第335話 魔力0の大賢者、全校集会に向かう
「お前たちにはこれから全校集会に出てもらう」
週末の朝、イロリ先生が言った。どうやら学園ではこういった全校生徒が集まる会がよく開かれるらしい。
「たく、こないだ本校舎に呼ばれたと思えばすぐこれだ。面倒なことねぇな」
イロリ先生が頭を掻きながら気だるそうな顔を見せる。確かに今週始めに本校舎に行ったばかりだけどね。
「先生いつも気だるそうにしてますよね……」
「授業もほとんど自習だし教師って一体なんなのよ」
ドクトルが言いながら苦笑していた。メドーサも愚痴っているね。
「で、でも教科書はまた新しいのくれましたし!」
「しかし自習ではな……」
アニマの言う通り、小テストが終わってからは教科書も新しく用意されていた。勿論ページも含めてしっかりしたものだ。
ガロンの言うようにその後は基本自習ではあったんだけどね。
「でも本校舎なら帰りに美味しいの買って帰れるね」
「リミットは本当に食い物ばかりだな」
リミットは本校舎にいけるのが嬉しそうだ。理由は食堂にありそうだけどね。その様子にアズールが呆れた顔をしていた。
「…………」
「学園生活する上で必要なことなら従いますとお答えします」
シアンは黙って先生の顔をみていた。メイリアも問題なさそうだね。
「はぁ~とりあえず出るぞ」
「は? すぐになのか?」
「今から出ないと間に合わないからな」
「ちょっと、少しは余裕もって言ってよ!」
「いいんだよ。多少遅れたって問題ないだろう」
「いや、流石にそれは問題あるような……」
ちょっとだけ僕も心配になったり。とは言え急ぐ必要があるようなのでそのままイロリ先生についていく形で旧校舎を出た。
「集会ってことはあの理事長も出るのか?」
道々アズールがイロリ先生に聞いていた。
「当然だ。全校集会だからな。むしろそれがメインだ」
アズールの質問に答えたイロリ先生。確かに理事長である以上、出ないわけにはいかないんだろうね。
「はぁ。反省文が終わったと思ったらまたあの顔を見るのね」
「別にいいんじゃない? 今回は直接話すわけでもないし」
嫌そうにメドーサが零していたけど、リミットはあまり気にしてないようだね。
「反省文も無事書き終わったわけだし堂々としていればいいと思うよ」
「マゼルの言うとおりだ。やましいことなどないのだからな」
「そうだね。言われてることはキッチリ終わらせているわけだし」
僕の話にドクトルとガロンが同意してくれた。うん、そう思う。疾しいことは何もないわけだしね。
「そ、その全校集会ではシグルとメーテルがいても大丈夫でしょうか?」
「さぁな。何も言われなきゃいいんだろう」
「えぇ!」
「ガ、ガウ」
「ピ、ピィ~……」
アニマが心配そうに呟いていたけどイロリ先生の回答で驚いていたよ。シグルとメーテルも不安そうだけど、先生のことだから大丈夫だと思ってのことじゃないかな。
そんな話をしている内に僕たちは本校舎にたどり着いた。
「来ましたね。かなりギリギリですが」
本校舎では風紀委員長のルル先輩が対応してくれた。僕たちが来るのを見越して待っていてくれたようだね。
「あの、シグルとメーテルは一緒でも大丈夫ですか?」
「大丈夫ですがこれを首に嵌めておいてください」
ルル先輩がアニマの質問に対応してくれた。取り出したのは首輪のようで首のサイズにあわせて伸縮するらしいね。
アニマがそれをシグルとメーテルにつけているとルル先輩がじっとその様子を眺めていた。何か頬がウズウズしているよ。
「メーテルとシグルに何か気になることでもありましたか?」
「な、なんでもありません! 別にモフりたいとか、いえ、な、なんでもないです!」
僕が問いかけると赤面しつつルル先輩が眼鏡を直した。とりあえず問題がないようで何よりだね。
「では会場はこちらです」
ルル先輩に言われ僕たちはついていくことになった。
「会場なんてあるのね」
「専用の施設があんだよ。たく、そんなの作るなら給料あげろっての」
「イロリ先生。そういうことを生徒の前で言うのはどうかと思いますが……」
文句を言うイロリ先生にルル先輩が困り顔になっていたよ。
「へいへいっと。お前らあれがそうだからな」
イロリ先生が前を指差すとそこには屋根付きの大きな建物が鎮座していた。ここが全校集会を行う場所みたいだね――
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