第三話『暗黒騎士ミロ』6
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*転移門スキル
【効果】
門から門へと転移することが出来る。
ただし転移できるのは、実際に術者が通ったことがある門、もしくはクリエイトゲートスキルで創られた門だけに限られる。
転移距離によって魔力の消費が大きく変わる。
【スキル取得条件】
・これまでに百以上の門を通過していること。
・クリエイトゲートスキルを使用すること。
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門から門に転移出来るスキル? なんだそれ、滅茶苦茶便利なスキルじゃないか!?
見てみるとスキル取得条件の一つに『門番になってから百以上の門を通過していること』とある。俺はこのラーマ男爵領に至るまで参考として色々な町や村の門をチェックしてきたのである程度門を通過してきたが、このタイミングで手に入ったということは、もしかして自分で作った門でも条件は達成出来るということなのか?
しかしながら確かに便利そうなスキルではあるが、残念なことにまたもや戦闘用ではない。門番なので当たり前と言えば当たり前だが、このタイミングでは戦闘用が欲しかった……!
もう体力は尽きかけている。
……だったらぶっつけ本番で試してみるしかない――この転移門スキルを!
俺はイメージする。転移門スキルを使って現状を打開するイメージを……。
すると思い付く。……上手くいけば、一つだけ何とかできるかもしれない方法がある。
あとは……やってみるしかないか。
ドゴンッ! 俺が覚悟を決めた時、目の前の門がミロの攻撃で崩れ落ちた。
「くくく……リューイ、いい加減諦めたらどうだ? もうフラフラではないか」
ミロは既に俺が限界であることを見抜いていた。
「しかし……見損なったぞ、リューイ。門を作り出すスキルには少々驚いたが、こんな戦法で戦うお前をな……」
ミロはゆっくりと近付いてくる。
そんなミロの前に、俺は再び門を作り出す。
「主よ 唯一の神よ 今ここに新たなる門を開きたまえ クリエイトゲート!」
出現する門。
「ふんっ、ここに来てまだそんなことをするのか? 本当に失望したぞ」
門の向こうではミロが門を破壊しようとしていることだろう。
そこで――俺は敢えてその門を開く。
「は?」
門の向こうに姿が見えるなりミロの呆気に取られた声が響いた。ミロは今まさに門を剣で斬り刻もうとしていたところだった。
その隙に俺は後ろにあった岩場に手を掛け、さらに門を作る。
「主よ 唯一の神よ 今ここに新たなる門を開きたまえ クリエイトゲート!」
新しい門が出現する。これで俺の後ろと前に二つ門があることになる。
「……何をしたいのかは知らんが、悪あがきもいいところだな」
ミロは目の前の開いた門からゆっくりとこちら側に入って来る。
俺はタイミングを見計らい、ミロが門を超えたところで、後方の門に対して新しく入手したスキルを使用した。
「主よ 唯一の神よ 今ここに新たなる道を繋ぎたまえ トランスファゲート!」
俺の手の甲の痣と後方の門が共鳴するようにして光った。これで二つの門は繋がったはず!
門を開くと、暗黒騎士の後姿がその門を超えたすぐ先にあった。
俺は門に向かって駆け出し、最後の力を振り絞って剣を振り抜く。
「な……!?」
ようやくその事実に気付いたミロがこちらを――後ろを振り向く。が、もう遅い!
ガンッ! 俺の一撃でミロの兜が宙に舞う。
そのまま俺はミロの眼前に剣を突きつけた。
勝負ありだ。
「な、何故お前がそこに……!?」
ミロは茫然と呟く。
こいつにとっては信じられないことだろう。さっきまで目の前にいた俺が、突然後ろから現れたのだから。その理由は、
「門と門を繋いだんだよ」
「門と門を繋いだだと? そ、そんなバカな……!?」
未だ信じられないといった感じのミロ。しかしこいつの目からも見えているはずだ。門の向こうに、合わせ鏡のようにして俺に剣を突きつけられている自分の姿が。
俺が説明した通り、二つの門はゼロ距離で繋がっているのである。もちろん俺のスキル――『転移門』の効果で。
「あ、あたし、負けたの……?」
ようやくその事実を認識したのか、ミロはぺちゃんとその場に座り込む。
……ふぅ、何とかなったか。俺そこで八門遁甲開門スキルを切った。手の甲の輝きが収まると同時にとてつもない疲労感が体を襲う。……さすがに今回は疲れたな。
俺が息を整えていると、
「ぐすっ……せっかくリューイに勝つために暗黒騎士にまでなったのにィ……」
ミロが悔しそうに呟くが……ちょっと待て。
『あたし』? 『ぐすっ……』?
俺はミロの素顔が窺える状態だった。
美麗な青色の髪は以前よりも長く伸ばされ、女らしく風に靡いており、水晶のように透き通った瞳を飾るまつ毛は美しくカールしている。その姿はどう見ても――
「あれ!? お前、女だったの!?」
「え……? ……あ、しまった!?」
ミロは頭をぺたぺた触って兜がないことに気付くが、もう遅い。
俺は言葉が出なかった。目の前にいるのは紛れもなく美少女だったからだ。
それも絶世の美少女。
――俺の親友は女だった。
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