第13話 複雑な想い
コツコツコツ……。
広い廊下を一人で歩く。朝の10時。メイド達は外掃除をしていた。自分の部屋が見えてくる。
ガチャッ。
ミモザが私の部屋から出てきた。
「掃除、ありがとね。」
私は彼女に声をかけた。ミモザはビクッと身体を震わせ、私の方を見た。そして、ニコッと笑って、
「いえ。仕事ですので。」
と言った。
「そっか。」
スッとミモザが私に近づき、
「顔色が悪いようですが、大丈夫ですか?」
と心配そうに尋ねてきた。
「うん、大丈夫。ちょっと疲れただけ。」
私は部屋の近くの壁にもたれかかった。
「アイスティーをお持ちしましょうか?」
「じゃあ、お願いします。」
「はい。あ、剣、しまってきましょうか?」
「いいの?」
「ついでですから。」
「ありがとう。」
私は鞘を腰から外した。ミモザが両手で受け取る。
「10分ほどお待ちください。」
ミモザはまたにこりと笑って、廊下を早歩きしていった。
うーーん。ミモザ、さっき顔引きつってたけど、どうしたんだろ。
ミモザの後ろ姿を見て私は不思議に思った。
でも、まぁ、いっか。
ズズズ……。
紺色のワンピースに着替えた私は、自分の部屋の窓際でアイスティーーをすすった。
冷たい。
ミモザは、私が思ったよりも早く持ってきてくれた。
窓から外を眺めた。ここからは訓練場がよく見える。
あ、ルピだ。
他の人たちにまじって、剣の稽古をしていた。休まず、誰よりも必死に取り組んでいた。
瞳を閉じる。ルピのあの言葉が頭に響いてきた。
『殺さなければ、お前が殺されるんだぞ!!』
『いいか、俺はな、戦いでは誰一人として犠牲になることを許さない! 何としてでも生きるんだ!!』
『だから平和ボケしているやつは嫌いなんだ。特に女はな……。』
ザァーー……。
窓の隙間から、少し生暖かい風が吹き込んできた。
瞼を開け、またルピを見つめる。まだ剣を握り、人形に向かって訓練を続けていた。
あの時、ルピは何かを恐れているようだった。
何かあったのかな……。
私は空のグラスを見つめる。
そういえば、図書室に歴史っていうセクションがあったな。行ってみようかな。
特にすることがなかった私は、ゆっくりと席から腰をあげ、部屋の外に出た。ついでに不思議な本も持って。
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