第349話 必死になるクラーク
side クラーク
クソ! 三日で金貨四十五枚集めろだって! そんなの無理に決まってるだろうが!
だけどそれを素直に言っていたら俺の命が危ない。俺はなんとしてでも三日で金貨四十五枚を集めないといけないんだ。
「おいおい。ちょっと付き合えっていうからきたけど、ここは一年の階じゃねぇか」
「クラーク。一体ここで何をする気なんだ?」
昼休みになり俺は大体いつも行動を一緒にしてる連れ二人と三人で一年のいる階までやってきた。
「なに。一年に上級生との付き合い方ってのを教えてやりにきたのさ。今後の為にもな」
「おお。なるほどな」
「確かに下級生に俺等のありがたみをわからせるのは大事だな」
この二人が単純で良かったぜ。キャノンの事は一切言ってないがな。こいつらでもキャノンの事は当然知っている。だからこそ下手に名前を出したらビビって協力しない可能性があるからな。
とりあえずどんな形であれこの件に一枚噛ませることが大事だ。ちょっとでも関わってしまえばもう後には引けないだろうからな。
「それでターゲットは決めてるのか?」
「とりあえずSとAクラスは抜きだな」
「ハハッ。そういうところがお前らしいな」
連れの一人が俺の肩をバンバンっと叩いた。フンッ、ダセェと思われるかもしれないがな、一年に舐められないためにも最初から勝てる見込みのない連中は相手にしないが鉄則だ。
「お、ちょうど良さそうなのが歩いているぜ」
廊下を一人で歩いてくる一年坊を見つけた。いかにもモブっぽい顔した奴だ。こいつはカモに丁度いい。
「おい一年!」
「え? 俺ですか?」
俺が強めに声をかけると一年坊が反応した。ハハッ、こいつ既に俺等相手に完全にビビってるぜ。俺にはわかる。
「そうだ。お前ちょっと面をかせ」
「えっと、二年生っすよね? どうして俺を?」
「いいから早くしろ。下級生は上級生に従うもんなんだからな」
「そ、そうなんですか! わかりました!」
フンッ。全くトロ臭いやつだ。だがそれぐらいの方が丁度いいのかもな。
「それでお前、名前は?」
「はい! モブマンっす!」
モブマン? 全くいかにもって名前だぜ。そして俺はモブマンを連れてひと目のつかない場所にやってきた。
「こんなところで一体何の話ですか?」
「大事な話だ。モブマンお前、俺らに金貨五枚支払え」
「はい? えっとお金を貸せってことですか?」
俺の言葉にモブマンが白々しい事を言いだした。舐めてるのかこいつは。
「んなはずねぇだろうが! いいか? 下級生は上級生に対して毎月感謝の念を込めて金を支払うもんなんだよ。わかったらとっとと寄越しやがれ!」
怒気を込めて話してやった。だがモブマンはキョトン顔だ。こ、こいつ俺の話をわかってるだろうな?
「どうした? 話を理解してるんだろう?」
「えっと、とりあえず俺には無理っすね」
「は?」
こ、こいつ普通に断ってきやがった。
「ふざけんな無理ってなんだよ!」
「聞いてのとおりっすよ。俺、そんなに裕福じゃないんで金貨一枚だって無理っすからね」
そう言ってモブマンが苦笑してみせた。どうやらこいつ自分の立場をわかってないようだな。
「おい――」
腹が立った。だから相手にわからせるために拳を振ったがモブマンが避けやがった。
「いきなり殴ってくるなんて上級生だからって酷くないですか?」
「うるせぇ。お前、自分の立場わかってんのか? お前ら一年に断る権利なんてねぇんだよ!」
一旦拳を引きモブマンを睨みつける。こういう奴にはしっかりわからせる必要があるからな――
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