第333話 魔力0の大賢者、生徒会長の印象は?

「それについては私も申し訳なく思っている。理事長には公平な処遇をお願いしていたのだが結果的にZクラスだけに負担を強いることになってしまった。本当に済まない」


 アイラの話を聞いて、生徒会長が直に頭を下げてくれた。これにはアイラは勿論クラスの皆も驚いたみたいだ。


「ちょ、頭を上げてください!」

「そうですよ。生徒会長がわるいわけではありませんし」

「うむ。それに反省文を書けばいいだけの話だしな」

「……」

「わ、私頑張って書きます!」

「ほら、アズールも頭下げて!」

「ちょ、なんで俺だけ」


 僕が止めると他の皆も同じように思っていたようでロベール会長に声を掛けていた。あとメドーサがアズールの頭を掴んで下げさせていたよ。


「そうだ! 会長も一緒にお昼を食べようよ! そうすればきっともっと仲良くなれる!」


 パンッと手を打ちリミットが言った。いいアイディアだと言わんばかりの爽やかな笑顔だね。


「いや流石に生徒会長と一緒にお昼というのは恐れ多いというか」

「お、おう、そ、そうだな」


 聞いていたネガメとモブマンが困惑の様子を見せたよ。確かに普通はそうだよね。


「私も君たちと親睦を深められたら嬉しいが、宜しいのかな?」


 するとロベール会長が微笑み確認を取ってきた。一緒にお昼をとるのはやぶさかではない様子だね。


「学園の生徒会長と一緒にお昼を取れるなんて光栄です」

「イスナ様がそう申されるなら私も異論はありません」


 イスナとクイスは歓迎しているようだね。


「その、私も不躾に言い過ぎたと反省してます。宜しければ」

「生徒会長とランチは十分ありえるのです!」

「ちゅ~♪」


 アイラはさっきの件をちょっと気にしているみたい。アリエルとファンファンは嬉しそうだね。


「会長。折角こういっているわけだし、何よりマゼルもマゼルの友人たちも心が広いからね。ご一緒しては?」

「それなら、ヘンリーも一緒に席につかせてもらおうか」


 こうしてロベール会長とヘンリーも一緒にお昼を再開することになったよ。


「うちも一緒してよかったん?」

「リアも一緒に遊園地を回った仲ですから、十分ありえるのです!」

「ちゅ~」


 リアも一緒に席についたのだけど、一緒していいかちょっと気にしていたみたいだね。でも気にしないでと隣のアリエルが言ってるしお昼は大勢の方が楽しいからね。

 

 でも、遊園地の件からリアとアリエルも仲良くなったみたいだね。友だちが増えるのは良いことだと思う。


「今日は更に賑やかだねぇ」

「ハニー!」

「こらこら、一々抱きつかない」


 ビロスがハニーに飛びついていた。ハニーが注意するけど笑顔だね。ハニーとビロスはいつも仲がよいよ。ただ僕にも時折あんな感じで飛びついてきちゃうから弱っちゃうとこだけどね。


 それからは、ぞれぞれ注文して一緒にランチを楽しんでたんだけど。


「……なんで生徒会長と副会長がZクラスの連中なんかと」

「AクラスやSクラスの子とならわかるけどね」

「ちょっと幻滅~」


 そんなひそひそ話が聞こえてきた。一々指摘していたら切りがないんだろうけど陰口は気分のいいものじゃないね。


「――私は皆が平等に評価される学園にしていきたいと思っているのだが、不甲斐ないせいか力不足を感じるよ。クラスが違うからと差別をされたり陰口を叩くような生徒がいなくなるよう努めてはいるのだけどね」


 だけどロベール会長のこの言葉でピタッとひそひそ声が止んだ。周囲の生徒たちも聞こえてないと思っていたんだろうね。


「会長はよくやってくれてるよ。副会長の僕から見ても間違いないさ。ただ、そうだね僕が自由に歌いながらバラを撒いて構内を歩き回れるぐらいの寛大さは欲しいかな」

「それはやめたまえヘンリー」

「お兄様はありえないのです」

「ちゅ~……」


 ヘンリーの希望はあっさり会長に却下されたよ! アリエルとファンファンもちょっぴり呆れ顔だね。


 それからも会長との話は盛り上がったよ。ロベール会長は気さくな人で皆もすぐに打ち解けた見たい。最初緊張していたモブマンやネガメも今は笑顔を浮かべているよ。


「おっとそろそろ戻る時間だね。楽しくてつい話し込んでしまったよ」


 ロベール会長がそう切り出した。確かに僕たちも旧校舎に戻る必要があるからそろそろでないといけない。


「ところでマゼルは会長と話してみて印象はどうだったかい?」


 ふとヘンリーが聞いてきた。突然聞かれて少し驚いたけど。


「はい。とてもお綺麗ですし、思慮深い立派な方だと思います」

 

 思ったままを答えた。すると何か皆が不思議そうな顔を見せたよ。


「えっと綺麗? 格好良いとかならわかりますが」


 ネガメがそう僕に言ってきた。あれ? と思っていると何かヘンリーがシュパシュパと独特なジェスチャーで何かを伝えてきたよ。


 あ、そういうことなんだ。


「えっと、た、食べ方とか綺麗だと思って」

「おう! それはわかるぜ! 俺なんかよりずっと上品だったもんな!」


 モブマンがそう言って豪快に笑った。ご、ごまかせたかな。


「うぅ。私には気づかなかったくせにマゼル様の馬鹿――」

「イスナ様どうかされましたか?」

 

 えっと何かイスナが僕を睨んできているような? 気のせいかな。


「……なるほど。流石大賢者と噂されるだけの事はあるね――うん。お褒め頂きありがとう。それじゃあそろそろ行こうかヘンリー」

「はい。それじゃあマゼル僕たちはここで」

「はい」


 ロベール会長とヘンリーが席を立った。その後姿を見送る僕たち。その時、会長が振り返った。


「……一つ、君たちは今回の件で一部では非常に注目されている。それはいい意味でも悪い意味でもね。その点だけは気をつけたまえ」


 最後にそう言い残してロベール会長とヘンリーが食堂を後にした。いい意味でも、悪い意味・・・・でもか。


 できれば平穏は学園生活を送れたら一番いいんだけどね。ただ、色々気をつけないと行けないのは確かだ。僕が入学を決めたのも元々はあの魔狩教団の動きを危惧してのことだからね。


「おっと、おいマゼル! ぼ~としてる場合じゃねぇぞ! 俺たちも急いで戻らないと!」

「あ、そうだったね」


 そしてアズールたちが立ち上がり急ぎだしたから僕も皆に別れを告げて本校舎を後にしたんだ――

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