第13話 ある罪人の記憶

 心底ビビりながら、さっきの「R.H」の投稿に返信しても、反応は来ない。代わりに、新たなメールが「ある罪人の記憶」を伝えてきた。




 ***




「クソが……っ」


 生きてぇから生きてきた。死にたくねぇから殺してきた。……後悔があるってんなら、嫁とかガキのことぐらいだった。


「……ってぇな、オイ」


 あー、死にたくねぇ。何でかとかどうでもいいから死にたくねぇ。理由とか意味とかクソほどどうでもいいから生きてぇ。

 ……でも、動けねぇんじゃ無理かもな。こりゃ。


「……許さねぇ」

「……あ?」


 声がする。気配はさっきまで全然なかったってのに。


「……レオ。俺は、お前を許さねぇ」


 ……誰だ?コイツ。

 気配が、どんどん増えてくのを感じる。あークッソ。怪我してなきゃこんぐらいの数余裕だってのに。


「……許さねぇ」


 同じことしか言えねぇのかよ。


「……誰だてめぇ」

「……俺の名前は」




「レオだ」


 赤毛の男が、緑色の瞳で見下ろしていた。


「お前は……」


 俺だ――……




 ***




 ……「レオ」という名前が、頭の片隅に引っかかる。……ロバートが……いや、キースが会っていた男の名前だ。

 本当に何が起こってるのか、何一つわからない。……何一つわからねぇのに、すぐそこにぽっかりと闇が広がってるのだけは感じ取れる。




 ここ数日の疲れからか、どうしようもない思考ばかりが脳裏を支配する。……思い出したくもない顔も、思い出したくない記憶も、次々と浮かび上がってくる。

 俺は、兄貴が嫌いだ。理由は色々あるが、あの人のことを考えると惨めな気持ちになるし、何より、忘れたいのに忘れられない過去を突きつけられることになる。


 鬱屈とした感情が渦巻いて、胸がむかむかする。とりあえずタバコに火をつけた。……寂しさを紛らわせるためにちょっとだけと吸い始めたが、癖になっちまってロー兄さんに止められてもなかなか治らない。

 ……そこで、また、ロバートからのメールが届いた。

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