第344話 魔力0の大賢者、が気になるかつての生徒

 イロリ先生について師匠が色々話してくれているけど、その中で一人の生徒が今のイロリ先生に繋がるキッカケになったらしい。

 

「師匠。その生徒が何をしたのかも知っているのですか?」


 そこまで聞くと僕としても気になってしまう。それにしても師匠の情報収集能力は高いね。


「ある程度はね。ただどうやら教師の間でも細かい情報共有はされてないようでね。ただわかっているのはイロリ先生が受け持ったその生徒は当初こそFクラスだったけれども途中からAクラスに昇格したみたいなんだ」


師匠が教えてくれた。その中で気になることがあったんだけどね。


「Aクラスに昇格、途中でですか?」

「そッ♪ 学園では年に一度、学年ごとのクラス変えがあるようでね。それまでの成績によってより上のクラスに上がれることもあれば勿論逆もありえるようなのさ~」


 師匠がそう説明してくれた。これは僕も知らなかったけどイロリ先生の生徒はそこで良い成績を残してAクラスに上がれたってことなんだろうね。


「でも、それって良いことなのでは?」


 そう、これまでの話の流れだと特に悪いことは無い気がしてしまうね。


「それ自体はね。問題なのは――その生徒がAクラスに上がった後、大きな問題を起こしたようでね……」


 大きな問題――僕はその先に真剣に耳を傾ける。


「結果的に学園は退学になって、今は魔導刑務所に入っているらしいのさ」

「え! 刑務所に!?」


 その真実には驚いた。刑務所は大きな罪を犯した受刑者が収監される施設だけど――そこまでの事をしたってことだよね。


「イロリ先生はその事を気にしているってことですか?」

「それは私にもわからないけどねぇ。ただ当時はイロリ先生も受け持った生徒が問題を起こしたことで責任を取られたそうなんだよね」


 師匠が答えてくれた。ただそれには疑問を感じた。


「え? でもその時は既にAクラスだったんですよね?」

「そうさ。だけどね、どうやらAクラスに上がる話には否定的な意見も多かったらしくてね。でもそこでAクラス行きを推したのが当時のイロリ先生だったみたいなのさ」

 

 そういうことか――でもそれって案に責任を押し付けられただけな気もしてしまうよ。


「師匠その生徒は一体何をして刑務所なんかに?」


 僕としてはその理由がどうしても気になってしまった。


「うん。これについては他の教師も言葉を濁していたんだけどね、やはり大きな事件だったらしくて、ちょっとした記事にもなっていたから調べたらすぐにわかったのさ」


 記事にか。やっぱりそこまでのことなんだね。


「聞きたいかいマゼル?」

「……出来れば」

「そっか。ま、今言ったようにちょっと調べればわかることだから隠しておく意味もないかな。当時イロリ先生が受け持っていたその生徒は【ファイン・シャーズ】という名前の男子生徒で彼が犯した罪は――家族殺しさ」


 最後の部分を強調するように真剣な顔つきで師匠が言った。ファイン・シャーズ――それがイロリ先生が変わるきっかけになった生徒、しかも家族殺しだなんて……。

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