第17話 リオの予言

私は、また変な夢をみた。

 誰かが歌っている。魔物達の輪の中で。歌と魔物達は身体を揺らす。リズムに合わせて。曇り空。歌と共に光が差し込む。太陽が歌い手を照らす。そこにいたのは……、


 え、私?


 はっと目を覚ます。ゆっくりと身体を起こす。閉じられた部屋のカーテンの隙間から、朝日が差し込んでいた。


 不思議な夢だったな。なんで魔物と一緒に……。みんな穏やかな顔をしてた。戦闘中はあんなに怖い顔してたのに。


 ふと、昨日夕食の後、リオくんが話していた事を思い出した。



「にいちゃん、今日ね、学校でね、いろんな種族についての研究発表したんだ。」


 目をキラキラさせていた。


「なんかいいことでもあったのか?」


 ルピは食事をしながら聞いた。


「あのね、魔族についての発表をしたんだけどね、先生が一等をくれたんだ!」


「すごいじゃないか。」


 ルピはびっくりしてリオくんをみた。


「一等ってねぇ、ほんとすごい賞なんだよ! 一回でも取れたら、その年の成績はトップを保証されるんだから!」


 以前、ベルさんが言っていたのを思い出した。リオくんって賢いんだなぁ。やんちゃだけど。


「なんて発表したんだ?」


 ルピが質問した。


「えっとね、魔族の誕生についてでしょ、特技についてでしょ、あとね、最近変だなって思ったことだよ。」


「変? 何が?」


 ルピが手を止める。


「なんかね、最近、城壁に魔族の匂いがいっぱい付いているんだ。こっちにやってきたの見たことないのに。あ、もちろん検査記録は取ったよ!」


 け、検査記録って、この子10歳くらいでしょ!? この世界、レベル高すぎ!!


「そうか。」


 あれ、ルピ興味ない?


「にいちゃん、絶対なんかあるって!」


 リオくんは主張するが、ルピは、


「うん。」


 と、適当に返事をしていた。だが、少し彼が真剣にな顔つきをしていたので、私は少し気になった。


「僕、今に大量の魔獣がやってくる気がするんだけど。」


 とリオくんが呟くと、


 バンッ!


 ルピが思いっきり机を叩いた。食堂が静まり返る。


「不吉なこと言うんじゃない!」


 リオくんに叱責する。リオくんは突然の言動に驚いてか身体が固まっていた。


「そんな不吉なこと……。」


 ルピはしばらく机の上の一点を見つめていた。怒りでなのかプルプルと震えていた。深呼吸をし、


「失礼。」


 と言って、さっさと食事を済ませて自分の部屋に帰っていった。



 これが昨日の夕食での出来事。


 魔族かぁ。なんか、関係あるのかなぁ。魔族っていいイメージないんだけど、本当のところはどうなんだろ。


『大量の魔獣がやってくる気がするんだけど。』


 リオくんの声が頭の中で再生される。そして、沢山の人で賑わっていた町を思い出す。魔獣が来ることなんて忘れてしまうぐらい、みんなステキな笑顔だった。以前の戦いの様子が頭をよぎる。敵意むき出しのあの魔獣の顔。


 ブンブン。


 私は頭を横に振った。


 そんなこと起きない。起きて欲しくない。私は強く願った。だが、そんな願いは数秒で打ち砕かれた。


 バンッ。


 勢いよく部屋の扉を開け、ルピが飛び込んできた。そして、震える手を抑えながら、一言。


「えりか、すぐに出動だ!魔獣が大量に現れたぞ!!」

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