第二話『ラーマの女門番たち』3
俺はパティを助けようと戦士の男の肩に手を掛けるが、
「うるせえ、ガキが!」
ガツンッと頭に衝撃が走り、俺は弾き飛ばされた。戦士の男に頭を殴られたのだ。
俺は壁に当たって崩れ落ちる。
それを見て冒険者たちはせせら笑う。
「なんだこいつ? てんで弱いぜ」
「そう言ってやるなよ。門番なんてこんなもんだろ?」
「まあそうだな。行くか」
倒れ込んだ俺は冒険者たちの嘲笑を耳にしながらも愕然としていた。……確かにBランク冒険者は高ランクではあるものの、まさか一撃でこのザマとは……。普通職に転職すると、ここまでステータスが下がるものなのか……。
だからと言って、パティを連れて行かれるわけにもいかない。
俺はぶれる意識をどうにか保ちながらも、槍を支えにして立ち上がった。
「待て……パティを返せ」
冒険者たちは振り返ると、やれやれといった感じで肩を竦める。
「おい、このガキまだやるつもりだぜ?」
「少し身の程を教えてやるか」
そう言うと剣士の男が俺の方に向かって歩いてくる。
俺は槍を構えて威嚇するが、その槍は剣士の男が抜いた剣によって簡単に弾かれてしまい、彼の蹴りを腹に食らって俺はまた吹き飛ばされ、崩れ落ちた。
そんな俺に剣士の男は嘲笑じみた目で言ってくる。
「分かったガキ? これが生まれ持った才能の差ってやつだ。恨むなら、門番なんていうくそくだらない職業の才能しか持たせなかった神様でも恨むんだな」
剣士の男の蔑むような声。……いや、自ら望んで門番になったんだけどな……。
とはいえ、それでこのような目に遭ってしまっているのでは何も反論できない。
せめてパティだけでも助けなければ……。その想いだけでどうにか俺は立ち上がる。
すると剣士の男がイラついた顔を見せた。
「いい加減うぜえんだよお前!」
剣士の男は俺に向かって剣を振りかぶってくる。
俺の槍は弾かれてしまったので、俺は腰の鞘にある剣に手を伸ばす。魔法剣士時代から愛用していた、聖剣ルーンブレイクの柄に。
この剣ならもう少しまともに戦えるはず……そう思った俺だったが、柄に手をやったところで驚愕する。
――剣が、抜けない……!? そうか、魔法剣士じゃなくなったから適性が……!
ルーンブレイクは持ち手の魔力量が増えるにつれその威力を増す聖剣だが、門番となり極端に魔力が下がった今の俺では抜くことすら出来ないらしい。
そう思いつつも俺はとっさに剣を鞘ごと腰から引き出し、どうにか剣士の男の剣を受け止める。しかし、
「甘えよ!」
がら空きの腹に蹴りを食らって再度吹き飛ばされた。
「がはっ!」
肺から空気が抜けるのを感じながら、俺は地面に倒れる。
剣士の男は倒れている俺のところまでやってくると、
「これに懲りたら二度と調子に乗らないことだな、ガキ」
俺は顔面を蹴り飛ばされた。鋭い痛みが鼻に走り、天地が逆転したような衝撃が頭を駆け抜ける。
「むぐ、むぐぅ!」
パティが必死に叫ぼうとしている声が耳に入ってきた。
俺はその場から立ち去ろうとしている剣士の男の足を掴んで止める。
「ま……て」
顔を上げると剣士の男の顔が怒りに歪むのが見えるが、関係ない。
「……その子は初めて出来た俺のパートナーなんだ……だから」
だから絶対に連れて行かれるわけにはいかない。そう言おうと思った俺だったが、頭に強い衝撃を受けて阻まれる。剣士の男に頭を思い切り蹴り飛ばされたのだ。
「うぜえ! って言ってんのが! 分からねえ! のか! この! ガキは!」
何度も何度も頭を踏みつぶされる。それでも意識だけは手放すわけにはいかなかった。
ここで意識を手離せば、恐らくパティは本当に酷い目に遭わされてしまう。旅人たちは痛ましい目でこちらを見ているが、冒険者たちが恐ろしいのか声を出せずにいる。
だから俺は意識を手離すわけにはいかない。
……しかし、なんと情けないことだろうか。女の子一人救えないなんて……。
魔法剣士の時の力があればこんな奴らなんて……!
……くそ、力が欲しい……! かつては疎ましくすら思った力が、今では喉から手が出るほど欲しかった。
――しかし、その時だった。
俺の右手の甲の痣が激しい光を発する。そして――
「神の門を守りし者よ 目覚めよ」
またあの声だ。
その瞬間――別の声が頭の中で響く。
『条件を満たしました。新しい隠しスキルを入手しました』
……なに? 新しい隠しスキル?
俺はすぐに頭の中で確認する。
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*八門遁甲開門スキル
【効果】
体の内部にある八つの門を開くことによって、眠っている力を引き出すことが出来る。
各門により引き出す力は異なる。
ただし引き出す力が大きいほど体への負担も大きくなる。
【スキル取得条件】
・クリエイトゲートスキルを入手していること。
・体の構造を熟知していること。
・―――――――――――――――
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