第342話 魔力0の大賢者、先生に諦めろと忠告される

「おい! 何だよその言い方は! 無理かどうかなんてやってみないとわかんねぇだろうが!」


 イロリ先生の発言に即座に噛み付いたのはアズールだった。皆の中でも特にやる気を見せているアズールだけに、イロリ先生の発言には思うところがあったのかもしれない。


「勘違いするなよ。お前らがいるのはこの学園の最底辺Zクラスだ。そんな奴らが頑張ったところで意味はない。底辺は底辺らしく床を這いつくばって生きていればいいんだよ」

「先生。流石にそれは言い過ぎでは?」


 今のイロリ先生の発言は流石に頂けないと思い口を出してしまった。いつもは冷たく思えても何かしら考えがある気がしていたのだけど、今の発言からは何も感じられなかったんだ。


「マゼル。お前にしては珍しく反論してきたな。いつも勝手に俺のことをわかってますみたいな顔してたが、これが俺の本音だ。お前も含めて全員努力なんかでなんとかなると思うなよ」

 

 僕の考えを見透かしたようにイロリ先生が言い返してきた。


「努力するだけ無駄だと先生は言いたいんですか?」

「そうだ。無駄な努力もあるってことだな」


 ドクトルの言葉にもイロリ先生が冷たく返す。ただ、それでも僕は納得がいかなかった。


「先生はどうして僕たちが努力しても無駄だと考えるんですか?」

「そんなのは決まってる。お前らがZクラスだからだ。底辺が高望みしても碌なことにはならないんだよ。たとえそれで一時的でも上にいけたところですぐに羽はへし折られ裏切られ後悔するだけだ」


 僕の質問に先生が答える。この言い方、まるで自分自身に言い聞かせているかのような、そんな気がした。


「せ、先生は担任として私たちを導いてくれはしないのですか?」


 アニマが聞いた。彼女は心が優しいから先生を信じたいという気持ちが強いのだと思う。


「そんなものあるわけがないだろう。やる気があったら自習なんかにしねぇよ。俺はお前らに何も期待してないから適当にやってろと言ってるんだ」

「ちょっと、流石にそれは無責任すぎるじゃない!」

「そうだよ。私たちは魔法のことを教わるためにこの学園に来てるのに」

「うむ。流石にその発言は俺も看過できないぞ」


 メドーサにアズールそしてガロンも先生の言葉に納得いってないようだった。


「先生……僕は先生が本気でそんなことを思っているとは思えません。本当にどうでもいいと思っていたら教科書にあんな仕込みはしないですよね? 狩りに行く僕たちの様子を見に来たりもしない筈です」

「……黙れ。教科書のはただの嫌がらせだ。狩りの事は知らん」

「でも靴に泥が」

「そんなもん適当に外を歩いたら付くんだよ。マゼル、お前も大賢者とおだてられて勘違いしているようだが何度も言わせるなよ。俺はお前らに期待していないしお前らの努力も認めない。だからテメェらも俺に妙な期待するな」


 先生が言い切るとクラスが静まり返った。先生はどうしてここまで頑なに僕たちを否定するんだろう。


「以上だ。後は勝手にしろ」


 最後にそう言い残してイロリ先生がクラスから出て行ってしまった。


「畜生が! 何なんだあいつは! 俺たちが折角やる気になってるってのによ!」


 アズールが机をドンッと殴りつけて憤った。皆の先生に対する不信感も募るばかりだと思う。


 このままじゃ駄目だ! 僕は思わず立ち上がり教室から出ようとしたのだけど。


「先生!」

「わお! マゼルってば私のことを待っていてくれたのかい?」

「て、師匠!?」


 ドアから飛び出した途端、僕は師匠とぶつかってしまった。そしたら師匠が何故か僕を包容してくる。いやいや!


「ち、違うんです。イロリ先生に言いたいことがあって」

「えぇ~? 私よりあのイロリ先生がいいのかい? 何だか焼けちゃうぜ」


 おちゃらけた感じを見せる師匠。精霊がキラキラした光で演出しているよ!


「いや、そうじゃなくて」

「どっちにしても今行くのは感心しないね。あんな表情をした彼に今何を言っても聞く耳持たないだろうさ」

「え?」


 僕が見上げると師匠がニコッと微笑んだ。さ、流石師匠。僕の心も見透かされていたようだよ。

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