第8話 お騒がせな住人
カチャカチャ....。
んーー、幸せーー!!
今私は、ルピの部屋にお邪魔して軽食をとっている。ハムサンドに、ラズベリーケーキ! この世界にもサンドイッチとケーキがあるなんて! もう感激!! そして、ミモザお手製の冷たいレモネード! 水分補給のためにたっぷりと作ってくれたんだって! 最高だよーーミモザぁぁ。
さぁーー....。
そよ風が部屋のカーテンを揺らす。
はぁぁ、気持ちいい....。
ちらっと、前の席に座るルピを見た。本を片手に持って読みながら、アイスティーを飲んでいる。
こうしてみると、ルピってきれいだよねーー。写真撮りたいぐらいだよ、ほんと。あの、鬼畜さがなければもっと素敵なのに....。
ぽーーっと見とれてると、ルピと目が合った。
「ん? どうした?」
「あ、いや、なんでもない....。」
顔が、かぁぁっとあつくなった。
「顔が赤いぞ?」
ルピが顔を前に寄せてきた。
「いや、ほんと、なんでもないから....。」
私は顔を後ろに引いた。
っとそのとき、私は誰かの視線を感じた。入口のほうに顔を向ける。
じぃーーーーーーっ。
扉から顔を出してこちらを見ている男の子がいた。10歳ぐらいだと思う。
目が合った途端、男の子は逃げた。そして、
「ねぇちゃん、ねぇちゃーん! 兄ちゃんが女の子口説いてるーーーー!!」
と叫びながら廊下を走って行った。
「く、くどっ!」
私はびっくりして立ち上がった。
「あんのやろう....。」
低い声でぼそっと言いながらルピも立ち、
「ちょっと失礼。」
と、私に言って部屋を出て行った。
数分後....。
「先程は、俺の弟が失礼した。」
ルピは、右肩の上にあの男の子を担いで戻ってきた。
「いえ....。」
と言った私の声をかき消すぐらいの大きな声で、男の子は
「兄ちゃん! おろせったらおろせぇぇ!!」
と足をじたばたさせながら叫んだ。
「お前が余計な事を言うからだ。」
担いだまましゃべるルピ。
なんか....、ほんわかするーーこういうの見ると。
ルピはゆっくりと男の子を床におろして、私に紹介した。
「こいつは俺の弟のリオだ。」
リオ君は、銀髪で、瞳の色はエメラルドグリーンだった。そしてお顔がとてもキューート!
「はじめまして。」
声をかけると、さっきの元気はどこへやら。リオ君はうつむき加減で、
「はじめまして....。」
とぼそり。
「すまんな。」
「あ、大丈夫だから....。」
と私が言い終わるか終わらないかのうちに、今度は、
「ルピィィーーーーーー! 女の子ってだーーれーーーーーーーー!!」
と、金髪ロングヘアで、背の高い女性が部屋に飛び込んできた。
「あ、あんたまで....。」
ルピが迷惑そうな顔をしていると、
「あんたって、なによ!」
っと彼女はルピを小突いた。そして、私のほうに駆け寄り、
「この子がリオが言ってた子? 黒髪さらっさら!」
と、顔をまじまじと見てきた。
「あのーー、ルピのお姉さんでしょうか?」
と尋ねると、
「私が? ルピのお姉さんだって!? 笑えるーー!!」
彼女は、おなかを抱えて笑い出した。
「私はね、ルピの先輩よ。学校のね。小さい時からの付き合いなんだ。」
「そうなんですか....、失礼しました。」
「いいのいいのーー。あなた、お名前は?」
「えりかです。」
「えりかちゃん! 私はね、ベルっていうのーー! よろしくねぇーーーー!!」
ベルさんは私の右手を両手で握り、ブンブンと激しく振った。
「あぁ、はい、よろしく..です....。」
ぐらぐらと揺れながら私は挨拶をした。ベルさんはルピのほうを向いて、
「彼女いるんだったら言ってよねーー、みずくさいなーーもう。」
とにやにやして言った。
「あのな、そいつただの転移者だから。」
ちょっ、ただのって何よ!
「え? 転移者?」
ベルさんは首をかしげた。
「昨日、手違いでこっちの世界に召還されたんだ。」
「まあ! そうだったの!?」
「あぁ、で、帰り方がわかるまでの間、ここにいさせることにした。」
「あらまぁ、かわいそうに。」
ベルさんはこちらを向き、
「えりかちゃん、大変だろうけど、気をしっかり持ってね! 困ったことがあったら、いつでも相談して頂戴!」
と目線の高さを合わせて、心配そうに言った。
「あ、ありがとうございます。」
そう答えると、ベルさんは、にこにこしながらうんうんとうなずいた。
「はぁ..、これで、変ちくりん第二号ができたってわけだ....。」
って、ドアにもたれかかってルピが小声で言ったのを、私たち二人は聞き逃さなかった。
「変ちくりんですってぇーー?」
あ、ベルさんと、はもった。
「ちょっとルピ! えりかちゃんを泣かせたらただじゃおかないんだからね!!」
と言いながら、ベルさんはルピに詰め寄った。
「はいはい、わかりましたって....。」
面倒くさそうにルピは答えた。
ルピって、最初と比べて性格悪くなってないか?
なんて思いながら、部屋を見渡した。
あれ、リオ君は?
ふとドアのそばの机をみると、紙が一枚置いてあった。
「にいちゃんの あほたれ。」
どうやら、ルピのすきを見て逃げ出したようだ。
とまぁ、賑やかなお昼休みだった。
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