第336話 魔力0の大賢者、全校集会に参加する

「Zクラスはここだな」

「相変わらず格差があるわね……」

 

 イロリ先生についていった先にZクラスの表記があった。その場所を見てメドーサが不服そうにしていた。他のクラスは背もたれ付きの椅子が用意されているけど僕たちの席はなんというか丸太をそのまま置いただけといった席だったんだ。


 当然背もたれもないよ。


「ふざけやがって。この丸太燃やしてやろうか」

「やめなさいって。余計なトラブルになるだけなんだから」


 歯ぎしりしながら文句を言うアズールにリミットが注意していた。

 

「でも、座り心地は悪くないよ」

「マゼルは人がいいな」

「まぁ、仕方ないけどね」

「と、とにかく座ろうよ」


 僕が最初に座ったことで皆も丸太に腰を掛けたよ。相変わらず他のクラスとは席も離れているけどね。


「――席は周囲を囲うように配置されているようです、と思ったままを伝えます」

「……」

 

 メイリアの言う通り、確かに席は真ん中だけを大きく空ける形で囲うように設置されてるね。囲いもあるしそこで何かあるのかもね。


 シアンも言葉に出さないけど様子を見ている感じだよ。


「今日は特別学区の生徒による実演もあるらしいからな」

「え? そうなんですか?」

「……黙ってみてればわかるだろう」

 

 先生の話が気になって思わず聞いたけど、確かに大人しく見ていた方がいいのかもしれない。


「これより全校集会を始める。集会は今後も定期的に行われる。集められた生徒は大人しく聞くように」


 最初に話を始めたのはゲズル先生だった。生徒たちに聞くよう促した上で視線が僕たちのクラスに向けられる。


「――特にZクラスはトラブルメイカーの問題児集団だからな。先程も騒がしくていたようだし、これ以上迷惑を掛けぬよう特に大人しくしておいて欲しいところだ」

「はは。言われてるぜZクラスの連中」

「流石学園の最底辺ね」

「これ以上問題起こすんじゃねぇぞ! 俺らの質まで低いと思われるんだからな」


 ゲズル先生の話を聞いた生徒たちが煽りだした。大人しく聞いてくれと言っていたのに十分な騒ぎじゃないか。


「またかよ……俺等ばかり目の敵にしやがって!」

「仕方ないだろう。実際お前らが最底辺なのは変わらないんだからな」

「そんな良い方ないじゃない!」


 アズールは苛立ちを隠せない。イロリ先生はそれも仕方ないと判断しているようだけどメドーサは納得言ってないようだ。


「いい加減事実は事実と受け止めろ。それが嫌なら今後の実力で黙らせることだな。出来ればの話だが」


 先生がそう口にした。僕たちを諭してくれているようだった。


「――うん。そうだよ。先生の言う通り僕たちが結果で示せば何も問題なんてないんだからね」

「……マゼル。あぁそのとおりだな」

「マゼルの言うとおりだよ。今は好き勝手言われてるけど僕たちが頑張ればこんなことは言われなくなるんだからね」

「……うん。そ、そうだよね!」


 僕が言うとガロンとドクトルは納得してくれた。アニマも頷いてくれてる。


「静粛にしたまえ。ここは動物園ではないのだからな。由緒ある魔法学園の生徒として節度を持って臨んで欲しい」


 理事長であるリカルドの声が周囲に響き渡った。リカルドの登場で騒がしかった会場も水を打ったように静まり返る。


「それでいい。君たちには常に誇り高い魔法学園の生徒であるという自覚を持って取り組んで欲しい。そこに格差は関係ない。それがSクラスであろうと例えZクラスであろうと一緒だ。そう肝に銘じておくべきだろう」


 リカルド――敢えてSクラスと一緒に僕たちのクラスを引き合いに出した気がするよ。


「さて、本日のメインは今回新しく敷設された特別学区の生徒を披露することだ。全員君たちよりも年こそ下だが、潜在能力には目を見張る物がある。それを是非その目で確かめてほしい」


 リカルドがそう言うと舞台袖から十数人のローブ姿の生徒たちが姿を現していた。その中に一人、僕は見覚えのある顔を見つける。


「あれはラーサだ」

「あ、本当だ。マゼルの妹だよね」


 僕が呟くとリミットが思い出したように言った。この間みんなで魔導遊園地に行った時に会っているからすぐに思い出したようだね。


「確かに凄い魔法の使い手だったもんね」

「しかし改めて見ると凄いな。流石マゼルの妹だ」


 メドーサが感心したように頷いている。ガロンもラーサのことを褒めてくれていた。兄としては何だか嬉しいよ。


 そしてリカルドの号令で特別学区の生徒たちが魔法を披露してみせた。どれも練度が高くてリカルドがアピールしたくなる気持ちもわかるよ。


「お、おいあれで年下かよ」

「あんな魔法私使えないけど……」

「てか一人めちゃめちゃ可愛い子いねぇ?」

「ラーサって呼ばれてるぜ」


 自然と僕の耳が反応してしまった。ラーサが褒められるのは嬉しいのだけど男子生徒の注目がいくのは兄としては複雑な気持ちだよ――

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