第16話 調書(3)

 ・メモ


ロジャー・ハリス

 1976年生まれ。職業軍人一家の長男であり、肩を狙撃され退役するまでは本人もイギリス陸軍将校だった。その後、孤児院での勤務を経て自営業に手を出し、現在も手広く事業を展開している。

 その強引な手腕から評判は芳しくなく、金の亡者と揶揄される。更には過去に妻が失踪し後に遺体で発見されたこと、勤務していた孤児院に問題が発覚したことから、世間では悪人としての印象がかなり強い。婦女暴行、暴力事件、密売、公的機関との癒着など、黒い噂の絶えない人物。慈善活動を行っているという側面もあるが、売名行為だという意見も数多い。



ロナルド・アンダーソン

 ロジャーと同じく1976年生まれ。陸軍士官学校では数少ないロジャーの友人だったとされている。

 ロジャーとは幼い頃より交流があり、ロジャーの妻ローザは彼の妹である。彼女が失踪した際に共に行方を眩ませ、妹の遺体発見から8年後に焼死体として発見される。その際に名前を偽っていたことから、ローザ殺害事件は彼の犯行として決定づけられた。

 十代の頃、理科実験室での事故により上半身に大きな火傷と裂傷を負っている。

 士官学校ではロジャーの腰巾着だと噂され、目立った行動はなかったらしい。



────



 このメモをキースが残した(と推測される)ファイルから見つけて、思わず固まった。


 ロジャー兄さんについては分かる。僕は彼が大っ嫌いだし、権力と野心のためには家族すら捨てるほどの男だから、警察にマークされていても仕方ない。……ローザ姉さんのこともあるし。けど、何でとっくの昔に死んだロン兄さんのことまで書いてあるのかが分からなかった。ローザ姉さんのことはそこまで詳しく書かれていないのに……。


 僕はあまりロン兄さんと話したことがないし詳しくは知らないけど、何となく兄弟の間でロジャー兄さんのことも含めてタブーになっている話題だ。

 ……でも、キースがこれを残してたってことは、やっぱり、この街には僕達兄弟に関係した何かがあるのかもしれない。




 ……せっかく見逃してやっていたのにね。ロブ。




***




 ロバートへの電話は、なぜか繋がらない。

……繋がったところで、何を、どう話すかもまとまっちゃいなかった。


布団に潜り込み、無理やり目を閉じる。……一刻も早く、眠りに落ちてしまいたかった。


 ロバートを調査に行かせてから、もうすぐ一週間になるのか……なんて、今のことを考えようにも、頭がガンガンと痛む。逃げ出したい思いが脳髄を蝕んで、警笛を鳴らし続ける。

 それでも、現実は変わらない。……どれほど時間が経ったのか……寝起きの目に、ロバートからのメールが飛び込んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る