所持している。攻撃されたらたまったもんじゃない。だか……。」
「だが?」
「あいつらとは、友好な関係だったはずだ。だから、攻撃する理由はないはずなのに。」
ルピは首を傾げる。
魔族と仲良くしてたんだ。意外だな。
ドッカーーン!!
大きな音がした。
「アイビー、急げ!!」
城壁のすぐ目の前にすでに五匹ほどの魔獣がいた。一匹は、城壁に体当たりしている。みんなが慌てて攻撃している。地平線の方に目を向けると、魔獣達が次々と走ってくるのが見える。まるで、本に書かれてあった、100年前の出来事のようだった。私は恐ろしくなって、放心していた。もう、指示どころではない。
「あーーら、あんた達って弱いのねぇ!?」
突然上の方から声がした。見上げると、黒色のワンピースを着た、茶髪でショートカットの女性が空に浮いていた。
「お前、魔族か!?」
ルピが叫ぶ。
「えぇーー! そうよ! やっと気付いたのねーー。」
クスクスと笑って馬鹿にしてきた。
なんか感じ悪いーー。
「こんなことをして、目的は何だ!?」
ルピは彼女を睨みつける。
「目的? これは、魔王様が望んだことよ。理由はよくわからないけど、私の鬱憤を思う存分はらしてきていいって言われたわ。」
「なんだって!?」
「そう、その顔! その怒りと恐怖が混じった顔がたまんない!!」
やばい、この人頭おかしい。いや、魔族だからこれが普通なのか? 分からん!!
「さぁ、もっと暴れなさい、魔獣よ!!」
彼女は、低く恐ろしい声で叫ぶ。
ガオーーン。
魔獣が空に向かって吠え、牙を剥いた。
「ルピーー! こっちもう持たないぞ!!」
サムが叫ぶ。
「こっちももう無理だ!!」
レンまで!!
「ルピーー、重傷者10名! これ以上む、ギャーー!!」
「スグリ!? どうした! スグリーー!!」
ルピが通信機に向かって叫ぶ。応答は……、ない。
魔獣達に振り回され、皆戦う気力を失っていた。
「いいぞ、もっとだ!!」
木々はなぎ倒され、大地は荒らされる。
ドガガガガッシャーン。
「やばっ……。」
ルピは後ろを振り向いたが、時すでに遅し。なんと城壁に穴が開いてしまった。逃げ惑う人々。魔術部隊がバリアを張って、魔獣の侵入を食い止めている。だが、ヒビが入ってきており、もう持たないことがわかった。
「えりか、ここにいろ! 絶対動くんじゃねぇぞ!!」
ルピは城壁の方へ走っていく。と、その時。
グルルル。
私の前に、またしても大型魔獣が立ちはだかった!
「えりか、そこを動くな!」
ルピの声が聞こえる。だが、恐怖で思わず、猛ダッシュで逃げてしまった。魔獣は私を追いかけてきた。
やばい、追いつかれる!!
魔獣の鋭い爪が襲ってきた。もう、ダメ!!
ドン!!
誰かに強く背中を押された。と同時に、
ザシュッ!!
っと何を引っ掻いた音がした。後ろを振り向く。
ドサッ。
私の背中を押した人が倒れこんできた。うめき声を上げ、背中から血を流していた彼は……。
「ルピ!!」
平凡女子大生は異世界で覚醒する 竜胆 アサ @Rindou_Asa
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