第3話 ルピとの出会い

ま、ま、魔物!? 魔物って何? え、妖怪? おばけ? ドラゴン? やだやだーー!


「あのーー。」


 私は恐る恐る王子に声をかけた。


「なんだ?」


「私、魔法使えないんですけど....。」


「そうみたいだな。」


「魔法使えないのに、魔物を倒せと。」


「魔法でなくても戦えるぞ。剣や弓でな。」


「でも私、戦いの経験なんてないんですけど。」


「何、回数を重ねればよいことだ。」


 だめだ。ああ言えばこう言う。王子は何としてでも、私を魔物討伐に行かせる気だ。


「でも.......。」


「あ、そうだ! ルピに任せるとしよう。」


 ルピ?


「あいつは、面倒見がいいからな。戦い方は彼に教わるといい。それに、君が怖くなって逃げださないよう監視もして欲しいしね。」


 か、監視ですと!? 


「まあ、少々問題ありだが......。」


「問題って.....。」


「ゴホンッ!」


 王子は、私の言葉を遮るかのように咳払いをした。


「ミモザ!」


「はい?」


 王子は傍に控えていたメイドを呼んだ。黒髪で肌の白い少女だ。三つ編みでつくった二つ結びのおさげがよく似合っている。


「ルピを呼んできてくれ。急ぎだ。」


「承知いたしました!」


 ミモザは慌てた様子で部屋を飛び出していった。


 ドテッ。


ん?

 

音がしたほうへ振り返ると、ミモザが何もない床の上で転んでいた。


「だいじょうぶですか?」


 ミモザに声をかけると、彼女は勢いよく立ち上がり、


「し、失礼しました! 急いで呼んでまいりますのでぇぇぇ。」


 と、顔を真っ赤にして走り去っていってしまった。大丈夫なのかな、と思いながら、部屋から廊下に顔を出して彼女を見送った。


「いつものことだ。気にするな。」


 王子はあきれたように口に出した。



 数分後、


「お、王子様! ルピ様を呼んでまいりました!」


 ミモザが戻ってきた。はあはあ、と肩で息をしている。


「入ってまいれ。」


「失礼します。」


 堂々とした様子で一人の男性がやってきた。


「えりか、紹介する。彼がルピだ。この国の近衛隊長を務めている。」


 ルピと呼ばれた男性は、私のほうにゆっくりと顔を向ける。背は180センチくらいで、銀色の髪を持っている。彼の紫色の瞳は神秘的で、とても美しいものであった。

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